防衛省のずさんな計算が発覚したことで、秋田県が大騒ぎとなっている原因の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。値段の高さもさることながら、その値段の決め方が問題になっています。6月20日放送『多田しげおの気分爽快!!〜朝からP・O・N』では、「イージス・アショアの値段」について、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が解説しました。

イージス・アショアの総額は?

日本ではイージス・アショアを、山口と秋田に2機置く計画なのですが、単純に「何億円かかるんだったら値段が高い」などとは言い切れません。
万が一、ミサイルなどが飛んできた場合、日本に落ちるのを防いでくれるのであれば、人命や経済的な損害を考えると安いのかもしれません。

とはいえ、気になるお値段なのですが、1機あたり最初は800億円と言っていたものが、現在は1,400億円に釣り上がり、さらに30年間の維持運用でさらに4,600億円ほどかかるとのことです。

しかも、それは今年度の予算に含まれている契約額が1,400億円なのであって、機械だけですでに2機で2,400億円と言われており、それ以外にもお金は当然かかります。
 

援助だけど有償って何?

石塚は「必要である可能性はあると思いますが、必要だとしても一番の問題点は中身と買い方だ」と指摘します。
イージス・アショアはFMS(有償軍事援助)というプログラムによるもので、アメリカ軍が最新鋭の武器で日本をバックアップしましょう、ただし、お金はかかりますよというものです。

「援助」という言葉に少し引っかかりますが、英語のFMSは実は"Foreign Military Sales"の略、つまり「外国の兵器などを売る」という意味であって、「有償」という言葉は付けているものの、防衛白書などで表現している「援助」とは意味合いが異なります。

防衛白書では、「アメリカ政府が経済的な利益を目的として販売するものではない」と説明し、簡単には調達できない軍事気密性の高い装備品や、アメリカでしか作れない最新鋭の装備品が調達できるのがメリットと説明しています。

ただ、その価格はアメリカが決めることができ、実際に物が来る前に日本が前払いする、維持や整備はアメリカのメーカーに任せるというルールになっています。

機密性の高いものですから、価格の内訳を明かすことはできない、整備方法は明かせないというのはわからないではないですが、普通の商売であればこれだけ有利な条件はなさそうですね。
 

アメリカの軍需産業に貢献?

アメリカの経済的な利益のためではないと言いつつも、トランプ米大統領は対日本の貿易赤字解消に向けて、「たくさん物を買ってくれ!」と圧力をかける中に軍事兵器は含まれているのではないか、と見る向きもあります。

石塚は、「防衛として必要なものであれば、買うのはやむを得ないと思いますけど、本当に必要なのか、本当にその値段なのか、あとあとそれが日本でも利用できるのか。いろんなハードルが今、全部うやむやになってきてるというのが問題」と苦言を呈しました。

日本の防衛予算は毎年増えてきていますが、FMSの割合も伸びていて、日本の防衛産業へはあまり回ってきていないそうです。

中にはアメリカへの支払いを優先するあまり、日本のメーカーへの支払いを来年に後回しされるケースもあるそうです。

ちなみに防衛白書では、「FMSの調達については未精算問題や価格の透明性確保など、諸課題があることも事実である」とも書かれており、少し本音ものぞかせているそうです。
(岡本)
 

多田しげおの気分爽快!!〜朝からP・O・N
2019年06月20日07時21分〜抜粋(Radikoタイムフリー)