日本対ウルグアイの試合に、私は考えさせられた。いや、たぶん私だけではない。多くのブラジル人やアルゼンチン人も考えさせられたのではないか。

 この試合の前まで、我々は日本についてこう思っていた。世界的スターを擁するチームに、こんな若いチームで立ち向かっていったいどうするのだ、と。しかしその考えは大きな誤りだった。我々は傲慢だった。

 日本対ウルグアイ戦は、これまで見た今回のコパ・アメリカの試合のなかで一番面白かった。キックオフからタイムアップまで手に汗を握る、目の離せない試合だった。チリ戦後の記事で、私は日本がこの大会で最弱だと書いたが、それは見当違いもいいところだった。最強とまでは言えないが、一番ファンタスティックなチームだ。

 これまで誰も名前を知らないような選手たちが、スター選手たちと堂々と渡り合う。私は何度も試合をビデオで見直しては幸福感に浸っている。ウルグアイのDFディエゴ・ラクサールを地面に残して決めた三好康児の1点目のゴールは何度見ても興奮する。なんという勇気、なんというスピードだろう。


ブラジルでも一躍その名が知られるようになったウルグアイ戦2得点の三好康児 photo by Watanabe Koji

 日本代表の選手諸君、君たちは、サッカーは名前や年俸でするのではないことを思い出させてくれた。サッカーのすばらしさを再確認させてくれた。今、私は心からこう言いたい。「Ben vindos! ようこそニッポン、コパ・アメリカによくぞ来てくれた!」と。

 日本より前には、カタールが面白くて、サプライズいっぱいのサッカーをし、そして今日は日本の若者たちが魅せてくれた。一方、南米の王者といわれるブラジルやアルゼンチンは、ヨーロッパの金持ちチームでプレーする選手を数多く擁しながら、結果を出せないでいる。

 その理由を、日本をよく知るドゥンガがこんな言葉で説明してくれた。

「自らを強者と思い、傲り高ぶっている我々はどんどん衰退している。反対に、謙虚さを持つ日本はどんどん成長している。彼らは毎日新たなことを学び、吸収し、前進しているのだ」

 日本代表では、レアル・マドリード行きの決まった久保建英が「日本のメッシ」として注目されている。しかし今回の試合で、日本にいるのはメッシだけでないことに気がついた。柴崎岳。いったい彼はこれまでどこに隠れていたのか。決してあきらめず、決して止まらず、そのテクニックにはルイス・スアレスも拍手を送っていた。

 そして、川島永嗣。彼のパフォーマンスは完璧だった。正確な動き、冷静な読みで日本の守備に安定をもたらした。もちろん、中島翔哉と三好も最高だった彼らはプレッシャーのなかでもプレーできる、本物の才能がある選手だ。

 マエストロの異名を持ち、ウルグアイの監督に就いてすでに13年になる名将オスカル・タバレスは、試合後こう語った。

「我々は勇気に満ち、最後の最後まであきらめないチームと戦い、引き分けることができた」

 また、ウルグアイの2ゴール目を決めたホセ・ヒメネスはウルグアイのテレビのインタビューにこう答えている。

「日本はスピードがあり、どうすれば相手を窮地に陥らすことができるかを知っていた。我々は苦しめられ、負けないように懸命にプレーした。日本には本当に注意が必要だった」

 この日はウルグアイもすばらしい出来だった。ブラジルのテレビでこの試合の解説をしていた元セレソン(ブラジル代表)のジュニオールは、はっきりとこう述べていた。

「これまでの多くの退屈な試合のあとに、やっと本当に面白いゲームに出会えた。ウルグアイはすばらしかった。エディンソン・カバーニとスアレスは、今日、その才能のすべてを見せた。彼らは現在の南米の、いや、たぶん世界最高のストライカーだろう。この試合でのカバーニのプレーは目覚ましく、スアレスのプレーは危険だった。そしてディエゴ・ゴディンの守備。彼も世界最高のDFだろう」

 実際、ウルグアイは今大会の優勝候補の呼び声が高い。だが、そのチームに本気を出させ、全力でプレーさせたのは、日本の若者たちだった。しかもウルグアイがそうしたのは、勝つためではなく、負けないためだった。

 カバーニのシュートは2度バーを叩き、スアレスもゴール寸前のシュートが2本あった。ウルグアイはこの試合で26回日本ゴールに近づき、うち12回は本当に危険だった。一方、日本は12回ウルグアイゴールに近づいたが、本当に危険なのは3回ほどだった。たぶん2−2という結果は妥当であったと思う。

 ただ、試合の結果を左右したかもしれない大きなジャッジミスが、ひとつ、いや、もしかしたらふたつあったのも事実だ。

 ひとつは、取りあげられることのなかった日本へのPKだ。スタジアムにいたブラジルの記者も、ウルグアイのテレビ局も、VAR判定でヒメネスの中島に対するファウルが認められなかったことには首をひねっていた。植田直通のカバーニに対するファウルには、誰も文句は言わなかった。しかし、私はあの判定も微妙だったと思う。植田はカバーニを見ていなかったし、足はボールに向かっていた。あるウルグアイのベテラン記者は私にこんな驚くべきことを言った。「あれは日本の選手に対するカバーニのファウルだったよ」と。

 とにかく、歴史は書きかえられた。日本はブラジルに単に遊びに来たわけではなかった。日本はコパ・アメリカを軽んじていると思っていたが、それは大いなる勘違いだった。森保一監督は戦術的に賢明で、フィジカル的に準備万端、メンタル面ではウルグアイのような強敵にもひるまないチームを作りあげた。最後にもう一度、日本の読者に心からお詫びをしたい。