お経を唱えるベトナム人尼僧のティック・タム・チーさん

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◆社会の分断を招く人権無視の外国人労働者受け入れ

 技能実習生、留学生の死亡が異常に多い。法務省は、2012〜17年に171人の実習生が亡くなっているというが、実数ははるかに多いはずだ。彼らはなぜ死んだのか。遺族はどのような思いなのか。

 『月刊日本』7月号では、このまま行けば日本人と外国人の対立を煽り、社会の分断をも招きかねない現状に警鐘を鳴らすべく、「どうなる! 外国人労働者問題」と題した特集を組み、外国人労働の最前線にいる人々に話を聞いている。

 同特集の中から、不幸にして亡くなった技能実習生や留学生の死者を弔う在日ベトナム仏教信者会会長の尼僧、ティック・タム・チーさんと、同会の拠点である浄土宗寺院「日新窟」(東京都港区)の尼僧、吉水慈豊さんに話を聞いた記事を転載し、紹介したい。

◆遺骨でベトナムに帰る技能実習生

―― タム・チーさんは技能実習生や留学生の死者を弔っています。

タム・チーさん(以下、タム・チー):私は2001年に来日して大正大学で大乗仏教を学び、2009年から日新窟で在日ベトナム人の信者と関わってきました。2012年からは技能実習生、留学生の葬儀も行うようになり、現在までに100名ほどの方々を弔ってきました。彼らの水子も20名ほど供養しています。これまで実習生、留学生の葬儀は毎月1件程度でしたが、昨年からは毎月3〜5件に増えています。昨年は40名、今年は現在までに15名の方々の葬儀を執り行いました。みんな20〜30代の若者ばかりで、連絡を受ける度に「また?」「なぜ?」と疑問を感じています。

 実習生や留学生は病死、事故死、自殺など様々な理由で亡くなっています。心不全や脳梗塞で亡くなった方、建設現場で実習中に転落死した方、不法就労中に漁船から転落して溺死した方、職場で「暴力やいじめがあってつらい」と遺書を残して首を吊った方……。日本に夢や希望を抱いてやって来た若者たちが、なぜ、こんなに死ななければならないのでしょうか。

―― 葬儀の過程はどのようなものですか。

タム・チー:まず亡くなった方の友人から電話やメールで「葬儀をしてほしい」と連絡が来て、それからベトナム本国の家族に連絡します。家族の来日を待ってから荼毘に付し、葬儀を行います。家族の方々は遺体にすがりつきながら泣いています。境遇によって家族構成は様々ですが、まだ若い奥さんや幼い子供がいる方も少なくありません。

 中には、金銭的な事情から日本まで駆けつけられない家族もいます。そのため、葬儀の様子をインターネット上の動画で中継することもあります。家族だけではなく友人や知人も画面越しに参列し、様々なコメントを書き込んでいます。

◆遺骨になった子供と再開する親の気持ちを考えてほしい

―― タム・チーさんは葬儀中にどういう思いで読経しているのですか。

タム・チー:そうですね……日本で色々な目に遭って、最愛の家族を残して逝かなきゃいけない貴方もさぞ辛いでしょう。でも、日本に留まるのは苦しいだろうから、どうか魂はベトナムへ帰って安らかにお眠りください。そして、全てを洗い流してどうか成仏なさってください……こういう気持ちです。お経を上げている時は様々な想いが去来し、本当に重い気持ちになります。

 葬儀が終わると、家族が遺骨を持ってベトナムへ帰ります。その後も日新窟では葬儀を行った方々の位牌を安置して供養を続けています。この6月には「日越親善供養塔」を建立し、実習生や留学生たちの位牌と御霊を供養塔へ移します。

 ただ、先ほども申し上げたとおり、家族が日本に来られないことがあります。そういう場合は、私がベトナムに帰国する際に骨壺を持参して家族へ手渡しています。今年は2つの家族に骨壺を届けました。一人の母親はまるで生きている我が子の頭を撫でるように、愛おしそうに骨壺を撫でていました。もう一人の母親は私の足元に跪いて足に接吻し、「息子が日本でお世話になりました。立派な葬儀を有難うございました」と言われました。友人の方々は私に手を合わせながら「先生のおかげで魂がベトナムに帰ってこられる」と喜んでおられました。