ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 今年も、早くも上半期の総決算を迎えます。「春のグランプリ」と言われるGI宝塚記念(阪神・芝2200m)が6月23日に行なわれます。近年は施行時期が遅くなって、かなり暑い時期に開催されることもあって、「夏のグランプリ」と言われることもありますね。

 その暑さと梅雨時期ということも相まって、ここ最近、競馬自体は思わぬ決着になることが多くなっています。実際、一昨年のキタサンブラック(9着)など、圧倒的な人気馬があっさり敗れたり、昨年のノーブルマーズ(12番人気で3着)のように、かなりの人気薄馬が好走したり、波乱が続出しています。

 そして今年も、現役ナンバー1の存在と言えるアーモンドアイや、昨年末のGI有馬記念(12月23日/中山・芝2500m)を勝ったブラストワンピースが出走してこなかったため、6頭のGI馬が名を連ねながらも、伏兵馬の台頭があってもおかしくないメンバー構成となりました。波乱の余地が十分にありそうですね。

 おそらく1番人気は、ファン投票でもアーモンドアイに次ぐ2位に支持されたレイデオロ(牡5歳)になるのでしょうか。

 一昨年のダービー馬で、3歳時に挑戦したGIジャパンC(東京・芝2400m)でも2着と奮闘。昨年もGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)を制して、有馬記念も2着と、現役屈指のトップホースであることは間違いありません。たしかにその実績は、今回のメンバーの中ではナンバー1と言えるでしょうね。

 ただ、昨年に続いて今年も海外GIのドバイシーマクラシック(UAE・芝2410m)に挑戦しましたが、昨年(4着)よりも着順を落としました(6着)。着順だけで単純に評価はできないとはいえ、今年の内容は見せ場すらなかっただけに、気になる敗戦でした。

 もともと気性的にうるさいところもあるのでしょう。今年のレースではイレ込みが激しかったように思えます。今回は、実績ある阪神コース。さすがにドバイの時のようなことはないと思いますが、馬自体の状態が立ち直っているかどうかは、わかりません。レースで結果を出すためには、その点がカギになるでしょうね。

 一方、同じドバイシーマクラシック(3月30日)から臨戦してくるスワーヴリチャード(牡5歳)は、ドバイでは好走(3着)しましたが、今回は右回りのレースになることが懸念材料となります。昨年のGI大阪杯(阪神・芝2000m)では、鞍上のミルコ・デムーロ騎手が非常にうまく乗って勝ちましたが、今年初戦のGII中山記念(4着。2月24日/中山・芝1800m)のレースぶりを見ると、右回りに対する不安がまだ残りました。好走するには、乗り方が限定されそうですね。

 この他、有力視されているのは、これら2頭と同世代のGI馬アルアイン(牡5歳)とキセキ(牡5歳)。今年の大阪杯(3月31日)の1、2着馬です。

 アルアインは、大阪杯でようやく2つ目のビッグタイトルを手にしました。同レースではやや恵まれたところがあったと思いますが、勝ち切ったことは地力がある証拠。能力だけなら、上位を争える存在です。

 気になるのは、距離が1ハロン(200m)延びることがどう影響するか。昨年、GIマイルCS(3着。京都・芝1600m)に挑戦しているように、本質的にはマイラーだと思うんです。2200mでどう立ち回るのか、勝ち負けを演じるにはその辺りがポイントになりそうです。

 キセキは、昨秋に馬がワンランク上のステップに成長したように思います。暮れの有馬記念(5着)では、秋シーズン4走目ということもあってか、お釣りが残っていませんでしたが、前走の大阪杯を見る限り、体も回復して完全に復調した感がありました。1回使って、今回はさらに良化が見込めるでしょう。

 一昨年、不良馬場のGI菊花賞(京都・芝3000m)を快勝したように、道悪も難なくこなせると思いますし、同馬の脚質を考えても、今回のレースでは中心的な存在になりそうです。各馬とも、このキセキの動きに合わせて、レースを進めていくことになるでしょうね。

 そういう意味では、勝敗の行方を左右する最も重要な”キーホース”と言えます。鞍上の川田将雅騎手の出方次第で、勝ち馬も変わってきそうですね。

 この他、今回は横山典弘騎手に乗り替わるエタリオウ(牡4歳)や、ダミアン・レーン騎手が手綱をとるリスグラシュー(牝5歳)も注目なのですが、”穴馬”として注目したいのは、近走で復調気配がうかがえるマカヒキ(牡6歳)です。そこで、この馬を今年の宝塚記念の「ヒモ穴馬」として取り上げたいと思います。


宝塚記念での一発が期待されるマカヒキ

 2016年のダービー馬であるマカヒキ。その年の秋には、フランスに遠征して凱旋門賞の前哨戦となるGIIニエル賞(フランス・芝2400m)を勝利しました。しかしそれ以降、ずっと勝ち星から見放されています。

 たしかに最近のマカヒキからは、3歳春に見られたような、飛ぶような軽い走りが見受けられず、どちらかというと、長く脚を使う”重戦車”のような雰囲気があります。そのためか、差しては来るんですが、勝負が決したあとに追い込んでくるような、一歩か二歩、遅いイメージになっています。

 ここ2戦も同様の結果に終わりましたが、それでもそれ以前よりは、もうちょっとのことでチャンスがあるかも――と思えるようなレースを見せてくれました。とくに前走の大阪杯(4着)は、GIの舞台でした。しかも、1、2着馬はここでも上位人気に推されるであろうアルアインとキセキ。それらにおよそ1馬身差まで迫った末脚が、1ハロンの距離延長によって、今度は届くかもしれません。 差し馬に向きそうな、開催最終週の馬場も味方になってくれそうです。岩田康誠騎手が最も得意とするインからさばいて脚を伸ばすことができれば、馬券対象内(3着以内)に飛び込んくる可能性はあります。展開がハマれば、より上位に食い込んでくるかもしれませんよ。