「女が男の部屋に1人で来たらOK」を、全国統一ルールと思うな! 【カレー沢薫 アクマの辞典】

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漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!

■第36回 アクマの辞典 ハ行



【ヘ】
➤ 「部屋に行く」(へやにいく)

今回のテーマはハ行から「部屋に行く」である。

最近また「性合意」についての話題をよく聞くようになった。
性犯罪などが起こると「はっきり拒絶しないほうが悪い」と何故か被害者側が責められるという構図がよく見られるが、拒絶したら殺されるかもしれない、自分より強い相手に「NO」と言うのは至難の業である。
弱い側に「NO」と言わせるより、全ての人間に「犯罪者になりたくなければ、相手がYESと言わない限りNOと思え」と自分が加害者にならないための性合意を教えたほうが簡単なのではないだろうか。

だが、もともと日本人はYES、NOをはっきり言わない民族であり、性のことになると殊更それが顕著である。

よって「女が男の部屋に1人で来たらOK」など、相手の行動でYESかNOかを推し量る風潮ができてしまったのだ。

「OK」の意味で男の部屋に行く女もそれはいるだろう。
しかし、それはその女にその時のみ適用されるワンタイムルールである。それがまるで全国統一ルールのように信じられてしまうから事件、事故が起こるのだ。

YES、NO以外の性合意表現とは、「大富豪」級のローカルルールありすぎ問題なのである。前の相手がそのルールだったからと言って、別の相手にもそれを使おうとしたら「革命」という名の「犯罪」になる可能性が高い。

そんな迷信を信じて犯罪者になるのもバカらしい、やはり「相手がYESと言う以外、合意ではない」と思ったほうが無難であり、自分のためになるのだ。

◎相手にYESと伝えること


「YES以外はNO」というのが共通認識になると今度は「YESの時はYESと言う」ことが義務になってくる。
言わなくてもわかってほしい「察してちゃん」では許されない。セックスしたいなら「したいです」と安西先生、もしくは相手にきちんと伝えることが重要なのだ。
そうでなければ相手は「YESと言ってねえからNOだ」と判断して、永遠にセックスできない。

自分の意志を言葉にできず、相手に察してもらうしかできないのは乳幼児なので「乳幼児にセックスは早い」ということである。

◎しかし、用心するに越したことはない


何か起こった後で「部屋に行ったほうが悪い」と被害者を責めるのは論外だが、「外出する時は家に鍵をかけるのが当たり前」であるように、確信犯的に隙を狙って悪いことをしようとする人間が存在する以上、用心するに越したことはない。

全くそんな気がない相手と会う時は、イトーヨーカドーのポッポなど、密室よりも人のいる開けた場所にしておくのが無難だろう。
またそんなつもりはなくても、場の雰囲気でそういうことになる可能性もあるので、後悔しそうな相手とは、ハプニングバーなどにも行かないほうが良いのだ。

【ハ】
➤ 「ハウツー本」(はうつーぼん)
…それが全女、もしくは男に通じると思うことから犯罪が起きる

【ヒ】
➤ 「火遊び」(ひあそび)
…家庭持ちがやると家が全焼するおそれがある

【フ】
➤ 「老け顔」(ふけがお)
…一定の年齢を越えると逆に不老になるので後半に強いタイプ

【ヘ】
➤ 「部屋に行く」(へやにいく)
…「そんなつもり」がなくても「スマブラやろう」と言われたら、行っちゃうだろう

【ホ】
➤ 「本妻」(ほんさい)
…本妻と思っている人が数人いて本妻不在の場合もある

プロフィール

カレー沢薫


漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。

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