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「女性であること」を理由に入試で不利に扱ったのは不当だとして、順天堂大医学部を過去に受験した女性13人が6月20日、同大の運営法人を相手取り、計約4200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「公正、公平であるべき入試の根幹を揺るがす重大な不正だ」と訴えている。

●合格判定基準、女性は一律で「高い壁」に

順大医学部では、2017年度と2018年度の入試で、それぞれ不利益な取り扱いがあったことが、この問題を調べた第三者委員会による緊急第1次報告書(2018年12月)で明らかになっている。それ以前についても調査が進められているというが、最終報告には至っていない。

訴状などによると、順大医学部は入試で、女性について一律で、男性より合格判定基準を高く設定し、厳しい基準としていた。

「性別」という受験者個人の努力や意思でコントロールできず、医師になるにあたり教養などを見極めるのに無関係な属性を理由として差別するもので、「合理性も社会的許容性も全く見出し得ない」と原告は主張している。

●入試1年度あたり慰謝料200万円

原告は、2013年度〜2018年度に1回または複数回にわたり、順大医学部を受験した13人の女性(10代と20代)。医学部の道を諦めて別の学部を選んだり、別大学の医学部に入ったりした人もいるという。

請求額の約4200万円の内訳は、入試1年度あたりの慰謝料200万円(1人あたり)や受験料、受験に際して支出した交通費や宿泊費などの総額だとしている。

提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで開いた会見で、角田由紀子弁護士は「日本社会において、隠された、そして実在する女性差別をあぶり出す。より根源的な問題を訴訟を行いながら追及していく」と述べた。

●順大「コメント控える」

提訴を受け、順大を運営する学校法人の広報担当者は取材に「訴状が届いていないため、コメントは差し控えさせていただきます」とコメントした。

順大医学部の平均合格率をみると、2013年度〜2018年度入試では男性が9.16%だったのに対し、女性は5.50%。男性の合格率が、女性の合格率を大きく上回っていた。朝日新聞(6月17日)によると、文科省が調べた全国81の医学部医学科で最も男女差があった。

医学部入試での女性差別問題をめぐっては、問題発覚のきっかけとなった東京医科大に対しても損害賠償を求める訴訟が起こされている。順大を訴えた今回の訴訟で原告になった13人のうち11人は、東京医大を訴える訴訟でも原告になっているという。

不利益な取り扱いは、順大と東京医大以外の大学でも存在したことが、文科省の調査で判明している。そうした大学を訴える可能性について、山崎新弁護士は「相談があれば提訴を検討する」と話した。

弁護士ドットコム