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 筆者は数年前に『名刺デザイン心理』というセミナーを数か月間、数十人の方に向けて実施していた。これは、名刺のデザインをデザイン屋さんが作った「かっこいい」「かわいい」名刺から、本来の目的の「覚えてもらう名刺」にするための手法を学び、デザインしてもらうセミナーだ。

◆見た目だけでなく、五感にアプローチ

 卒業された方々と会うと、「初対面でも話題が生まれるようになった!」「人脈が増えた」などの嬉しい声をいただいている。

「デザイン」と言うと、「何を書くのか?」「色はどうするのか?」という視覚的なものに意識が行くと思うが、筆者のセミナーでは「五感にアプローチする名刺」というコンセプトを取っている。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚のできるだけ多くにアプローチして、自分のことを覚えてもらったり、自分の価値を高める方法について学んでいただくのだ。

 この中でも、名刺デザインをするときに現実的なものが、視覚・嗅覚・触覚だ。「名刺クッキー」という食べれる名刺も世の中に存在していたが、食べてしまうと忘れられる可能性があるので、今回は対象外にした(ドラえもんの秘密道具「あんきぱん」と同じ効果があればいいのだが)。

 記憶に刷り込むなら「嗅覚」、自分の価値を高めるなら「触覚」、信頼関係を築くなら「視覚」と、3つの感覚が得意なことへ、効果的に心理学を使ってアプローチできる名刺を作っていただいた。名刺をデザインというよりも、相手の感覚をデザインしているというほうが正しいかもしれない。

◆紙が薄ければ、価値も薄れる

 今回は、この中から、あるこだわりを持つだけで、自分の価値を高めることができる方法について解説していく。

 それが、触覚だ。

 みなさんは、名刺の紙をどういう基準で選んでいるだろうか。紙の専門知識がなければ、多くの人が、「安いから」「みんなが使ってるから」で選んでいるはずだ。

 相手に渡す、営業道具なのに、すごく自分主体な判断方法じゃないだろうか。名刺は誰もが受け取ってくれる、最強の営業ツールにも関わらず、そこにお金をかけないことは、すごくもったいない。

 これまで、たくさんの人と名刺交換をさせてもらってきて、多くの人が薄っぺらい紙を使っている印象を受ける。実は「紙の薄さが価値を薄くしている」のだ。

◆紙の重さが価値に直結

 社会心理学の実験で、クリップボードの重さによって、そこに張ってある履歴書の自分物の評価がどう変わるかという実験が行われた。

 道行く人に重いクリップボードまたは、軽いクリップボードをランダムに渡して、クリップボードに張った履歴書の人の評価をしてもらうというものだ。

 結果的に、内容が同じにも関わらず、重たいクリップボードをもらった人のほうが、履歴書の人物を高く評価した。人は、無意識に服装で相手の価値や性格を予想するように、紙の重さで相手の価値も予想してしまっているのだ。これが、名刺交換のときに発生している。

 これは、日常生活でも頻繁に起きていることだ。ポストの中に薄い紙のチラシが入っていると、サッと目を通して捨ててしまうかもしれない。しかし、分厚いチラシだと、「なんだろう?」と少し長く確認をしてしまわないだろうか。

 普段、薄い名刺を配ってしまっている人は、試しに、100枚だけでも分厚い名刺を作ってみて、人と会うときに渡してみてほしい。そうすると、相手の態度がこれまでと変わるはずだ。

◆名刺を数多く配っても効果は弱い

 また、名刺のコストを抑えて薄い名刺を持っている人の多くは、名刺を数多く配ることを目的としていることが多い。人間の脳には記憶できるキャパがあるので、よっぽどあなたが個性的でない限りは、数を配ったところで、相手の記憶には残らなくなってしまう。「下手な鉄砲数撃っても当たらぬ」だ。