by Artem Beliaikin

「週4日労働制が効率性を上げる」「人が健康的に働けるのは週39時間まで」など、人々の労働を見直すための研究結果が多く発表されていますが、最新研究では「週1日の労働がメンタルヘルスを向上させる」ということが結論付けられました。

A shorter working week for everyone: How much paid work is needed for mental health and well-being? - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0277953619303284

Cambridge Judge Business School: The Employment Dosage: How Much Work is Needed for Health and Wellbeing?

https://www.cbr.cam.ac.uk/research/research-projects/the-employment-dosage-how-much-work-is-needed-for-health-and-wellbeing/

Just one day of work a week improves mental health, study suggests | Society | The Guardian

https://www.theguardian.com/society/2019/jun/19/working-one-day-week-improves-mental-health-study-suggests



過去の研究で、非雇用がメンタルヘルスの悪さと結び付いていることが示されており、研究者はこの理由について「雇用」が人に「構造化された時間」「社会的つながり」「自己認識」を与えるためだと考えてきました。一方で、これらの雇用がもたらすメリットを得るためにはどの程度働けばいいのか、ということは誰も調べようとしなかった、と研究の共著者であるBrendan Burchell氏は述べています。

そこでBurchell氏らは2009年にイギリスで行われた大規模調査の分析を行いました。この調査は2年以上にわたってアンケートに答えた16〜64歳の7万1000人を対象としたものとなっています。調査で被験者が答えたアンケートはメンタルヘルスの状態や人生への満足度について自己評価を行うとともに、雇用状況や勤務時間といった点を答えるというものでした。

この結果まず示されたのが、収入・年齢・子どもの有無・病歴といった点を考慮しても、「非雇用」から「雇用」になることは、人が「poorest mental health(最悪のメンタルヘルス)」カテゴリになるリスクを30%も下げるということ。ただし、この減少は「週1日だけ働く人」と「それ以上働く人」で変わらなかったそうです。



by bruce mars

また、数時間の勤務がメンタルヘルスにおよぼすメリットは女性や、障害・介護・退職といった何らかの理由によって働けなくなった男性にも同様に見られることがわかりました。

そして、さらに研究を進めたことで、標準的な勤務時間である週36〜40時間労働を下回っていたからといって、メンタルヘルスが悪化することも、逆にウェルビーイングにつながることもないことが示されました。

ただし、この研究は仕事以外の個人的な活動の影響力を考慮していない点、そして関連性を示したのであって因果関係を証明したものではない点に注意が必要です。

近年は自動化による雇用の変化、そしてそれに伴うベーシックインカム導入の必要性が検討されていますが、本研究はメンタルヘルスにとっての雇用や時短労働の重要性を支持するものとなっています。「一部の人を非雇用にするよりも、全体の雇用時間を減らすことの方が賢明です」と研究者は語り、休日を増やすことなどを解決法として挙げました。



by Toa Heftiba Şinca

ノッティンガム大学のMike Slade教授はこの研究の発表を受けて「雇用のような社会的価値のある役割の重要性を示している」としつつも「研究結果を単純化して解釈することを避けなければなりません。ただ全員の労働時間を減らすだけでは社会における不公平を増大させ、貧しい人々を増やし、働けない人々を無理やり働かせる状況を作り出してしまいます」と述べました。