専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第210回

 今回は、最近脚光を浴びている選手たちから、さまざまなことを学んで、我々のゴルフ人生を有意義なものにするためのヒントを得たいと思います。

●チェ・ホソン選手の姿勢
 まずはこの人、「韓国の虎さん」こと、チェ・ホソン選手です。

 先日、ゴルフ関連の大きなパーディーに出席し、チェ・ホソン選手を目の前で見ることができました。記念写真を一緒に撮らせてもらっただけですけど、非常に気さくな方で、ますますファンになりました。

 なんで好きかというと、彼の変則スイングと、私のひょっとこ打法が酷似しているからです。しかも、私のほうが先に実践していました……って、ホンマかいな。

 私の場合は、四十肩になって、体が回らなくなってしまいました。それで、仕方がないので、フォローの際に右足をクルッと回し、右手で大きなフォローを作りました。およそ10年前のことです。

 以降、五十肩も2度発症。そのたびに”クルリンパ”と右足を回す打法で対処し、一緒にラウンドする面々から失笑を買っていました。

 そんな時、チェ・ホソン選手の打法にめぐり合って、ひと目で好きになりました。

 チェ・ホソン選手は、かつて水産工場で働いていて、そこで右手親指の一部を切断する事故に遭ってしまいます。それ以来、指にさほど力が入らなくなって、ゴルフを始めてからは、その非力をカバーするために体を大きく回して、重心を効果的に移動する打法を開発し、飛距離を伸ばしたのです。

 チェ・ホソン選手は、そのパーティーで表彰されました。そのスピーチでは、彼は両手を見せて、若い時に指を切断した話をし、それからいかに努力をして、飛距離アップにたどりついたのか熱く語っていました。

 自分のハンディキャップをさらけ出し、それをバネにして、さらなる飛躍を遂げるチェ・ホソン選手。彼の謙虚で、真面目で、驕ることのない姿勢は、会場で大きな共感を得ていました。

 個人的には、チェ・ホソン選手が登場したおかげで、自分のへんてこスイングが正当化されたと思っています。レベルはだいぶ違いますが、とにかくそのことが一番うれしいです。

 やっぱり、チェ・ホソン選手が登場する以前は、単なる”ひょっとこスイング”なわけで、同伴プレーヤーからツッコミされまくりでした。

 我々は所詮アマチュアでしょ。へんてこなスイングをしている人は結構いますけど、「見た目は変でも理に適っているぞ」とは、なかなか言い返せませんから。それも、五十肩になって、体が自由に動かせないなか、無理をしてゴルフをして笑われるって、なんだかなぁ……。

 ゴルフって、結局は健常者のスポーツというイメージなんですよね。そう思っている人が多いのが悲しいです。

 そのうえ、変なスイングのヤツをあざける――それで、「紳士のスポーツ」なんて言っているんだから、ちゃんちゃらおかしいですね。

●金谷拓実選手の立ち位置
 金谷拓実選手は、ガース・ジョーンズ(日本ゴルフ協会ナショナルチームのヘッドコーチ)の教え子にして、日本のアマチュアゴルフ界の至宝です。現在は東北福祉大の学生で、アマチュアだからこそ可能な、おいしいポジションをフルに活用して活躍しています。

 今年は、昨年のアジアパシフィックアマチュア選手権を制して、マスターズに出場。見事に予選ラウンドを突破して、3日目を終えた時点ではローアマを狙えるポジションにいました。結局、最終日に崩れてしまい、2011年に日本人初のローアマを獲得した、東北福祉大の先輩・松山英樹選手に続く快挙達成はなりませんでしたが、その奮闘ぶりは際立っていました。

 いずれはプロになると思いますが、今の金谷選手の立ち位置は決して悪くありません。アマチュアだからエントリーできる国際大会が山ほどありますからね。しかもそこでは、将来PGAツアーを背負って立つような、強い選手と渡り合えます。そうやって切磋琢磨できる現状は、金谷選手がプロになって、さらにはPGAツアーへ進出していくうえで、とてもいい経験になるのではないでしょうか。

 もちろん、さっさとプロになって、国内ツアーに出場し勝ち星を重ねていく戦法もありますが、その戦法はもはや古いと思います。国内で”番長”になってから世界に進出していくやり方は、伸びしろがないように思えます。あくまでも結果論にすぎませんが……。

 今の時代、若い時の海外経験が非常に大事だと思います。繰り返しになりますが、アマチュアだからこそ出場できる海外の大きな試合もあるわけで、金谷選手にとっても、この体験が後々大いに役立つはずです。

 我々はずっとアマチュアのままですので、金谷選手のスケールとは大差がありますが、我々アマチュアも海外旅行などでゴルフをすることはいい経験というか、結構大事なことだと思います。ゴルフを文化として捉えることができますからね。

 国内であっても、北海道や沖縄に行ってゴルフをすると、植生の違いに手こずることが多いです。そういう経験を積んでいると、プレーの幅が間違いなく広がります。アプローチショットにしても対処法が増しますし、難しいライを見ても悩まずに済みます。

 また、金谷選手の立ち位置は、我々アマチュアに対して、場違いな試合やコンペには出るべきではない、ということを教えてくれている――そんな気がします。自分の手に負える範囲内でのエントリーって、とても大事なことです。

 以前、何を血迷ったのか、私は日刊アマの予選に参戦。大利根カントリークラブのフルバックからプレーして憤死しました。

 簡単に言えば、どのミドルホールもナイスショットしたところで、パーオンできません。たまたまダブルスの試合でしたから、恥をかきながらも何とか帰途に着くことができましたが、あれが個人での出場だったら、「何しに来たの?」という冷ややかな視線を浴びて、立ち直れないほど落ち込んでいたと思いますよ。今でも、なんでエントリーしたのか、自分でも謎ですね。

 あと、呼ばれたからといって、自らの仕事や関わりとはまったく関係のない業種や集まりが主催するコンペに行くと、浮きまくります。コンペに参加するなら、スコアはともかく、自分の存在が少しでも認知されるようなコンペにエントリーするのがいいと思いますよ。

 たとえば、飲食店をやっているのに、銀行関連のコンペに行くとか。まったく人種が違いますし、そんなところで顔色をうかがっても、融資には一切関係ありませんからね。

 というわけで、金谷選手の活躍からは、自分が一番輝くコンペに出場し、場違いなラウンドは断ろう――そういう処世術を学びました。

●タイガー・ウッズの復活に見る
 タイガー・ウッズは、歴史的なスーパースターです。その復活劇を見て思うのは、そんな彼でもスランプというか、苦難の時期がある、ということです。


活躍している選手たちからは学ぶべきものがたくさんありますね

 プロである彼がそうなんですから、我々アマチュアは、調子が悪いとか、経済的な要因で少しぐらいゴルフを休んだって、何ら問題はありません。

 ゴルフではありませんが、個人的な話をすれば、昨年の11月をもって、6年間毎日やっていたデイトレードを中止しています。勝てなくなったのが、その理由です。そこで今一度、本業の執筆業に奮起して、軍資金を貯めて、余裕ができたら再開しようと思っています。

 おかげで、漫画の原作の仕事(『黄昏ゴルフ倶楽部』週刊パーゴルフ)まで増えて、本業は絶好調。相場は米中の貿易摩擦などで泥沼状態ですから、この選択は正しかったと思っています。

 肝心のラウンドについては、スコアにさほど左右されないゴルフの仕事をしているので、楽しく続けています。

 とはいえ、ゴルフの調子が仕事に影響を及ぼしている方や、ゴルフが経済的な負担になっている方は、ラウンドの回数を減らすとか、一定期間休んでみる、というのはありです。

 タイガー・ウッズとまではいかなくとも、健康面、精神面、経済面などで不安があれば、一度休んで立て直しを図ってみる。そしてまた、自身を取り巻く状況が一変したら、ゴルフを再開する。そうして、見事な復活を飾ればいいじゃないですか。

 急がば回れ、です。

 株取引の格言に「休むも相場(※)」というのがありますが、そのまんま「休むのもゴルフ」と言って、差し支えないでしょう。
※日々、株式の売買や投資を繰り返していると、客観的に全体の相場を見られなくなり、思わぬ落とし穴にハマることがある。それを戒めるお言葉。