<Facebookが暗号通貨「Libra」を発表。Facebookが立ち上げるデジタル通貨には、プライバシーが守られるのかという懸念が持ち上がっている......>

Facebookが6月18日に発表した暗号通貨「Libra」(リブラ、ラテン語で天秤という意味)の目的は、マーク・ザッカーバーグCEOのFacebook投稿によると、「メッセージや写真をネットで手軽にシェアするのと同じ感覚で、誰もが簡単にお金を送受信できるようにすること」という。

ビットコインとの大きな違いは......

2020年に提供開始予定のLibraは、「ビットコイン」などと同じ、情報の改ざんが難しい「ブロックチェーン」技術を採用する暗号通貨だが、ビットコインとの大きな違いは、Libraはドルやユーロなどの法定通貨との交換レートが一定に保たれる「ステーブルコイン」であることだ。つまり、ビットコインのように投機目的での取引ではなく、現金の代わりのデジタル通貨としての利用を想定している。

Libraは、Facebookが直接運営するのではなく、VisaやMastarecardなど28社とFacebookも参画するLibra Associationが運営する。また、Libraを使うための専用のデジタルウォレット「Calibra」は、Facebookが新たに立ち上げた子会社Calibraが運営する。

CalibraのモバイルアプリあるいはFacebookのメッセージングサービスの「Facebook Messenger」と「WhatsApp」アプリで使えるようになる。CalibraのWebサイトによると、ユーザー同士でメッセージにLibraの通貨を添付して送受信したり、アプリをインストールしたスマートフォンをかざすことで商品購入や公共交通機関を利用したりできる。

日本でも普及しつつあるデジタル通貨の1つとして、グローバルに展開されるだけに便利に使えそうだ。

「ターゲティング広告に利用されることはない」とFB側

だが、個人情報の扱いで批判されることが多いFacebookが立ち上げるデジタル通貨だ。Calibraを利用するには政府発行のIDの提供も必要なだけに、プライバシーが守られるかどうかという懸念もある。

Libraでの購入履歴や誰に送金したかなどのデータをFacebook上のターゲティング広告に利用されることはないのだろうか?

Facebookは発表文で、「Calibraはアカウント情報や財務データをユーザーの承認なしにFacebookその他のサードパーティーと共有することはない。つまり、Calibraの顧客アカウント情報と財務データが、Facebook、Instagram、WhatsApp、Facebook Messengerなどのサービスでのターゲティング広告のために利用することはない」と説明している。

また、Libraの送受信を簡単にするために、Facebookの友達リストをCalibraにインポートできるが、この機能は自動ではなく、ユーザーが同意したときのみ実施されるとしている。サービス改善のために顧客データを利用することや、顧客データを利用した研究プロジェクトを実施することがあるが、どのようなデータがどう集められるのかは平易な言葉で説明し、透明性を保つと説明している。

「何十億人ものデータの保護について軽視する行動を繰り返してきた」

米下院の住宅金融委員会のマキシン・ウォーターズ議長は同日、Facebookに対し、この計画について公聴会で証言するよう求めた。同氏は発表文で、「Facebookはこれまで、何十億人ものデータの保護について軽視する行動を繰り返してきた。(中略)広告プラットフォームでの公正住宅法違反で政府から提訴されてもいる」とし、議会と規制当局がFacebookの計画について検討するまで、Libraの計画を停止するよう求めた。

佐藤由紀子