広島の柏は鹿島のしたたかさを称えた。写真:徳原隆元

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[ACLラウンド16第1戦]鹿島1-0広島/6月18日/カシマ
 
 王者の勝負強さをまざまざと見せつけられた。
 
 ACLラウンド16の第1戦、広島は敵地で鹿島に0−1で敗戦。24分、土居聖真に左サイドを突破され、クロスからセルジーニョに決勝点を決められた。試合後、広島の城福浩監督はゲームを次のように振り返った。
 
「選手は持てる力を出してくれました。鹿島のストロングを意識しながら、決定的なチャンスを作られなかったと認識しています。ただ、ワンチャンスを決める力があるのが鹿島で、そこからゲーム運びも含め、我々のペースに持ち込むのに苦労した試合だったかなと思います」
 
 たしかに、広島が攻勢に出た一方で、鹿島にワンチャンスを仕留められた。左ウイングバックの柏好文は「ブロックを敷いてスペースを消してスライドという部分では、非常にしたたかなゲーム運びだったと思います。しっかりアジアを取っているだけのチームなので、そう簡単ではない」と相手を称賛し、ボランチの川辺駿は「全体的にマンツーマンみたいな形が多かったので、なかなかそこを抜け出すのに苦労しました」と敵の守備に手を焼いたことを明かした。
 
 攻めても崩し切れず、逆に一発を決められて敗戦。ゲームの構図は、AFC公式サイトによるマッチスタッツでも証明された。
 
 ポゼッション率は広島が60.3%、鹿島が39.7%。そしてシュート本数も広島が9本、鹿島が7本と、ふたつの数字からも広島が攻めていたと分かる。しかし、痛恨なのが枠内シュート数で、広島が1本なのに対し、鹿島が6本。広島が大きく下回った。
 
 この数字がすべてを証明するわけではないとはいえ、差は歴然だ。この違いはなぜ生まれたのか。
 
 あくまで記者席からの視点だが、広島は攻撃のリズムが一定だった。3−4−2−1のスタートポジションに各選手が配備され、ショートパスでつなぐ。確かにボールは回っていたし、特に後半は相手を押し込んでいたものの、スピードの変化なき遅攻を繰り返すたびに、鹿島のゴール前の守備は分厚くなる。そうしてクロスを入れても、敵のブロックが崩れる気配はなかったし、得点の匂いは感じなかった。
 
 では、打開策は何か。まさに鹿島が見せたゴールではないか。最前線でセルジーニョが競り合ったこぼれ球を土居聖真が拾い、一気にドリブルで加速。ここで広島の守備が崩れ、そのスピードアップについていったセルジーニョが、ゴール前でリフレクトしたクロスを詰めた。
 
 得点シーンだけでなく、例えばレオ・シルバが中盤でセカンドボールを拾ったり、インターセプトした後、複数人が絡むスピード感のある攻撃は何度かあった。この“点が入る”という瞬間を嗅ぎ分けてチームとしてスピードアップする攻撃にこそ、“勝負強さ”を感じた。

 鹿島はしたたかだったが、「負けましたけど、1−0という最低限の結果で次につながる」(川辺)、「ホームでやり返したい」(柏)と選手たちが言う通り、広島が勝ち抜けるチャンスはまだある。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)