柴崎(7番)と中山の2ボランチは連動性が低く、守備のバランスを保てなかった。(C)Getty Images

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 注目されたコパ・アメリカ初戦はチリに完敗。厳しい船出となりました。
 
 今回のコパには様々な前提条件があります。ほぼぶっつけで挑んだフルメンバーではない日本代表ですから、エクスキューズはいくつも挙げることができます。しかし、選手たちは全力で勝ちにいったはず。「いい経験を積むことができた」は、未来の選手たちがいつかそう言えばいい言葉で、ここでは敢えて使いません。純粋にこの試合を振り返りたいと思います。
 
 日本代表は4−2−3−1の布陣で挑みました。対するチリは直前のテストマッチと少し中盤の形を変え、4−1−2−3のような形。そのことでお互いの中盤が噛み合うような形になりました。
 
 4バックの選択は色々な考え方ができますが、コパの初戦に”積極的な入り”をしたかったのではないかと想像します。”積極的な入り”とは攻守に「前へ」の意識を見せること。
 
 3バックを選択すると、今回の招集メンバーではサイドバックを主戦場とするウイングバックしかいないため、連係を取る時間もない中では5バック状態になってしまう恐れがあります。そうなると「前へ」の意識は持とうにも持てない場面が増える。4バックの選択は予想された通りでした。
 

 加えて、前田選手を右サイドで起用したのはチリをスカウティングしてのものだったと思います。最近の試合で、チリは左サイドの守備に問題を抱えていました。特に、センターバックとサイドバックの間に走り込んだときに連係や受け渡しがうまくできない場面があったので、前田選手にそこを突いていく役割を任せたのでしょう。
 
 狙い通り”積極的な入り”自体はできていたと思います。
 
 久保選手と中島選手は立ち上がりから臆することなく仕掛けました。細かなステップにチリの選手たちが慣れていない時間帯に、相手ゴール前までボールを運ぶ役割をよく担っていました。
 
 キャプテンを任された柴崎選手は、その責任感を「落ち着き」という形で見せました。攻守に「いつも通り」の自分で挑もうとする姿勢を中央の選手が見せることで、経験の浅い選手が並ぶ日本代表でしたが、決して悪くない立ち上がりを見せました。
 
 しかし、2連覇中のチリは流石の老獪さ。主力選手たちが軒並み高齢化してきた中で、強度や勢いは以前ほどではありませんでしたが、試合を進めながら、確実に日本の守備陣形のスペースを見つけていきました。
 
 
 具体的には、柴崎選手が前にプレスに出たときのバイタルエリアと日本の左サイドです。
 
 柴崎選手がこの日コンビを組んだ中山選手は、ビダル選手やアランギス選手に対して出ていく意識が強い一方、柴崎選手が前に出ていったときの背後を埋める意識が薄く、連動しないためにディフェンスラインとの間にスペースを空けてしまう場面が散見されました。
 
 左サイドでは中島選手が攻め残りすることで、チリは右サイドバックのイスラ選手がオーバーラップをすると簡単に2対1を作ることができていました。日本としては、中島選手を”強み”として起用するために、ある程度目を瞑っているところなのでしょうが、これくらいの相手に対して日本代表がすべき策なのかは疑問が残りました。
 
 チリは、前半を戦っていく中で、バイタルエリアと左サイドという日本が与えてくれる明確なスペースを見つけ、何度も再現性をもって突いてきました。日本もそこはある程度割り切りながら、先制点まではゴール前で守ることができていたものの、後半に入っても修正されなかった二つのスペースで完全に決壊してしまいました。
 
 0−4。サッカーにおいて決して「惜しい」と言えるスコアではありません。

 確かにチャンスは作りました。特に、柴崎選手から上田選手へのホットラインは可能性を感じさせましたし、決定機と呼べるものもありました。
 
 しかし、こうした試合を「あれを決めていれば」と語るのは”安易”と言わざるを得ません。そう言ってしまえるなら、サッカーはほとんどの試合でそう言えるのですから。
 
 例えば、先ほど触れた、相手のスペースを見つけて時間とともに的確に突いていくということ。例えば、いつスピードアップをするのかの共有。例えば、サイドを崩しにかかったときの中の人数。例えば、守備の問題を試合中に修正する方法。例えば、ドリブルをする相手への対応。
 
「あれを決めていれば」「惜しかった」ではなく、具体的に見えた違いを、残りの試合で改善する気概の見える戦いを期待します。
 
【著者プロフィール】
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。鹿島で不動のCBとし2007年から前人未踏のJ1リーグ3連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。