過去4回にわたって行われた中朝首脳会談は、すべて中国国内で行われた(写真は2018年6月の会談の様子。労働新聞ウェブサイトから)

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中国の習近平国家主席が2019年6月20日から21日にかけて、北朝鮮の平壌を訪問することになった。両国の国営メディアが17日に報じた。

中国の最高指導者による訪朝は、胡錦涛氏が05年10月に訪問して以来、約14年ぶり。合意なしで終わった19年2月の米朝首脳会談以降、朝鮮半島の非核化をめぐる協議は目立った進展が見られない状態だ。北朝鮮としては、中国の存在を強調することで、事態の打開を狙っている可能性もある。だが、北朝鮮がこの期に及んで「核武力強化」を狙っている、との見方も浮上。米中関係が貿易問題で冷え込む中で「後ろ盾」が機能するかは不透明だ。

習氏との過去4回の首脳会談はすべて中国国内

習氏と朝鮮労働党の金正恩委員長は18年3月から19年1月にかけて、4回にわたって首脳会談を繰り返してきたが、いずれも場所は中国国内(北京・大連)だった。北朝鮮が06年10月に初の核実験を強行したこともあって、中国最高指導者の訪朝は途絶えていたが、19年が中朝国交樹立70周年にあたることもあり、正恩氏の招きに応じる形で実現した。

大阪での主要20か国・地域(G20)首脳会議が6月28〜29日に迫っており、そこでは米中首脳会談が行われるとみられる。非核化の問題は中朝会談でも議論されるとみられ、それがどういった形で米中会談に反映されるかが焦点だ。

そういった中で、北朝鮮に非核化の意志がないとする指摘も出ている。米国務省が運営する国際放送局「ボイス・オブ・アメリカ」は6月17日、2月の2回目の米朝会談に先立って北朝鮮の内部的な考え方を軍幹部に周知するために作成されたとされる講習資料を入手した、と報じた。この資料は18年11月に発行されたといい、米朝会談は「核交渉」で、核保有国として認められるための「第一歩」だと規定。核武力を強化して、世界的な核強国としての地位を固めることを首脳会談の目標として明示した、などと報じている。「非核化」という文言は登場しなかったという。

国務省報道官「金正恩委員長が非核化の約束を果たすと信じており...」

北朝鮮は18年4月の朝鮮労働党中央委員会総会で、核開発と経済建設を両立させる「並進路線」を終了し、経済成長に重点を置くことを表明している。仮にVOAの報道が正しいとすれば、北朝鮮は「18年4月以前」に戻ったことになるが、「この文書の真偽をめぐっては専門家たちの間で意見が分かれている」(韓国・朝鮮日報)などと報じられているほか、韓国統一省の李相旻(イ・サンミン)報道官は19年6月17日の記者会見で、

「報道された内容について当局が判断するのは適切ではない。文書の真偽については、より検討する」

と発言。慎重に信憑性を判断したい考えだ。

国務省のオルタガス報道官は17日午後(米東部時間、日本時間18日未明)の記者会見で、VOAの報道について事実確認を求められ、

「すべての報道について言及したり憶測を述べたりすることはしない」

とした上で、

「トランプ大統領とポンペオ国務長官は金正恩委員長が非核化の約束を果たすと信じており、この点で米国の政策には変更はない」

と話した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)