東京五輪世代の上田綺世(左)、久保建英(中央)、大迫敬介(右)。将来への可能性を示してみせた。(C) Getty Images

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 20年前のコパ・アメリカで、日本は開催国のパラグアイに0−4で完敗した。そして今回の3連覇を狙うチリ戦もスコアは同じだったが、細部を辿れば確かに20年間の進化の跡も見て取れた。20年前は文字通りの完敗だったが、今回は決定機を4度、それに近いチャンスも2度築いた。

 チームでも個でも経験値ではるかに上回るチリが合宿を組んで万全の準備を施して来たことを思えば、ベストの日本が中立地で挑めば勝算も見込める可能性を示したゲームとも言える。
 
 
 特に孤立しがちなワントップで5度もチリゴールに肉薄した上田綺世は、途中で自身に代わって登場して来た岡崎慎司を超えていく可能性を見せた。ボックス内では圧倒的に数的不利ながら、際立った駆け引きでフリーになり、ピンポイントでの可能性を探り続ける。

 本来大学リーグでプレーする選手が、日常とは異次元のプレッシャーの中でチャンスの芽を生み出していくのは奇跡に近い。惜しくも決め切ることは出来なかったが、どれも簡単な形ではなく、東京五輪を考えれば、獲得を決めている鹿島は一刻も早くJリーグで使ってほしい素材。ポスト大迫勇也の有力候補に浮上したと見ていい。
 
 一方その上田に2度の決定的なスルーパスを通した柴崎岳も、主将らしくチームに貢献した。とりわけ守備から攻撃に移行した際に、最前線での一瞬の隙を見つけ、そこに正確なパスを供給する能力は抜けている。前半終了間際に一度、さらに57分にも、ビダルからインターセプトすると即座にファーサイドへ逃げる上田にピンポイントクロスを提供した。またアディショナルタイムにも、右サイドからペナルティエリア左の安部裕葵の足もとにロングパスを通し、ファーストタッチで見事にDFを外した安部が、そこで狙っていれば絶好機になっていた(結果はさらに切り込み逸機)。またポゼッションで上回るチリは、しっかりとパスを繋ぎながらサイドから攻略を図ったが、的確な読みで再三最後の防波堤の役割を果たした。
 
 さらに代表初先発の久保建英は、後半に入るとFC東京での立場と同じく、完全に攻撃のタクトを託された。どうしてもボールを引き出すために下がって受けるケースが目立ったが、前を向けば2〜3人に追走されてもドリブルにブレがないので相手もまったく飛び込めない。左サイドの中島翔哉が無理な状況でもボールキープに固執し、何度かチリのカウンターを食っていたのに比べ、状況判断の速さ、的確さの違いが浮き彫りになり、森保一監督も前線4人のうちひとりだけ最後まで残すしかなかった。
 
 すでに経験豊富で、守備に止まらず攻撃でもアグレッシブな姿勢を貫いた冨安健洋、代表デビューながら落ち着いたパフォーマンスに終始し、責任を問われるゴールを許していないGK大迫敬介も、改めて五輪の主軸になる価値を示した。
 
 一方で森保監督は、5バックで後傾したままになるのを嫌ったのか、4-2-3-1(守備時は4-4-2)を選択したが、さすがにサイドバックの経験不足が目立った。また2列目も右サイドは前田大然でスタートし、未知のポジションとしては予想以上に健闘したが、選手間の距離を縮めてポゼッションを高めるには、途中交代で出場した安部や三好康児ら別の選択をした方が効果的だったかもしれない。
 
 国際的なトップレベルでの経験に裏打ちされた巧みな試合運びにより、スコアは内容以上に広がった。だが何ひとつ有利な要素がない最悪の条件を考えれば、必ずしも手にした収穫は少なくなかった。
 
文●加部 究(スポーツライター)

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