段差を使って同じ高さを演出する176cmの三嶋と196cmの国吉 [写真=萩原孝弘]

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◆ 期待の星と呼ばれた男たち

 2012年のドラフト2位入団で、翌年には開幕投手を務めた三嶋一輝。育成出身ながらスケールの大きいピッチングで、暗黒時代に煌めいていた国吉佑樹。エース候補としてチーム、ファンから大きな期待を寄せられた、かつての“新星”は、不調やケガもあり次第にその輝きを失っていった。

 しかし、昨シーズン、自身初の60試合に登板し、ブルペンでの順列を徐々に上げていった三嶋と、同じく昨シーズンにカットボールでキッカケを掴み、オフのオーストラリア武者修行でスケールアップした国吉。同じような道を辿っていた2つの星は今、リリーフという新たな役割を得て、その輝きを取り戻した。

 主に僅差の痺れる場面での登板の多い三嶋と、劣勢の場面での回跨ぎどころか3イニングを任されることもある国吉だが、ふたりの中にある中継ぎとしての矜持は共通している。それは「攻めて、押し込んで、ねじ伏せる」というもの。豪快なストレートを武器とする2人は、ともに「腕を振ること」が大事だと声をそろえる。

 今シーズン当初、四球の多さが目についた三嶋だったが、最近は安定している。しかし「投げ方は変えていない。四球はある程度は仕方ない。置きにいって打たれるほうがよくないですから」。それに呼応するように、国吉は「3ボール1ストライクでも腕を振って投げます。置きにいかなければボール球でもバッターは振ることがある。打つほうもプロ、思い切り投げて思い切り打たれたら仕方ない。覚悟の上」と続ける。

◆ チームへのメッセージ

「チームのためにも攻める姿勢を見せれば、野手にも伝わる」

 三嶋は、6月15日のソフトバンク戦、1−4と3点ビハインドの8回裏にマウンドに上がった国吉が、内川、釜元、グラシアルをストレートで三者三振に仕留めた後の9回表に、自軍が粘りの攻撃で1点差にまで迫ったことを例に挙げ、「あのピッチングが野手に伝わったと思ってます」と語る。これには、国吉も大事なのは「勝負する気持ち」と頷いた。

 また、15日の試合で国吉が投じた146キロのカットボールについて三嶋が尋ね、国吉がソフトバンク・千賀の握りを「スローで研究して投げたらいい感じでスピードも出た」ことを明かすなど、技術面に関してもよく話をするという。

 そういった真面目な野球談議の間にも、国吉が身長などで三嶋を弄り始めると、ひとつ年上の三嶋は苦笑いしながらもユーモアを交え応酬するなど、2人の間にはいつも心地良い空気感がある。常にスリリングな展開の中に身を置く男たちにとって、リラックスできる仲間とのコミュニケーションはとても重要だ。

 同じ右腕で直球で押すピッチングスタイル。そして一度ならずとも辛酸を嘗めた男たちは、仲間でありライバルでもある。期待されていた2人の投手が、ベイスターズのブルペンで光煌めく星となるべく、きょうも一心不乱に腕を振る。

取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)