プリントシール機メーカー、フリューが手がける直営店のmoreru mignon舞浜イクスピアリ店。朝には東京ディズニーリゾートへの入場前にプリを撮る人たちで長蛇の列ができるという(写真:フリュー提供)

「この前これ撮った!盛れた!」「いつも撮ってるやつ、並んでるじゃん」

5月下旬の金曜日夕方、渋谷センター街のプリントシール機(プリ機)専門店内では、制服を着た女子高校生や若いカップルが、どの機種で撮ろうかと歩き回っていた。


渋谷センター街のプリ専門店に入っていく女子高生たち(記者撮影)

人気機種の待機列では女子高生2人が笑い合いながらスマートフォンで自撮りをしている。

最新のプリ機はさまざまな機能が追加され、進化しているのをご存じだろうか。

シール紙が半透明になっている機種、撮影スペースが広く大人数で撮れる機種、ハングルのスタンプが搭載されK-POPのBGMが流れる機種など、20台近くが所狭しと並んでいた。

プリクラ」ブーム全盛期が去った今

約20年前、平成初期に流行した「プリクラ」。その原点は、1995年にアトラスが発売した「プリント倶楽部」だ。

SMAP(当時)が出演する番組「愛ラブSMAP!」で取り上げられたのをきっかけに「プリント倶楽部」は一大ブームとなり、業界内外から多数のメーカーが市場に参入した。日本アミューズメント産業協会の「プリントシール機20年史」によると、1997年にはゲームセンターにおけるプリ機の年間売上高は1000億円を超えた。

翌年以降、ブームが急速に落ち着き、売上高が半分以下の約400億円にまでしぼんだ。そこで、業界各社は落書き機能の拡充や「写り」の追求に加え、カメラを可動式にする、ソファを設置するなどあの手この手で顧客に訴求。2002年には売上高が600億円規模まで回復し、「プリントシール機」の時代となった。

それでも、ゲームセンターの減少、スマホの登場を受けて利用者の減少には歯止めがかからなかった。足元のプリントシール機市場は縮小している。


年間売上高は、2007年の約307億円から10年後の2017年には約220億円まで落ち込んでいる。

この20年で18歳人口が3割近く減少する少子化の逆風もあり、各メーカーはプリ機業界から撤退している。「プリクラ」生みの親のアトラスは2009年に業務用ゲーム事業から撤退し、2018年10月には、ヒットを生み出してきた大手メーカーのメイクソフトウェアも倒産。プリ機市場は約9割のシェアを握るフリュー1強となっている。

フリューは、1998年プリントシール機事業に参入したオムロンのエンタテインメント事業が発祥。プリ機や消耗品のシール紙のほか、ゲームセンター向けにクレーンゲーム用の景品などを開発・販売している会社だ。


フリューが現在展開する機種の一部。左から「トキメキルール」、「PINKPINKMONSTER2」、「SUU+」(記者撮影)

主要事業であるプリントシール事業の売り上げは、ヒット機種の有無で変動はあるものの、2016年3月期の約88億円(セグメント利益は10.2億円)から、2019年3月期には約96億円(同14.8億円)まで伸ばした。

プリントシール事業の売り上げの大半はシール紙によるもので同社機種のプレイ回数と比例して伸びている。

縮小する市場の中でどのように生き残ってきたのか?

フリューがプリ機市場を牽引する存在となった要因は、技術力だ。

2007年、「目ヂカラ」アップが特徴の「美人―プレミアム―」という機種を発売。この機種から、縦方向だけでなく横方向にも目を拡大する機能を導入した。

これを機に、各メーカーがしのぎを削った「デカ目」競争が激化。果ては、目があまりにも拡大されたプリ画像は「宇宙人」とも称された。

2011年、フリューは目だけでなく肌など全体を加工することで自然に見せる「LADY BY TOKYO」という機種を発売、業界全体の流れを変えた。

新機種の大ヒットを受け、6割超のシェアを獲得したフリューの商品開発力に他社が追いつけなくなった。その後、プリ機で撮った写真を携帯電話に保存できるサイトの有料会員を中心にユーザーを拡大し、現在まで成長を続けている。

自撮りとは異なる価値を彼女たちは求めている

スマホのカメラや加工アプリが普及しているにもかかわらず、今の女子高生がプリを撮り、画像保存サイトに課金もするのはなぜだろうか。


フリューは画像保存サイト「PiCTLINK(ピクトリンク)」を運営。月額300円(税抜)から500円の有料会員数は2019年3月時点で約164万人に達している。ガラケーの課金、スマホサイト課金、スマホアプリ課金で料金は異なる(画像:PiCTLINKのHPより)

最大の理由は、スマホでの自撮りと異なる価値をプリに求めているからだ。

スマホでは日常の何気ない思い出を撮り、イベントや記念など特別なときにはプリを撮るという使い分けがされているという。

シールそのものよりも、友人や恋人、家族で「プリを撮る」というイベントが楽しまれているのだ。

さらに、画像保存サイトを通じてダウンロードしたシール画像をスマホのアプリで再度加工してSNSに投稿するやり方も広まっている。1回400円を払えば照明や高機能のカメラ、加工機能で簡単に「かわいい」を作れるプリは、女子高生たちにとってはベースメイクのような存在とも言える。

女子高生の遊び方の変化を受けて、イベントの時期に大人数で撮れるような撮影スペースの大きい機種や、後から加工しやすいようにシンプルなデザインで撮影できる機種をフリューは開発した。プリと自撮り文化は相互に影響を与えながら共存している。

しかし、プリ文化の主役である高校生人口の減少に対する危機感は大きい。競合倒産による売り上げへの影響はほとんどないというが、プリ文化の存続を実質的にフリュー1社が担うことになった。


5月下旬、決算説明会でのフリューの三嶋隆社長(記者撮影)

「製品ごとの特徴を打ち出し、1人当たりプレイ回数を増やすことで客単価をあげる取り組みを2018年度から実施してきた。

今後は、プリ機からの卒業年齢を1歳でも遅らせたい」とフリューの三嶋隆社長は話す。

高校卒業と同時に急減していたユーザー層の拡大は業界存続のための課題でもある。

プリを撮る文化は今後どうなるか

ユーザー層拡大には、プリから卒業した20代以上の女性がターゲットになる。

大学卒業を前に何度もプリを撮ったという20代前半の女性は、その理由を「女子高生とか若い子の遊びの中で最も体験しやすいから」と話す。20代以上の女性が手軽に若者文化を楽しみたいというニーズに対応できれば、需要も掘り起こせるだろう。


6月から投入している新機種の「AROUND20」。外装の巨大スクリーンが特徴。操作性やデザインをシンプルで大人っぽくすることで、20代がプリを撮るのにハードルを下げる意図がある(記者撮影)

フリューが業界首位に躍り出た約10年前は競合各社がおり、イノベーションが生まれやすい業界環境だった。

フリューの1強となった現在、外部環境が悪化する中でプリ文化を存続させることは決して簡単ではない。

インスタ映えするような新機種を発売するほか、直営店も展開しているフリューだが、市場を維持・拡大させるためには、女子高生よりも購買力があるプリ卒業生を呼び込むための起爆剤が必要になる。

最新のトレンドを追い続ける女子高生たちから生み出される新たな遊び方に応えつつ、年齢層拡大を模索するフリューに「プリを撮る文化」の存続がかかっている。