ソフトバンクは携帯電話と自宅用WiーFi契約を組み合わせ、実質的に契約者を4年間囲い込む販売手法を展開している(記者撮影)

昨年8月に菅義偉官房長官が「携帯電話の通信料金は今より4割程度下げられる」と発言したことをきっかけに、携帯キャリア各社のビジネスモデルが問題視され、その契約や販売の手法に次々とメスが入っている。

ところが、総務省もまだ見過ごしている、契約者をわなのように囲い込む手法がほかに存在するのだ。それが、ソフトバンクの携帯電話の通信プランと自宅用Wi-Fiの通信プランを組み合わせた「実質4年縛り」契約だ。

【2019年6月18日14時6分注記】初出時の記事で「光回線」としていた表記は「自宅用WiーFi」の誤りでした。お詫びのうえ、表記のように修正いたします。

自宅用WiーFi契約の二重の落とし穴

同社の機器には、コンセントに挿すだけでお手軽にWi-Fi環境がつくれる「Air」というものがある。ソフトバンクショップの店員によると、工事が不要なため、賃貸マンションに住む人たちに人気が高いという。

Airの価格は5万8320円(税込み、以下同)と高額だが、ソフトバンクはこれを36カ月の分割払い、つまり3年間の毎月払いにしている。1カ月当たり1620円の支払いになるが、ソフトバンクの自宅用WiーFiの2年契約プランに加入すれば、Airの購入補助費が毎月1620円つく。Airが実質無料で使えるように見えるが、そこには二重の落とし穴がある。

まず、自宅用WiーFiの2年契約プランが満了したときに他社に乗り換えれば、12カ月分残っているAirの購入補助費も同時になくなってしまう。2年間の自宅用WiーFi契約を更新しなければ、利用者には12カ月分のAirの支払いが降りかかってくる仕組みなのだ。この約2万円の残債があるため、利用者は他社に乗り換えにくくなっている。

では、Airの支払いを購入補助費で完済した3年後ならば自宅用WiーFiの契約から抜けやすいかと言えば、そうではない。

最初の2年契約の満了時に、残り12カ月分の購入補助費を受け取るためには、自宅用WiーFiの2年契約を更新しなければならないからだ。その結果、3年後に自宅用WiーFiの契約から抜けると、2回目の2年契約を途中解約したことになり、たちまち違約金1万0260円が課せられるのだ。

この「実質4年縛り」とも言うべきソフトバンクの自宅用WiーFiの販売手法は、携帯通信プランの囲い込みを破壊しようという政府の方針にも大きな影を落とすものだ。

KDDIの光回線は3年縛りの契約を展開

ソフトバンクを含むキャリア各社は、携帯と自宅用WiーFiや光回線の通信プランにセットで加入すれば、毎月の携帯通信料を1000円割り引くようなセット割引を行っている。ソフトバンクやNTTドコモの場合、自宅用WiーFiや光回線を契約する人の家族であれば、同居していなくても携帯の通信料の割引対象になる(KDDIは同居家族のみ対象)。

大きなセット割引を受けられるため、利用者は携帯と自宅用WiーFiや光回線の通信契約を同じキャリアでそろえたくなる。総務省がソフトバンクの自宅用WiーFiの実質4年縛りを認めれば、利用者は携帯の契約でも4年間、他社へ移りづらくなる。

ソフトバンクAirの自宅用WiーFiは、表向き2年契約をうたいながら実質4年契約を強いるため悪質だが、KDDIも光回線で途中解約すると1万6200円の違約金を課す3年縛りの契約を展開している。唯一、NTTドコモは光回線を2年契約にとどめているが、高額の違約金は存在する(戸建て1万4040円、マンション8640円)。

総務省が携帯の2年契約縛りの違約金を1000円程度に引き下げても、長期間の縛りがある自宅用WiーFiや光回線の契約と携帯の通信契約とのセット割引を野放しにすれば、多くの利用者は自由に携帯プランを乗り換えられるようにはならないだろう。本気で競争を促す改革をするつもりであれば、ここにも改革のメスを入れるべきだ。