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MLBエンゼルス・大谷翔平(24)の連日の活躍でテレビに釘付けの野球ファンも多いことだろう。試合の合間にテレビカメラがベンチの様子をとらえる際に、選手が何か食べている光景をよく目にする。口をもごもごさせている選手の多くはガム、もしくはヒマワリの種を食べている。日本のプロ野球選手でもガムを噛みながらプレーをしている選手は多いが、試合中にベンチでヒマワリの種を食べている選手はあまり見かけない。なぜ、メジャーリーガーは試合中にヒマワリの種を食べるのだろうか。J-CASTニュース編集部が調べてみた。

ヒマワリの種といえば、日本では一般的にハムスターの主食として知られる。記者はヒマワリの種を食べた経験はないが、おそらく多くの方も食したことはないだろう。米国ではヒマワリの種を食べる習慣があるのだろうか。そんな疑問も浮かび上がる。そこでJ-CAST編集部は、長年にわたってMLB球団の職員を務めた経験を持つプロ野球関係者に話を聞いてみた。

バーベキュー味、サルサ味、ランチドレッシング味も

関係者によると、メジャーリーガーが食べているヒマワリの種はローストされたもので、米国ではコンビニエンスストアやスーパーなどで売られ気軽に手に入るという。オーソドックスなものは、ローストされたものに塩がふってある塩味で、ピーナッツに似た味がするという。これ以外にバーベキュー味やサルサ味、ランチドレッシング味など数種類、販売されている。メジャーリーグで多く見かけるのは、DAVID社製のものだという。ちなみにこの関係者の一押しは、ランチドレッシング味だそうだ。

メジャーリーガーが試合中にヒマワリの種を食する光景は、1950年代にはすでにみられており、少なくとも70年近い「歴史」を持つとみられる。当時はガム、噛みたばこと並んでメジャーリーガーの「嗜好品」として親しまれていたようだ。噛みたばこは、1993年にマイナーリーグで全面禁止となり、メジャーでは一部球場をのぞいて容認されていたが、2017年シーズン以降にメジャーデビューした選手は全面禁止となっている。

「大谷選手のように行儀のよい選手は...」

このような背景からヒマワリの種は、ガムと並んで需要が急上昇したという。では、なぜメジャーリーガーは試合中にヒマワリの種を食べるのか。もうお分かりの方もいるかもしれないが、ようは選手の「暇つぶし」が理由である。試合に出場している選手はいざしらず、ベンチで出番を待っている選手、そしてブルペンで登板の機会をうかがう選手の絶好の退屈しのぎの「種」となっている。クラブハウスやベンチには、ヒマワリの種の他にカボチャの種が用意されることもあるが、カボチャの種はヒマワリの種に比べて大きいため、口の中でもてあそぶには適さず、小粒なヒマワリの種が圧倒的な人気を誇る。

メジャー流ヒマワリの種の食べ方をMLBの元職員が教えてくれた。

「多くの選手は一度に20から30粒ほど、左右どちらかの頬にためる形で頬張ります。それを舌で一粒一粒、頬から移動させて前歯などで殻を割って中身を食べます。ローストされているので、パキッと殻がきれいに割れ、その殻をベンチの床に吐き出すのが主流ですね。暗黙のルールで人工芝のグランドに殻を吐き出すことはしませんが、屋外の天然芝の土のグランドに殻を飛ばす選手はいます。大谷選手のように行儀のよい選手はメジャーではあまり見かけません」

メジャーリーガーがベンチを汚す理由は

メジャーリーグではこのように選手がヒマワリの種の殻などベンチ床に吐き捨てるため、日本では見られないほどゴミが散乱している。メジャーリーグのチームが来日するたびにベンチの汚れが話題に上がるが、なぜメジャーリーグの選手はベンチの床をゴミ箱のごとく汚すのか。何ら抵抗感はないのだろうか。前出の関係者は次のように説明した。

「これは日本とアメリカの文化の違いでしょう。メジャーリーガーがベンチの床に紙コップやヒマワリの種の殻を捨てるのは、ちゃんとした理由があります。選手がおのおのゴミをゴミ箱に捨てれば、ベンチを清掃する人間の仕事を奪うことになります。日本人の感覚では考えにくいことですが、アメリカではベンチは汚すものという認識があります。決してマナー違反ではないのです」

米国ではMLBだけではなく、独立リーグや大学野球にもヒマワリの種を食する習慣が浸透しているという。ビタミンEやビタミンB1、食物繊維を含むヒマワリの種は、栄養価が高いとされ、海外では健康食品として取り扱われている国もある。前出の関係者は「炎天下の試合では、塩分を含んだ塩味は、熱中症対策になるかもしれませんね」と話す。ただ、今のところ日本球界でこの習慣が流行りそうな気配は感じられない。