ルーキーイヤーで出番を掴む。プロとしての自覚は早い段階で出てきたという。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 2020年に開催される東京五輪。本連載では、活躍が期待される注目株の生い立ちや本大会への想いに迫る。
 
 3回目は、抜群のドリブルテクニックを誇り、局面の打開力に優れる遠藤渓太が登場。横浜F・マリノスの下部組織出身で、ユースでの最終学年ではクラブユース選手権でチームの優勝に大きく貢献、自身は大会MVPと得点王を獲得し、トップ昇格を勝ち取った。
 
 プロ入り後は1年目から出場機会を得て、早い段階でA契約を勝ち取る。背番号が18から11に変わった3年目の昨季には、ルヴァンカップのニューヒーロー賞を受賞。迎えた今季も左サイドを主戦場に、横浜の『アタッキング・フットボール』を支える貴重な戦力として、際立つパフォーマンスを披露している。
 
 チャンスメーカーにもフィニッシャーにもなれる成長著しいアタッカーは、ここまでどんなサッカー人生を歩んできたのか。後編では、プロになってから芽生えた意識や手応え、そして東京五輪への想いに迫る。
 
前編はこちらから
【連載・東京2020】遠藤渓太/前編「中学時代は『△』評価も、気がつけば“敵なし状態”に」

中編はこちらから

 
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――プロ入りしてからは1年目でリーグ戦23試合に出場。それだけ多くの出番を得られるのは、自分でも驚きだったのでは?
「『まさか』って感じでした。やっぱりリーグのデビュー戦となった新潟戦で勝てたのが一番大きかったですね」
 
――しかも、いきなり先発出場でした。
「チームの調子が上がっていなかったので、監督は何かを変えたかったんだと思います。それで、たまたま練習で良いパフォーマンスができていた僕が使われたんです」
 
――緊張したのでは?
「それはかなり。でも細かいことを考えていても仕方がないので、ピッチに入った時には、もうやるしかないなって心を切り替えました」
 
――プロになると責任感も大きくなりますか?
「そうですね。見られる機会も多いし、不甲斐ないプレーはできません。ただ、今はいい意味で、もうそんなに人の目は気にならなくなりました
 
――プロとしての自覚が芽生えたのはいつ頃?
「やっぱり試合に出始めてからです。結構早い段階で出てきました」
 
――ユースとの一番の違いは?
「ゴールキーパーの質です。ユースの時は強いシュートを打てば入ったけど、プロの選手には簡単に止められてしまう。コースを狙わないと全然入りません。トップチームに上がった当初はそこを一番感じましたね」
 
――プロ1年目の時はエリク・モンバエルツ監督の下でプレーしていました。信頼を得るためにやっていたことは?
「ドリブルでの仕掛けや、裏に抜け出しが好きな監督だったので、そこはかなり意識していました。そこは自分の持ち味だったし、監督からも買ってもらっていたので。そこは存分に出さないとなと」
 
――スタイルが合うから、気持ちよくプレーできたのでは?
「面白かったです。たまにサイドバックで出たりもしましたけどね」
 
――サイドバックはその時が初めて?
「そうです。でも僕がサイドバックに入るのはビハインドの時だったので、あまり守備的ではなく、どんどん後方から裏に抜けていくような役割でした。なので、そんなに苦労はしなかったです」
 
――とはいえ、プレーの幅は広がったのでは?
「それもあるし、サイドハーフよりも見える範囲が広く、割と余裕を持ってボールを持てるポジションだったので、プロの空気感に慣れるためにはちょうどよかったかもしれません」
 
――昨年からはアンジェ・ポステコグルー監督の下で、よりポゼッションを重視するサッカーに取り組んでいます。やり甲斐は?
「楽しいです。スタイルがすべてではないけど、うちみたいな連動して攻めるサッカーをするチームは相手からしたら嫌なはずだし、監督もよく『自分たちのサッカーをすれば負けるわけがない』と言っています。しかも徐々に昨年以上に守備は安定してきています。シーズンを通して波があるのは当然だけど、その波をさらに小さくするのが今の課題です」
 
――チームとしてだけでなく、選手個々のパフォーマンスにも少なからず波はあるものです。調子が上がらない時は、どう切り替えていますか?
「もちろん、しっかりと調整して向かうのが僕らの仕事だけど、毎試合理想どおりにはいきません。僕は波に乗れない時は、攻撃で貢献できない分、今日は守備を頑張ろう、って考えるようにしています」
 
――あまり引きずらない?
「パフォーマンスが悪い時は、そりゃ落ち込みますよ。今季リーグ戦で初めて先発した名古屋戦で、開始10分でPKを与えてしまって……あれはさすがに堪えましたね。もっと考えてプレーしなきゃいけないなって。でも自分のプレーだけでチームの勝敗が決まるわけでもない。そういう時もある、次は頑張ろうって切り替えたほうが良いなと最近そう思うようになりました」
 
――特に外国人監督の下では、シーズンを通して試合に出続けるのは難しいと思います。ここまでのふたりの監督の下でプレーして、いかがですか?
「外国人の監督って選手の好き嫌いがはっきりしている人が多いけど、僕にとっては普通。プロになってからはずっと外国人監督に指導を受けているので、特別な感覚はないです」
 
――コンスタントに出番を得られている要因は?
「監督が何を求めているかを理解するのがすごく大事なのかなって。特に外国人監督の下でやるには」
 
――ポステコグルー監督に求められているのは?
「裏に抜けてからのクロスとか、最近は縦だけでなく中央に入ったりとか、臨機応変なプレー。あとは守備のスイッチになることや、スプリント数も必要ですね」
 
――スプリントは意識している?
「試合中はあまりしていないです。でもスプリントが多いってことは、結局何かしらの仕事をしているってことだと思うんですよね。裏にも抜けるし、守備に戻るし、ドリブルもするし……、色々な仕事をした結果が、自然と数字に表われているって感じです」
 
――目に見える結果で言えば、昨年のルヴァンカップではニューヒーロー賞を獲得。形として歴史に名を刻みました。
「でも自分では何かを成し得た感覚ではないです。準決勝のパフォーマンスは良かったかもしれないけど、大会を通してノーゴールでしたから。もしも他のチームが決勝に行っていたら、僕ではなかったはずです。ただ、それでも獲れたのは、やっぱり色々持っているのかなって、そこはポジティブに考えたいですね。今後ニューヒーロー賞受賞者という肩書きが、ずっとついて回る。そういう意味では良いプレッシャーになるのかなと」
 
――やはり持っている。
「誰がどう見ても思いますよね」
 
――齋藤学選手との出会いも大きかったと思います。同じドリブラーとして学んだものは?
「ドリブルはもちろん巧いし、そのドリブルをフェイクにして、パスを出したりとか引き出しが多い。そういう攻撃センスが抜群ですよね。目標にしていました」
 
――その想いもあって、齋藤選手が着けていた11番を志願したのですか?
「いや、空いたからです(笑)」
 
――ただ花形の背番号で、プレッシャーもあったのでは?
「当然重要な番号だけど、だからこそ、『空いているのに、ここで僕が着けないわけにはいけないだろ』って思った。他の人に何を言われても別にいいかなって」
 
――意識は変わった?
「思っていたほど、変わりなくやれています」
 
――17年にU−20ワールドカップに出場しました。国際大会の舞台で得た経験は?
「ハングリー精神です。海外の選手って、これで食っていくために頑張ろうっていう気概がすごい。成り上がっていくことに飢えている選手たちばかりでした。自分たちにはそれが足りなかった。だからラウンド16までしかいけなかったのかなと。最後のベネズエラ戦ではチャンスはほとんど作れず、延長戦の終盤に点を取られて負けて……。“これがサッカーか”って改めて痛感しました」
 
――ただ、そうした厳しい戦いの中で、イタリア戦では堂安律選手のゴールをアシストするなど、結果を残せたのは前向きに捉えてもいいのでは?
「まあ、そうですね。イタリア戦はグループ突破が懸かった大事な試合で、その大一番でスタメンで使ってもらって結果を残せたのは大きかったです」
 
――次の国際大会は、20年の東京五輪。遠藤選手にとって、どんな位置づけの大会ですか?
「日本での開催だし、国を背負うという意味で大事な大会になる。そういうプレッシャーを経験した選手と、そうでない選手とでは、また見えてくるものも違うはずです」
 
 
――いつ頃から五輪を意識するように?
「U−20ワールドカップですね、そこでやっぱり国際舞台っていいなと」
 
――五輪に向けて新しく取り組んでいることは?
「これといってないです。出場するのが目標ではあるけど、意識し過ぎないようにしているので」
 
――では最後に五輪への意気込みを訊かせてください。
「決して簡単にいける大会ではないと思う。今F・マリノスで試合に出ていても、大会の時期にまでポジションを確保していなければ呼ばれない。本当これからずっと戦いは続きますが、出場するためにF・マリノスで頑張りたいです」

PROFILE
遠藤渓太/えんどう・けいた/1997年11月22日生まれ、神奈川県出身。175臓66繊F麕鸚SC―横浜Jrユース―横浜ユース―横浜。J1通算75試合・4得点。小学生時代は横浜のスクールに通い、中学からは横浜の下部組織でプレー。ユースでの最終学年では優勝したクラブユース選手権で大会MVPと得点王に輝く。10代から世代別代表に選ばれ、2017年のU−20ワールドカップ出場を果たす。クラブではプロ1年目から出場機会を得て、昨季にはルヴァンカップのニューヒーロー賞を受賞。今季も左サイドを主戦場に、アグレッシブな仕掛けで好機を生み出し、自らも果敢にゴールを狙うアタッカーとして活躍する。

取材・文●広島由寛、多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)