Jリーグ第15節。今季、旋風を巻き起こしている大分トリニータが、ホームに名古屋グランパスを迎えた。ともに連敗中で、優勝争いに踏みとどまるには、両チームとも勝ち点3がほしい試合だった。

 大分はコパ・アメリカに出場する岩田智輝が不在。名古屋も相馬勇紀がトゥーロン国際大会に参加中だったが、エースのジョーがケガから復帰した。
 
 試合は予想どおり、名古屋が主導権を握る。前線から3人、4人と人数を揃えてプレッシャーをかけ、大分のミスを誘って何度もチャンスを作った。

 しかし、ビックチャンスを最初に作ったのは大分だった。前半22分、ペナルティエリア内でオナイウ阿道がボールを落とすと、そのボールを小塚和季が藤本憲明にパス。シュートはDFに当たり、こぼれたボールをフリーになった藤本が再びシュートするが、ふかしてしまった。その1分後にも、藤本が前線で相手からボールを奪うと、そのままペナルティエリア内左に侵入し、ファーサイドにクロスを上げる。しかし、オナイウのヘッドは右に外れた。

 その後は再び名古屋が主導権を握る時間帯が続くが、決定機を作れない。すると前半38分、それまで名古屋の前線からの守備に苦しんでいた大分が、右サイドでその守備をはがすことに成功。抜け出した松本怜のクロスを、逆サイドの三竿雄斗がシュート。名古屋GKランゲラックが弾いたボールをオナイウが押し込み、大分が先制して前半を終えた。


大分トリニータ戦で同点ゴールを決めた宮原和也(名古屋グランパス)

 後半に入ると、名古屋がギアを上げる。後半7分、長谷川アーリアジャスールに代えて前田直輝を投入すると、その1分後、左サイドで和泉竜司が仕掛け、ゴール前にグラウンダーの強いパスを送ると、ファーサイドに詰めていた宮原和也が合わせて同点に追いついた。

 その後は、名古屋がセカンドボール拾いまくり、ほとんどハーフコートでの試合になる。復帰したジョーが起点となり、何度も決定機を作ったが、大分のGK高木駿のファインセーブやDF陣の体を張った守備により、ゴールを決め切れなかった。一方の大分は終盤になってようやく名古屋ゴールに迫るが、頼みの藤本はほとんど孤立したままで決定機を作れなかった。

 試合はそのまま1−1で終了。ともに連敗はストップしたが、上位進出を狙うには痛い引き分けと言っていいだろう。

 大分は、徐々に各チームから分析され始めており、自分たちのサッカーができなくなってきた。ここ3試合の相手は、川崎フロンターレ、FC東京、そしてこの日の名古屋と上位陣との対決が続き、力の差を見せつけられている。

 一方の名古屋には、復活の兆しが見えた。松本山雅、ベガルタ仙台と格下相手に連敗した原因は、戦列を離脱したジョーの不在が大きかった。ボールは回るが崩せない。だからシュート数も少なく、決定機を作ることができなかった。

 だが復帰した大分戦は、ジョーへの縦パスが増えた。それを胸で落として味方を活かしたり、ヘディングで競って果敢にシュートを狙ったり、ジョーが入っただけで名古屋の攻撃に幅ができる。確実に決定機も増え、シュートは16本に及んだ。

 名古屋はこれでリーグ戦4試合勝ちなしとなったが、悲観することはない。ジョーの復帰で、強い名古屋が戻ってきたといっても過言ではない。