telling,世代のライター、クリエイターたちが日々の思いや本音を綴る「telling, Diary」。telling,ではこれまでも「セクハラ的な何か」についてたびたび議論してきました。今回は、セクハラ「する側」になっていたという会社員Nさん(34)のお話。「枕営業受けていた、かも」と吐露するNさんが赤裸々に綴ってくれました。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

お酒の勢いで一夜を共にしてしまった彼

積極的に外に出会いを求めていかない限り、仕事以外に出会いはない。
それは私に限ったことではなく、まわりの働く女性たちを見ると、多くが仕事をきっかけに出会った人と恋をし、結婚をしている。
そこに問題はなかった、はず、だったのだけど。

昨夏。取引先の男性に恋をした。まあ、恋というほどではないけど、メールのやりとりの感じがいいな、と思い、実際に会ってさらに好きになってしまったという感じだ。

それから、何度か一緒に仕事をし、二人で飲みに行くことになった。

その夜、お酒の勢いもあり、いたしてしまった。住んでいる場所が離れていることもあり「付き合おうか」とはならなかった。大人の恋愛なんて、そんなもんだ。また「仕事の人」という関係に戻った。

仕事で彼を特別扱いは、枕営業されたってこと?

それからも、何度か一緒に仕事をした。彼は、業界ではまあまあな有名人だったので、私がお願いした仕事を積極的に受けてくれることもうれしかった。この春、彼は大きなプロジェクトをしかけることになり、その提携先に私の会社を選んでくれた。
ことの顚末を知っている女友達に「私が枕営業したみたいだね」と笑いながら話すと、真顔で返された。

「逆じゃない?アンタが枕営業されたんだよ」。

私自体には何の力も価値もない。ただ、私が背負っている看板は実は大きなものだった。つまり、会社名だ。この会社が仕事を発注している、ということで、彼自身のブランディングに役立っていたということは間違いないような気もする。

女友達は続ける。

「例えば、男女を逆転させて、あなたが男で『仕事お願いするのに誰かちょうどいい子いないかな?』と聞かれた時に、『あ、(最近寝た)あの子いるな』っていうのと一緒じゃない?アンタやった後、特別扱いしてたんじゃないの?そういう仕事の振り方をするのってどう思うわけ?」

確かに、セックスしたことが仕事に影響していない、と言ったら噓になる。そして、そこに上下関係があるのだとしたら、私(の所属する会社)の方が立場が上なのかもしれない。

女34歳、無意識にハラスメントをする側に

いやいやそんなつもりはない。「お互いに好意があったんだからいいでしょ」と言おうとして思わず口を押さえた。これはセクハラおじさんが言う言い訳そのままではないか。

彼が「こいつと寝れば仕事もらえるかも」と思っていたかどうかはわからない。彼に聞いたところで、否定するだろう。強要はさせていないにしろ「寝た方がお得かな」と思わせた時点で、お枕なのは間違いない、気もする。

なんて恐ろしいことだろう。
女34歳。知らない間に、ハラスメントする側になっていた。
しかも気づくのに、8カ月もかかった。友達に言わせりゃ「妊娠してたら後戻りできないくらい時間経ってるから」案件である。

純粋な好意がハラスメントになることも

これまでに、セクハラで通報された男性上司の噂話を何人も聞いてきた。

その時に、私はこう言った。

「おっさんたちにすれば純愛のつもりかもしれないけど、女の方が立場が下なんだから断れるわけない。偉くなったなら、それくらい知っとけ」
まさにブーメラン。普通に恋愛をしたり、好意を持ったりしているつもりが、ハラスメントに近づいていく。そう考えると怖くて寂しい。

年を重ね、キャリアを積み、できることが増えるということは、それだけ人を思うままに動かす力も増すということ。もう「イノセントな好意」は、時としてハラスメントにもなりうる。

じゃあ、どうやって恋をすればいいのだろう。仕事以外のことがどんどん苦手になっていく。

仕事だけでも、恋愛だけでもない、彼との関係は今も続いている。