スコットランド戦のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた岩渕。グループリーグ突破を大きく引き寄せる勝利に貢献した。(C) Getty Images

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[女子W杯グループリーグ第2戦]日本2-1スコットランド/6月14日/パルク・デ・ロアゾン
 
 大会直前に負ったケガから、コンディションへの不安が囁かれていた。チーム練習に合流したのは「今週(開幕週)に入ってから」と本人談。それでも、苦しい状況でチームを助けるあたりが、やっぱり岩渕真奈だ。

 
 23分、左サイドで仕掛けた遠藤純からの股抜きパスを受け、右足を振り抜く。コースを消そうとしたスコットランドDFをブラインドに使ったシュートは、今大会のなでしこジャパン初ゴール。
 
 大会の目標を尋ねられて「チームとしての結果がいちばん大切ですが、その結果に対してしっかりと貢献したと胸を張って言えるようなプレーをしたい」(岩渕)と語っていたが、大会2戦目でさっそく実行した。
 
 スキーの滑降のようにスピードに乗ったドリブルで、ゴールを陥れる。そんな、得点にこだわるストライカーはなでしこジャパンの先輩からも、その将来を楽しみにされた。2010年の東アジア女子サッカー大会で代表デビュー。「こんなに騒がれながら、デビューするなんて、ちょっと彼女がかわいそうですよ」と澤穂希、宮間あやらに気遣われた。
 
「騒がれ過ぎては、本人のために良くない」と先輩たちが、報道陣に取材の自粛を求めたこともあるし、チームの指揮官が「自分にとって何が一番、大事なことなのか」と問い詰めたこともある。そんな周囲の配慮も効あり、小さなFWは、年月を重ねながら、スケールの大きなプレーヤーへと育っていった。
 
 それと同時に、代表でもクラブでも、チームの勝利に必要なものを、最優先するようになった。この日の序盤は、ゴールから遠ざかっても、中盤まで下がり、あるいはサイドに流れて、攻撃のビルドアップを助けた。タイミングよく顔を出す岩渕にボールが集まり、アルゼンチン戦では、入らなかった有効なくさびのボールが入る。受けた岩渕が散らすボールが、また、何人かを経由して彼女のもとへ戻っていく。
 
「どのチームで誰とやっているかというのがすごく重要。私が若い時にはたくさんボールを出してくれる選手がいて、その中でやっていました。今は『全員がイケイケとなってしまうよりも、自分のところでタメを作って……』と、なんとなくは思っています」
 
「やっぱり難しいですよね。前で(点を取る)仕事をやっていればいいのとはまた違うので。ただ『チームが勝つために何が必要なのかな』って考えた時に、自分のところでボールを落ち着かせてというのもある」
 
 まるで、スコットランド戦後のコメントに聞こえるが、これは普段の試合の中で、彼女が残してきた言葉。キックオフからゲーム全体のデザインに加わり、勝利を呼び込む重要なゴールも挙げる。その両立を目指している。
 
 今季、代表では初めて82分という長時間プレー。長谷川唯との交代でピッチを退いたが、この試合の大会公式プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。文句なしのミニトロフィー獲得。2トップでコンビを組んだ菅澤優衣香も、岩渕と呼応。自らの動き出しで得たPKを右隅に流し込んだ。前回大会でも得点したふたりが、2大会連続でゴールを決めたことになる。
 
 積極的な仕掛けで躍動し、岩渕にアシストした遠藤。そして、途中出場で前線に運動量を注入した小林里歌子。この日はベンチで試合を見守った横山久美、宝田沙織ら、その他のFWもいい刺激を受けただろう。その競争がなでしこジャパンを再び高みへと導く、原動力となる。
 
「とにかく、勝つことに集中していたので、ホッとしています。本当に全員の気持ちが乗って、いいシュートが飛んで行って良かったと思います。今日はチームのためにと思ってやっていて、まだまだ物足りない部分もたくさんあるんですけれども、勝って本当に良かったと思います」(岩渕)
 
 活躍したといっても、彼女のポテンシャルから測れば、まだまだ片鱗を見せたに過ぎない。ここからなでしこジャパンが大会終盤まで勝ち残れば、さらにコンディションも上がってくるはずだ。相手の守備を無効化するドリブルも、繰り出されるようになるだろう。
 
 なでしこジャパンも、岩渕も、ここがピークではなく、まだスタートを切ったに過ぎない。
 
取材・文●西森 彰(フリーライター)