弥谷麻衣子さんの遺体が見つかった恵美被告の自宅=昨年7月、茨城県取手市(橘川玲奈撮影)

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 千葉県柏市で昨年3月、夫が不仲だった妻を殺害し、遺体を母親とともに実家敷地内に埋めたとされる事件。

 千葉地裁は殺人罪などに問われた夫で元銀行員の弥谷鷹仁(たかひと)被告(37)に懲役15年(求刑懲役17年)、殺人幇助(ほうじょ)罪などに問われた母親の恵美被告(64)に懲役6年の求刑を上回る懲役7年の判決を言い渡した。殺人幇助罪について無罪主張をしていた恵美被告は、主文言い渡しの瞬間も大きな動揺はみせなかった。(千葉総局 橘川玲奈)

 被害者家族を向き

 今月12日の判決公判で、鷹仁被告は黒のスーツ姿、恵美被告は白いシャツに黒のズボン姿で出廷。恵美被告の顔には疲れが浮かび、目の下のくまは傍聴席からも分かるほどだった。

 両被告は判決理由読み上げの際、弁護人の横に着席。正面の検察官席には、被害者参加制度を利用して参加した被害者、麻衣子さん=当時(30)=の家族が座っていた。

 両被告とも判決理由読み上げ中、正面を向いていたが、表情からその胸中を推し量ることはできなかった。

 殺人幇助罪

 公判を通じて鷹仁被告は起訴内容を全面的に認める一方、恵美被告は殺人幇助罪について否認していた。

 恵美被告が問われた殺人幇助罪は、「殺人の実行行為には加担していないが、意思を持って手助けをした」というもの。争点は、鷹仁被告の麻衣子さんへの殺意を認識していたかと、意思を持って殺害を手助けしたか−などになった。

 検察側は、この点の立証のために法廷で鷹仁被告とのLINEでのやり取りなどを明らかにした。

 例えば犯行20日前の昨年2月12日のLINE。

 鷹仁被告〈計画通りによろしく〉

 恵美被告〈1人でやらないでね。危ないから〉

 鷹仁被告〈じゃあ棺桶(かんおけ)よろしく〉

 また、犯行約1カ月後のやり取りはこうだった。

 恵美被告〈お先短いオカンの人生、それなりに人生賭けたんよ。たかちゃんと(孫)を守るために〉

 鷹仁被告〈地獄から助けてくれてありがとう。1人じゃ決断できなかったよ〉

 このほか鷹仁被告は被告人質問で、麻衣子さん殺害を恵美被告に打ち明けていたことや、遺体を埋めるためのシャベルを恵美被告が購入していたこと、「頸(けい)動脈を押さえると苦しまない」などと具体的な殺害方法を助言されていたことなどを供述した。

 「殺意知っていた」

 恵美被告はこうした事実関係については争わなかったものの、被告人質問で「調子を合わせて息子をなだめようとした」「鷹仁の性格から殺害する訳がないと信じていた」などと供述。鷹仁被告の殺意が認識できなかったのだから、殺人幇助には当たらないとしていた。

 しかし判決は、「鷹仁被告が実際に殺害に及ぶことを認識し、それを前提に行動していた」と恵美被告の主張を排斥。その上で、「親として鷹仁被告を正す立場にあったが、積極的に手助けをした」などと厳しく指弾した。

 岡部豪裁判長は判決後、「裁判官と裁判員から伝えたいメッセージ」を朗読し、恵美被告をこう説諭した。

 「子供の犯行を止める機会と能力を持つただ一人だったのに、逆に背中を押してしまった。あなたはLINEで『人生を賭けた』と言ったが、これからはその結果に人生を賭けてほしい。命の大切さを考えられる人になってください」

 ■柏の妻殺害事件 判決によると、鷹仁被告は昨年3月4日午後2時半ごろ、柏市内の自宅で睡眠導入剤入りのカレーを麻衣子さんに食べさせ、午後4時半〜5時ごろに乗用車内で首を手と延長コードで絞めて殺害。恵美被告は殺害を幇助した。また、茨城県取手市の実家に車で移動した上で、両被告は共謀して同日午後7時50分ごろに遺体を事前に掘っておいた穴に埋めた。