堅実女子のお悩みに弁護士・柳原桑子先生が堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の相談者は長江愛奈さん(仮名・38歳・アルバイト)です。

「母は典型的な昭和の専業主婦で、幼いころから私を支配していました。礼儀正しく、大人の言うことを聞く”いい子”であることを求め、母の考え方を先読みし、その通りに動かないと叩かれたり食事を抜かれたりしていました。

今でも覚えているのは、幼稚園の年長のときに行った親戚の家でのことです。母は『虫歯になるし、白砂糖はバカになる』と言って、一切甘いものを食べさせてくれず、家で使っていた料理用の黒砂糖も隠されていました。甘いものに飢えていた私は、親戚の家で出されたカステラに、我慢できずかぶりついてしまったのです。

その時に、その場で母に家から引きずり出され、道端で母に手をのどに突っ込まれて吐かせられました。歯磨きさせられて、叩かれました。

その後も似たようなことがあって、ピアノ、バレエ、剣道などまったく興味がない習い事を強要され、結果を出さないと叩かれるだけでなく、『なんで一番になれないの?』と泣かれました。

私は一人娘で、父は仕事が忙しくほとんど家にいなかったので、母の愛情が集中ししていたと思います。中学受験もさせられて、名門中学校に合格できなかったことで、母は『死んでやる』と自殺未遂をしてみたり、うつ病になったり……数え上げたらきりがないのですが、ホントにいろんなことがありました。

私が大学に落ちたときに、母は憑き物が落ちたようにボランティア活動に凝りだして、私のことは放り出すようになりました。それから私はうつ、パニック障害、摂食障害、恋愛依存などに悩んでいます。

今も実家に住んでいるのですが、人ともうまく付き合うことができず、恋愛も仕事もできません。今はなんとか、人と話さなくて済む職場でアルバイトしていますが、ホントに毎日がつらい。

夜、眠る前になるとこんな人生になってしまったのは、母のせいだ!と怒りのあまり眠れず、バイトの遅刻も増えています。

母は私から幸せな人生を奪いました。無関心だった父親も同罪です。人生に全く希望がありません。損害賠償を請求することはできるのでしょうか。アラフォーの引きこもりが問題になっていますが、私もそうなりそうです。両親に復讐してやりたいです」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

今、一般的に親子関係における人格形成問題について、世間の注目が集まっているようです。さて、あなたの場合はいかがでしょうか。

法律的には、親があなたに虐待した行為、そしてあなたが被った損害、それらの因果関係を立証できれば損害賠償請求が可能です。

因果関係の立証とは、例えば何らかのメンタル面での疾患が、親からされた虐待行為に起因するという診断書を医師から得るなどです。

質問文内で“私の人生に希望がない”と書いていますが、なぜ希望が持てないか、冷静に書き出してみてはいかがでしょうか。そこに親がどこまで関わっているか、分析してみるのもいいかもしれません。

その上で弁護士に相談したり、医師の診察を受けるなどのアクションをしてみると、問題の糸がほぐれやすくなると思います。

最後に補足ですが、実の親に対する損害賠償請求行為は、心身的に大きな負担があることが予想されます。今以上に疲弊消耗しないか、という現実問題があります。

親子というのは‟他人になれない”。それゆえに、訴訟に踏み切るかどうか、よく考えてみてはいかがでしょうか。

母親は今でも娘のために毎日弁当を作っている。その「かゆいところに手が届くような」干渉もうるさいと語る。



■賢人のまとめ
親とは他人にはなれないと感じます。法律、医療、それぞれの専門家に相談するところから始めることをお勧めします。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/