「フランス映画祭 2019 横浜」フェスティバル・ミューズを務める中谷美紀 (C) Hiroki Sugiura

写真拡大

 フランスの最新映画を日本に紹介する「フランス映画祭 2019 横浜」が、6月20日から横浜で開催される。今年のフェスティバル・ミューズを務めるのは、フランス映画に造詣が深い女優の中谷美紀。映画愛が高じてパリに住み、足繁く劇場に通った経験もあるという中谷のフランス映画への愛、そして本映画祭への期待を聞いた。

 5月に行われたラインナップ会見では、仏語でスピーチ。そして、「リュミエール兄弟が映画という素晴らしい芸術をこの世にもたらして以来、フランス映画は人々の心に寄り添い、誰かが言えなかった言葉を代弁し、ときには社会に対して問題提起をする存在であり続けました」とフェスティバル・ミューズとしてフランス映画の魅力を広くアピールした。

 ジャン=リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」、フランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」などヌーベルバーグ作品をきっかけに仏映画に魅了され、都内のミニシアターを1日に4館はしごすることもあったそう。「フランス映画独特の眠さ(笑)をこらえることも好きでした。ジャック・リベット監督の『美しき諍い女』(237分)は1度目は寝てしまい、2度見に行ったこともありましたね」と振り返る。

 数多くの傑作に触れる中で、その存在感に圧倒された女優としてジャンヌ・モローの名を挙げる。「女優さんって、ただきれいなだけではないということを教えていただいた。ジャンヌ・モローさんは、フランス映画界で厚化粧を初めてやめた女優さんだと聞いています。すっぴんに近い状態で、目の下のくまなんかも見せながら演じたスター女優。その当時は私は女優になろうなんて思ってもいませんでしたが、衝撃を受けました」「あとは、アヌーク・エーメさんも美しく、カトリーヌ・ドヌーブさんのお姉さんで、トリュフォーの『柔らかい肌』やロマン・ポランスキー監督の『水の中のナイフ』にも出てらっしゃったフランソワーズ・ドルレアックさんにも惹かれます」

 「汚れた血」「ボーイ・ミーツ・ガール(1983)」「ポンヌフの恋人」など青春時代に夢中になったというレオス・カラックス監督とは、東京を舞台にしたオムニバス「TOKYO!」でのオーディションで忘れがたいやり取りがあったそう。「実は、面接でカラックス監督に『素晴らしい映画を撮り続けて、私をとりこにさせたあなたのことが嫌いです』と冗談交じりに言ったんです。役とのイメージが違うとのことで、そのオーディションは通らなかったのですが、通知に最後に手書きで、“あなたに嫌われるであろう者より”とサインがあって」とカラックス監督の粋なエピソードを明かしてくれた。

 フランスでの生活も経験し、同国の文化芸術に関しての成熟した環境を身をもって感じたそう。「持てる者も、持たざる者も、老いも若きも、等しく芸術に関心を持ち、国が芸術を支えるという基盤がある。ブロックバスター的な映画に人気が集まることはもちろんですが、一方で大きな興行収入が見込めないアートムービーも人々に浸透して支えられています。また、週末でなくても、夕方になると映画館に行列ができているというのは、フランスならではだと思いましたし、そういった環境の中で観客も製作者も育まれてきている。成熟した芸術文化があるということがうらやましいですね」

 今年の映画祭の団長を務める「男と女」のクロード・ルルーシュ監督との対面を心待ちにしている。「お歳を重ねられても、情熱を失わない秘けつを伺いたいです。好奇心が旺盛でいらっしゃるからこそなのでしょうが。若い方々の作品をよくご覧になっていて、純粋に映画への愛情がおありなのでしょう。シンプルに男女の機微を音楽と共に強烈に描かれている『男と女』のその後を描かれた新作も楽しみです。役者も監督も年齢を重ねて、本当に映画のようですね」

 そのほか、映画祭で上映される作品については「オープニング作品『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』は拝見しました。フランス映画は多様性があるので、ひとつの映画だけに人気が集中することは多くないと思うのですが、この作品は400万人動員の大ヒット作品だそうですね。笑いながらジーンと泣ける感じで、弱者に温かい眼差しを向ける素敵な作品でした。今年のラインナップの中では特に、女性の視点で描かれた作品を是非拝見したいです。また、『アマンダと僕』がとてもいい作品だと伺ったので、楽しみです」とバラエティ豊かな今年の作品への期待を語った。

 「フランス映画祭 2019 横浜」(http://unifrance.jp/festival/2019/)は、横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらいほかで、6月20日から23日まで開催。チケットは発売中。