現代日本を代表する“知の巨人”佐藤優氏が毎日やっている知的生産術とは?(写真:榊智朗)

作家・佐藤優氏によると、学んだことを自分のものにするためには、「インプット」と「アウトプット」を“合わせて行う”ことが重要といいます。

佐藤氏は、月に500冊の本を読み、1200ページもの膨大な原稿を執筆、月あたり平均2冊の書籍を刊行、抱える連載の〆切は約90にものぼります。いかにして日々、膨大かつ質の高いアウトプットを生み出すことができるのか?

『調べる技術 書く技術  誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意』の著書もある佐藤氏流の「知的アウトプット術」をご紹介します。

ネット社会とリアル社会が結びついた今の時代は、必要な情報を「調べ」、調べた情報をもとに「書く」などといった知的生産術は、もはや特別なスキルではない。

インプット――情報を「調べる」ことは、スマートフォンやPCなどを使って、日々誰でも行っている。しかし、ただ単に情報を読んだだけでは、学びは自分のものにはならない。

すきま時間にSNSを見たり、スマホでたまたまニュースフィードに流れてきた情報を眺めたりしていても、何も身につかない。得た情報は、「アウトプット」も合わせて行ってこそ、自分の知識になり、教養になるのである。

私が日誌を毎日欠かさずつける理由

日々のアウトプットの習慣として、私は日誌を毎日欠かさずつけている。こうしておけば、「今日、何をすべきか」すぐに思い出すことができ、「次、何をすべきか」という次の行動に移しやすくなるというメリットがある。

例えば、今やっている仕事に役立てるために、過去に聞いた情報をもっと深く知りたいが、誰から聞いたか忘れてしまったとする。そこで日誌を繰ってみると「そうだ、この人に聞いたんだった」という具合に情報源にたどり着ける。さっそくアポを入れて、望む情報を得ることもできるのだ。

日誌をはじめとして、わたしはすべての情報を「手書きノート」にまとめている。使うノートは「1冊」に絞る。たとえ自分の不得意な分野のことでも、「書く」という行為を介することで、格段に効率よく知識を自分のものにできるのだ。

そのための方法としては、私にとってはノートに手書きで記すというのが、最もシンプルで実践しやすく、確実だ。

知識は、身についてこそ、初めて価値あるものになる。「知識を身につける」とは、知識を記憶にしっかり定着させ、必要なときに正しく引き出せるということ。ノート1冊にまとめておけば、必要な情報を、必要なときにすぐに引き出すことができる。

アウトプットのためのツールとしては、ノートのほかに、「手帳」も有用だ。私は、予定管理には「2年手帳」を毎年愛用している。

1年手帳にも翌年3月くらいまでは入っているが、1年も後半に入ってくると、翌年の後半に予定が入ってくることがある。

そこで、例えば2019年には「2019年・2020年」の2年手帳を使い、2020年には「2020年・2021年」の2年手帳を使う。すると、つねに翌年後半にも予定を書き込むことができる。「2年手帳」は、最強の予定管理ツールと言えるだろう。

アウトプットでは「やり直し」厳禁

仕事において、予定管理を怠らないことはもちろん大切だが、「着手するタイミング」も重要である。

書いた文章や企画書などといったアウトプットを、なるべくそのままの形で提出できれば、1回のアウトプットにかける手間は1度ですむ。

ただし、時間の経過とともに状況が移り変わるものを扱っている場合は、早く着手しすぎると、後々「やり直し」が生じやすい。

時事問題などはその代表格だ。締め切りに余裕をもって早く仕上げすぎてしまうと、締め切り直前になってから、世の中の状況の変化に応じて修正する必要が生じてしまう。

そのため私は、時事問題に関する執筆の大半は締め切り当日にとりかかり、一気に仕上げることにしている。2000字以内のコラムであれば、2時間以内で十分に仕上げられるとわかっているから、締め切りの前日か当日に着手する。

一般的に仕事は、なるべく前倒しで着手したほうがいいと思われがちだが、実はそうとも言い切れないのである。私のような専業作家に限らず、これは、どんな仕事にも通じることだ。

仕事では、「明日できることを、今日済ませる」という心がけは大切だ。しかし、仕事内容によっては、今日やったことが明日にはほぼ無駄になってしまうこともある。

前倒しはよいこともあるが、それだけが能ではない。「明日できることは、今日やらない」という発想もあわせもっておけば、仕事の緊急度も含めて「今やるべきこと」を判断できるようになる。

考える力を鍛えるために、私がすすめたいのは、あるテーマについてネットなどの情報を参照せずに、文章を書いてみることだ。

本やネットなど、外部の情報をいっさい参照せず、純粋に自分の頭の中に定着している材料だけで考えをまとめてみる。すると、知識が抜けているところや、自分の考えが甘いところが浮かび上がってくる。

その時、できれば、書いた内容に関する知見の豊かな人に読んでもらい、コメントを得ることだ。仕事に関するものであれば、元上司など、直接の上下関係がない人にお願いするといいだろう。

あるテーマについての文章を、あえて参照不可で書いてみることは、いってみれば、自分で自分に課す筆記試験だ。これを繰り返すことで、学ぶ力は各段に底上げされていく。学生時代だけでなく、大人の学び直しにおいても筆記試験は有効なのである。

大人の学び直しに効くアプリはこれだ

大人の独学において、有用なのは、なにも書物や新聞だけではない。WEBサイト、アプリの中にもよいものがある。おすすめは「iTunes U」と「スタディサプリ」だ。

「iTunes U」では、日本の初等教育から大学、海外の大学などの授業を無料で視聴できる。ハーバードやスタンフォード、イエール、ケンブリッジといった欧米の一流大学の講義を視聴することも可能だ。一部、有名な講義には日本語字幕を表示させることもできる。

Apple製品には、デフォルトで「iTunes U」のアプリが入っている。Appleユーザーの読者は、試しに講義一覧を見てみてほしい。バリエーション豊かで驚くはずだ。


一方、「スタディサプリ」は有料アプリではあるが、非常にコストパフォーマンスに優れた学習コンテンツとなっており、とくにすすめたい。

「スタディサプリ」では、小学校4年生から高校3年生までの学習範囲が網羅されている。小学校4年生といって侮ってはいけない。

一般的に、親が予習なしで子どもの勉強に関する質問に答えられるのは、せいぜい小学校2年生くらいまでだろう。教科書を読んでみると、小学校4年生のものですら意外と難しいのだが、それが非常にわかりやすく動画にまとめられている。

つまり、「スタディサプリ」が役立つのは現役の小中高生に対してだけではない。社会人になってからの学び直しにも、有効なのだ。