【寄稿】すしと反日

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 漢学者の故・洪賛裕(ホン・チャンユ)先生と食事で同席した時の話だ。洪先生は徹底した民族主義者で、その教え子たちが日本式の言葉を使ったり、植民地近代化論に同意するような話をすると、そのたびに厳しく指摘した。反日あるいは克日を生活化したと言っても過言ではなかったが、皮肉にも洪先生は非常にすしが好きだった。反日とすし好きは一見矛盾しているが、先生にその矛盾について直接聞くことはなかなかできなかった。ある日、洪先生が教え子たちと楽しく話をしていたので、そのことを直接問いただすことにした。「日本を嫌いながらすしが好きというのは理解できません」と尋ねると、洪先生は「朱子は曹操体を使った」と短く答えてくださった。

 儒教的な大義名分の化身とも言える朱子が奸臣(かんしん)の中の奸臣、悪党の中の悪党である曹操の字体を使ったというのは驚くべき話だった。曹操は時に三国志最高の英雄とも言われるが、一方で非常にずる賢く浅ましい人間でもあったため、朱子との共通点など全くないと考えていたからだ。洪先生にその言葉の意味を改めて尋ねたところ「食べ物がおいしければおいしく食べるように、字体が良ければ自然にその影響を受けるようになる」と説明してくれた。その意味はしばらく理解できなかったが、今は少し理解できそうだ。芸術作品を評価する際には政治や道徳といった作品以外の外的な要素ではなく、おそらく作品そのものの品格と芸術的境地をまずは見よという意味なのだろう。日本の軍国主義政策には反対するが、受け入れるべき点は受け入れるという実用主義的な観点がそこには感じられた。

 頭の回転が速く実利に目ざとい中国人や、思弁性よりも具体性を重視する日本人に比べると、韓国人は大義名分を前面に出し、まずは物事の定義に執着する傾向が強い。つまり内容よりも最初に定義を下し、その定義の範囲の中で考える傾向があるという意味だ。そのため「アカ野郎」「入れ歯じじい」「土着倭寇」など相手を侮辱する言葉がよく使われるのだろう。天下の朱子も曹操体を使った。一見相いれないことでもどこかに共通点を見いだそうとする柔軟性は、政治家だけに必要な素養ではないようだ。

キム・サンヨプさん(国外所在文化財財団)