提供:週刊実話

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 「川崎で起きた事件と同じにならないように考えた」

 東京・練馬区の自宅で長男(44)を殺害した元農林水産事務次官の熊澤英昭容疑者(76)は、取り調べに対して、こう供述している。

 熊澤容疑者は、6月1日午後3時半頃、無職の長男の胸などを包丁で複数回刺したとして、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。長男は搬送先の病院で死亡。当時、妻は不在だった。

 「長男は引きこもりがちで、中学生の頃から家庭内で暴力を振るうこともあったそうです。近隣住民ですら息子の存在を把握しておらず、長期にわたる家族内での苦悩があったものとみられています」(全国紙記者)

 当日は隣接する区立小学校で運動会が開かれていた。事件直前、長男が「小学校の運動会の音がうるさい」と言い出し、熊澤容疑者と口論になっていた。

 「長年、鬱積した長男の怒りの矛先が、児童に及ぶことを恐れたのでしょう」(同)

 熊澤容疑者が殺害を決意するきっかけになった「川崎スクールバス襲撃事件」も、犯行後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)の“動機”の一端が解明されつつある。

 岩崎容疑者は、幼少期に両親が離婚。叔父夫婦が住む家に引き取られた。

 「もともと、この家で同居していた祖母が、隆一の両親の結婚に反対していて、無理やり離婚させた。それで、隆一だけもらわれてきたんです」(近隣住民)

 以来、40数年にわたってこの家に住み着いていた岩崎容疑者も、定職に就かず、引きこもり状態だった。

 「叔父夫婦には、隆一のいとこにあたる息子と娘がいて、被害に遭った地元の名門・私立カリタス学園に通っていました。一方、隆一は公立の小・中を出て、職業訓練校に入れられた。これ以外にも、祖母が隆一だけ、いとこたちと“差別”するようなことがあり、恨みを募らせていたんじゃないでしょうか」(前出・全国紙記者)

 その祖母が亡くなり、いとこたちも社会人として独立。岩崎容疑者は、叔父夫婦と3人暮らしになった。事件直前、高齢になった叔父夫婦が介護ヘルパーの導入を検討し、岩崎容疑者に相談したところ、家から追い出されると勘違い。結果、いとこの母校の女子児童1人と、優秀な外交官を道連れに、自らも命を絶った。

 2つの事件の家庭内の事情を知ると切なくなるが、それでも殺人者が「許されざる者」であることに変わりはない。