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●GeForce RTX 2080搭載、144Hz G-Syncに対応

ASUSのゲーミングノートPC「ROG ZEPHYRUS S GX701GXR」が、ついに日本でも6月21日から販売開始となる。今回はその評価機をテストできるチャンスに恵まれた。どの程度のパフォーマンスをみせてくれるのか、様々な角度から検証してみたい。

○強くて薄い、至高のゲーミングノートPC

ゲーミングPCを買うなら設置場所を自由に選べるノート型がいいが、ノート型はスペックで妥協せざるを得ない点がいろいろ出てくる。CPUやGPUは高スペックでも分厚く重いもの(インテルが言うところのマッスルブック)だったり、液晶の質が今ひとつだったり……。誰もが納得できる至高のゲーミングノートPCはなかなか見つからないものだ。

だが、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRは、17.3インチの144Hz G-Sync液晶に6コア12スレッドのCore i7-9750H、さらにGeForce RTX 2080というゲーマー垂涎のハード構成を採用していながら、ボディの厚さはわずか18.7mmと薄いのが最大の武器だ。

人気メーカーASUSのゲーマー向けブランド「ROG(Republic of Gamers:アール・オー・ジー)」を冠した製品だけに、第1ターゲットは重量級ゲームを高画質&高フレームレートで遊びたい人たち。そして、写真や動画編集等のクリエイターが第2のターゲットといっていいだろう。

ROG ZEPHYRUS S GX701GXRは、今年1月に開催された「CES 2019」の直前に存在が明らかにされ、米国ではすでに販売されている製品だが、6月14日に日本での発売計画が発表された(発売日は6月21日)。国内の予想価格は約45万円弱(税別)というハイエンドモデルだが、17.3インチの液晶画面にGeForce RTX 2080 Max-Q、かつ144HzのG-Sync対応……と絞り込むと意外なことにライバルはほぼ淘汰されてしまう。快適なゲーミング&クリエイティブ環境が欲しい人には魅力的な製品であることは間違いない。

○ROG ZEPHYRUS S GX701GXRのスペック

CPU: Intel Core i7-9750H(6コア12スレッド、2.6GHz/最大4.5GHz)

チップセット: Mobile Intel HM370

メモリ: 32GB DDR4-2666

グラフィックス: NVIDIA GeForce RTX 2080 Max-Q 8GB

ディスプレイ: 17.3型、1,920×1,080ドット、144Hz駆動、応答速度3ms

ストレージ: 1TB SSD(M.2 NVMe PCIe 3.0)

通信機能: IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.1

インタフェース: HDMI 2.0b×1、USB3.1 Type-C/Gen2×1、USB3.1 Type-C/Gen1×1、USB3.1 Type-A/Gen2×1、USB3.0×2、3.5mmオーディオ

バッテリ駆動時間: 約5.8時間(JEITA Ver2.0)

サイズ: W399×D272×H18.7mm

質量: 約2.65kg

OS: Windows 10 Home 64ビット

●ROG ZEPHYRUS S GX701GXRの外観チェック

まずはROG ZEPHYRUS S GX701GXRの外観からチェックしていこう。17インチオーバーのゲーミングノートPCというと、持ち運びを完全否定したようなデザインの製品が多いと思う。ブ厚いボディと双発巨大ACアダプターを組み合わせたイメージだ。

だがその点、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRは本体厚が18.7mmと薄い。約2.65kgと決して軽くはないものの、スペックやパワーを考えれば十分に薄型軽量で、GeForce RTX 2080搭載ノートPCとしては「世界最薄」をうたっている。ACアダプターも230W出力1基であるため、やや大きめのカバンがあれば外出先へ持ち運ぶこともそう難しくはない。

デザイン的には15.6インチ液晶搭載モデル(GX501シリーズ)と同じく、キーボードを手前に寄せてパームレストをなくした独特のスタイルを採用している。液晶ヒンジ側に大きなスペースがあるが、この部分にGPUやCPUを配置することでユーザーに熱を感じにくくすることと、上部からの吸気を可能にしている。

○ボディリフト機構を備えた薄型ボディー

さらにROG ZEPHYRUS S GX701GXRは液晶展開時にボディーの奥側がリフトアップされ、ボディー底部に吸気スペースを確保する設計になっている。普通のゲーミングノートPCだと底面がスリットだらけで見苦しいデザインが往々にしてあるが、本機の底面はフラットで見た目にも美しい。液晶を閉じると自動的にリフトダウンするが、このときケーブル等が挟まる場合があるので、そこだけは注意して扱いたい。

インタフェースはUSB 3.1やUSB 3.0の他にHDMI 2.0bやサウンド入出力をボディ左右に実装している。ボディの後ろ半分がほぼ冷却スペースに当てられているので、インタフェースは手前側に集中配置した格好だ。ゲーミングノートPCでありながら有線LANを持たないのが気になるところだが、無線LANに最大1733MbpsのIEEE802.11ac HT160(160MHz幅の通信)に対応した「Intel Wireless-AC 9560」を搭載。同規格に対応した無線LANルーターがあれば、快適な通信環境を確保できる。どうしても有線LANが欲しいならUSBアダプターを使うのが得策だろう。

●発光するキーボードとROGシンボル

本体の手前側に寄せられたキーボードはキーごとにRGB LEDがバックライトとして仕込まれており、点灯パターンや発光色をカスタマイズ可能だ。キーピッチはカーソルキーなど一部キーを除けば一般的な19mmピッチなので扱いやすい。適度なタクタイル感があるのでゲーム中でも、“押した”フィーリングがしっかり伝わってくる。タッチパッドのすぐ上にあるボタンを押すことで、タッチパッド部分がテンキーに切り替わるというギミックも有用だ。

さらにキーボードの上部、ちょうどゲーム中に中指で操作しやすいあたりにロータリー式のボリュームが配置されているのが面白い。パームレストがないので最初は戸惑うが、接地面からWASDのあたりのキートップまでの高さが24mm弱なので普通の外付けキーボードを使うフィーリングほぼそのままで使える。

○発光ギミックは「Aura Sync」にも当然対応

キーボードのバックライトの発光制御はパッドの上にあるROGキーを押すと起動するツール「Armory Crate」に組み込まれた「Aura Sync」から設定できる。Aura Syncに対応したASUS製マウスやヘッドセットなどとの連動も可能なので、見た目にこだわりたい人はASUS製周辺機器を揃えるのも良いだろう。

●ゲーム以外の用途にも効く基幹スペック

ではROG ZEPHYRUS S GX701GXRの内部構成に目を向けてみよう。CPUは6コア12スレッドの「Core i7-9750H」。スペック上はブースト時最大4.5GHzとなっているが、薄型設計ゆえそれほどブーストは持続しない。ただ後述するパフォーマンス設定を変更することでブースト状態を短時間なら延ばすことは可能だ。動画のエンコード処理のように少々クロックが落ちてもコア数が多い方が有利な処理にはうってつけのCPUといえる。

またメモリは標準装備で32GBと文句なし。ストレージのM.2 NVMe SSDオンリーという構成が潔い。米国仕様のストレージ構成は512GB×2または1TB×1が選択可能だが、国内仕様は1TB一発の構成となった。GeForce RTX 2080に見合った重量級ゲームはそれなりに容量がかさむので、1TBがスタートラインなのは非常に頼もしい。2.5インチベイは一切ないようなので、容量が足りなければUSB3.1に高速な外付けドライブを接続するのが手軽だろう。

○ゲーマーにもクリエイターにも響く液晶

ROG ZEPHYRUS S GX701GXRの一番の売りは液晶のスペックだ。17.3インチでスリムベゼル、その上リフレッシュレートは144Hz、応答速度3msという超高スペックなパネルが使われている。パネル解像度はフルHDで、ここはもうワンランク上(WQHDなど)を求めたかったところ。だが、パネルの解像度とリフレッシュレートのどちらを優先させるべきか考えたとき、本機の立ち位置的にゲームプレイに有利なリフレッシュレートを選択した、という判断であれば賛同できる。

また、パネルは視野角の広いIPS方式であり、PANTONEカラー認証(PANTONE Validated)を取得した発色の良いパネルが採用されている。米国仕様ではHDR対応パネルとPANTONEカラー認証パネルの二通りが用意されているようだが、日本国内では後者に絞っての発売だ。ROG ZEPHYRUS S GX701GXRのパワーを写真や動画編集などのクリエイティブ用途にも使いたい人には、今回レビューしたPANTONEカラー認証取得済のパネルの方が好適だろう。

ゲーム利用において、リフレッシュレート144Hz液晶の威力は改めて言うまでもないが、特にeスポーツ要素の高いFPS/TPS系ゲームでは絶大な威力を発揮する。さらに「G-Sync」対応なのでティアリングやスタッタリングも抑制でき、フレームレート変動の激しいシーンでも画面表示の乱れやモタ付き感を解消してくれる。

●GeForce RTX 2080でゲームを楽しみつくす

144Hz液晶を持っていてもGPUパワーが貧弱なら無駄。しかし、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRは「GeForce RTX 2080」を搭載し、薄型ボディでも最大限のパワーを発揮できるMax-Q Design仕様で実装している。DXR(DirectX Raytracing)やDLSS(Deep Learning Super Sampling)にも対応するため、今後登場する「Watch Dogs」や「Call of Duty Modern Warfare」等の大作ゲームを最高の環境で楽しめることだろう。

本レビュー記事では各種ベンチマークテストを行い、その結果を掲載していくが、その前にROG独自ユーティリティの「Armory Crate」についての説明が必要だ。Armory Crateの設定によって、ROG ZEPHYRUS S GX701GXRのパフォーマンスや使い勝手を向上できるので、ベンチマーク結果を見る前に一読していただきたい。

○G-Syncを有効利用するには

ROG ZEPHYRUS S GX701GXRでG-Syncを利用するには、「GPUの切り替え」を行う必要がある点に注意だ。本機の工場出荷状態では、CPU(Core i7-9750H)に内蔵されている「HD Graphics 630」とGeForce RTX 2080が自動切り替え、いわゆる「Optimusテクノロジ」で運用される設定になっている。この設定ではリフレッシュレート144Hzは利用できるが、G-Syncは利用できない。

G-Syncを利用したい場合は前述のArmory Crateを起動し、GPUモードを「Discrete Graphics」に切り替える操作が必要だ(ここで再起動が入る)。つまり、CPU内蔵のHD Graphics 630を無効化し、GeForce RTX 2080だけを動作させる設定にすると、G-Syncが利用可能になる。このモード切り替え用のボタンはArmory Crateを全画面表示にしないと非常にわかりづらい場所に隠されており、この点はUI設計的に考え直していただきたいところだ。

Discrete GraphicsモードにするとOptimusを経由しないため若干GPUパフォーマンスは上がるが、同時に内蔵GPUが無効化されるので、普段使い時のバッテリーの持ちは悪くなるというデメリットもある。そのため外出時やゲーム以外の作業をする場合はOptimusに切り替える運用がオススメだ。またこのGPUモードの設定は、ROG ZEPHYRUS S GX701GXR全体のパフォーマンスモード(後述)とは独立している。パフォーマンスは静音寄りでも、GPUはGeForce RTX 2080のみとすることもできる。このあたりも少し整理して、スッキリさせてほしかったところだ。

○パフォーマンス優先か、快適性優先か

Armory Crateから設定できるROG ZEPHYRUS S GX701GXR全体のパフォーマンスモードについても触れておこう。本機のパフォーマンスモードは「サイレント」「バランス」「Turbo」の3種類が用意されており(さらに、Windowsに任せるモードとカスタムモードを加えれば5種類)、こちらは再起動なしで切り替えることができる。

ファンの静音性のほかCPUのPower Limit(正しくはPL1とPL2)を上下させることができる。具体的にはサイレントモードでは35W/45W、ノーマルモードは50W/60W、Tubroモードは70W/90Wとなり(PL1は状況に応じ上下する)、これが高いほどTurbo Boost時のクロックも発動時間も長くなる。CPUのパフォーマンスをより引き出すにはTurboモードを使うとよいが、GX701GXR本体の冷却力が限られているので、そう劇的に性能が伸びる訳ではない。この辺は後ほど検証しよう。

その他のROG独自ツールも紹介しておこう。ネットワーク通信の重要度に応じ無線LAN通信の帯域を制御する「GameFirst V」や、同社独自のサウンド用ミドルウェア「Sonic Studio III」、ゲームや動画鑑賞等のTPOに応じ画面の色温度やガンマ設定を最適にする「ROG GameVisual」等がプリインストールされている。

●ベンチマークテスト「定番編」

○「Armory Crate」の最適設定を探る

ここからROG ZEPHYRUS S GX701GXRのパフォーマンスをチェックしていこう。今回は対抗できるハイエンドノートPCの入手が難しかったため、特に比較対象を設けずに進めることとする。

○CINEBENCH R20

まずはCPUの馬力を見る「CINEBENCH R20」からスタートだ。ここではデフォルトの「バランス」+「Optimus」設定と、Armory Crateで選択できる「Turbo」+「Discrete Graphics」設定で差が出るか試してみる。

TurboモードにするとPower Limitが引き上げられるため、スコアも上昇するのは当然の話。少しでも処理時間を短くしたいときにTurboモードは有効といえるだろう。CINEBENCH R20はGPUを全く使わないので、「3DMark」のスコアもチェックしてみよう。

○3DMark

GeForce RTX 2080はDXRに対応するため、レイトレーシングを利用するテスト「Port Royal」を検証に含めた。確かにTurbo+Discrete Graphicsにすることでスコアは上昇するが、スコア上昇分はバランス設定時の3〜4%増しといったところ。物理演算テストなどでCPUパワーが直接効いてくるシーンはあるものの、全体のスコアアップには大きな影響はないようだ。ちなみにTurbo+OptimusだとTurbo+Discrete Graphicsより低い値となるが、その差は極めて小さい(せいぜい10〜40ポイント程度)。

○漆黒のヴィランズ - ファイナルファンタジーXIV

もう一つ「ファイナルファンタジーXIV」の最新公式ベンチマーク「漆黒のヴィランズ」版を試してみよう。FF14ベンチもCPUクロックがスコアアップに繋がることを経験的に知っている人が多いと思うが、3DMarkと違った傾向になるだろうか? 解像度はフルHD(以降同じ)、画質は「最高品質」とした。スコアの他に最低fpsと平均fpsも比較する。

スコアだけを見れば、Turbo+Discrete Graphicsの効果はあったといえる。3DMarkと同様に4%程度のゲインが確保できた。だがフレームレートで見るとTurboの効果は思ったほど大きくない。最低fpsが1だけ上がったはいいが、平均fpsとしてはほとんど変わっていない。負荷が長期間に渡るとPower Limitの限界になりクロックがバランス設定時と大差なくなるからと推察される。普通にゲームを遊ぶならバランス設定で十分だろう。

実際にROG ZEPHYRUS S GX701GXRを運用するなら、バランス設定は変えずに、G-Syncを使うためにDiscrete Graphicsモードにするのがベストだ。以降のテストは全てバランス+Discrete Graphics設定で検証するとしよう。

●ベンチマークテスト「実ゲーム編」

では実ゲームでのパフォーマンス検証に入ろう。まずは高リフレッシュレートの液晶が活きる負荷が軽めのFPS「Apex Legends」および「Rainbow Six Siege」を使用する。

○Apex Legends

まず、Apex Legendsは画質を一番重くした設定と、中程度の設定(2段階しかないものはオンとする)の2通りで検証した。フレームレートの計測は「OCAT」を利用し、トレーニング用ステージで検証した。また、G-Syncはフレームレート等に影響が出ないよう、(基本的には出ないが、予防的措置として)あえて無効にして計測している。

Ryzen 5 2600XとGeForce RTX 2600を搭載した自作デスクトップマシンの検証記事と比較できるようにしているので、参考にしていただきたい。

Apex Legendsは処理が軽めなうえ、144fpsでキャップになる。GeForce RTX 2080にCore i7-9750Hの組み合わせなら、平均140fps到達も容易い。最低フレームレートの落ち込みがやや大きめだが、G-Syncを効かせてしまえばスタッタリングも感じることなく、滑らかな描画でゲームに集中できるだろう。

○Rainbow Six Siege(R6S)

続いてRainbow Sixは画質「最高」と「中」をベースに、レンダースケールを100%(デフォルト設定だと50%)に設定。ゲーム内ベンチマークを利用して測定した。

このゲームのベンチマークはとりわけ最低fpsが落ち込みやすいが、平均fpsを見ると搭載液晶のリフレッシュレートを軽く超えている。こちらもG-Syncを効かせることで最高画質でも快適なテロハントを楽しめるはずだ。

○PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUND(PUBG)

同系統のゲームとしてPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」をプレイした際の性能もチェックしてみたい。画質「ウルトラ」と「中」設定におけるフレームレートを計測した。トレーニング用の島を約半周した時のフレームレートを比較する。

Apex等に比べるとPUBGの描画は重いが、それでも一番重い画質設定で120fps弱は出せる。Discrete GraphicsにしてG-Syncを効かせることでフレームレート変動が激しいシーンでも安定した画面描画を得られるはずだ。

○World War Z

次もPUBGのようなTPSだが、少々趣向の違う「World War Z」を試してみよう。ゾンビが大集団で襲いかかって来るので、高画質プレイにはそれなりのパワーが必要だ。APIは「Vulkan」を、画質は「Ultra」および「Medium」設定を使用した。ゲーム内ベンチマークを実行した時のフレームレートを比較する。

PUBGよりもやや下程度のフレームレートだが、最低〜平均fpsの振れ幅が小さい。滑らかさ重視ならMedium設定が良いが、Ultraでも十分快適だ。

●ベンチマークテスト「DXR対応ゲーム編」

○Battlefield V(BFV)

せっかくGeForce RTX 2080を使っているのだから、DXRを使ったゲームのパフォーマンスもチェックしよう。まずは「Battlefield V」を使用する。DirectX12ベースの「最高」と「中」設定のほかに、「最高+DXR」設定も加えた3通りのフレームレートを比較する。テストシーンは「最後の虎」開始直後〜戦車2両を撃破するまで、計測ツールは「OCAT」を使用した。

最高設定でDXRをオンにすると平均60fpsを割り込んでしまうが、こういうゲームこそG-Syncの威力が発揮される。垂直同期を無効にしても、ティアリングが全く出ないのでプレイしやすい。ただ、マルチプレイで勝ちにこだわりたいならDXRはオフにし、やや画質を下げた方が良いことはグラフが示すとおりだ。最高設定でも100fpsを超えるため、GX701GXRの高リフレッシュレート液晶がしっかり活きてくる。

GeForce RTX 2080はDLSSも使えるが、DLSSは解像度がある程度高くないと使えない。GX701GXRでDLSSを使うには、外部ディスプレイに接続しなければならないのはちょっと残念だ。

○Shadow of the Tomb Raider

続いては「Shadow of the Tomb Raider」だ。BFVは反射の表現にDXRのレイトレーシングを使用しているが、このゲームでは影の表現にDXRが活用されている。DirectX12モードで画質「最高」および「中」設定、さらに「最高+DXR」の3通りの設定でテストした。ゲーム内ベンチマークを利用して計測しているが、「GPU-」とあるのはGPU側の処理のフレームレートであり、実際にプレイヤーが確認できるフレームレートは「Avg」の値となる。

DXRを使うとかなりフレームレートが下がるが、それでも平均60fpsをギリギリ超えている。このクラスのゲームを画質を犠牲にせず遊べるのは素晴らしい!

○Metro Exodus

最後は現時点で最重量級ゲームの一角である「Metro Exodus」で試そう。ゲームに同梱されているベンチマークアプリを使い、そこに収録されている「RTX(Ultra設定+DXR+DLSS)」「Ultra」「Normal」の3通りを計測した。Ultraの上にさらに重い「Extreme」というテストもあるが、今回の環境ではベンチマークが始まらないため1段下のUltra設定を利用している。

Metro Exodusは光の映り込み等を表現するGlobal Illuminationにこだわりがあり、さらにHairWorksや複雑な物理演算を組み込んでいるためさらに重くなる。DXRなしのUltra設定でも最低fpsがかなり落ち込んでいるのがわかる。60fpsプレイがしたければDXRなしが好適だが、G-Syncを効かせればDXRを有効にしても割と動き回れる。映像美を堪能したければ、ぜひDXRを有効にして遊んでいただききたい。

●ベンチマークテスト「動画変換・RAW現像編」

○Premiere Pro CC

ROG ZEPHYRUS S GX701GXRほどのスペックがあれば、ゲームだけで使うのは非常にもったいない。CPUパワーを要求する動画編集等に使っても効きそうだ。そこで今回は「Premiere Pro CC」を使い、約3分半の4K動画プロジェクトから4KのMP4動画を書き出す時間を調べてみた。コーデックはH.264およびH.265とし、それぞれ1パス20Mbpsで書き出している。これもRyzen 5 2600XとGeForce RTX 2600を搭載した自作デスクトップマシンの検証記事と同じテストだ。

搭載CPUのCore i7-9750Hは6コア12スレッドもあるので、動画のエンコードもお手のものだ。H.265だとさらに時間がかかるが、3分半が5分半なのでまあ許せるレベルの処理時間といえるだろう。

○Lightroom Classic CC

「Lightroom Classic CC」で200枚のRAW画像(6000×4000ドット)からJPEGに書き出す時間も計測した。画像にはレンズ補正や色温度調整程度の軽い補正をかけ、そのまま最高画質のJPEGに書き出した時と、書き出し時にスクリーン用のシャープネスを付与した時の2通りの時間を計測した。

シャープネスを付与するとCPU負荷が一気に上るが、その場合でもROG ZEPHYRUS S GX701GXRのCPUは良い仕事をする。シャープネスを付与しない時に比べ1分も変わってないからだ。CPUパワーの高さが伺える。

●ゲーム中の熱はどの程度か?

デスクトップPC並みの性能が厚さ20mm足らずのボディに入っていることは驚きだが、発熱はどの程度シビアなのだろうか? 室温24℃環境でアイドル状態(10分以上放置したもの)→ Metro Exodusを起動 → 30分放置してゲームを終了 → 8分程度放置した時のCPUパッケージ温度およびGPUの温度変化を追跡してみた。3DMarkの検証時と同じ「ノーマル+Optimus」設定と「Turbo+Discrete Graphics」設定でそれぞれ比較する。温度測定は「HWiNFO」を使用した。

「Turbo+Discrete Graphics」だとCPUの温度がヤマアラシのトゲのように激しく上下する。ゲーム中は90℃を超えることも時々見られたが、サーマルスロットリングに入ったのはテスト期間中に10回にも満たない。サーマルスロットリングに入る前にPower Limitでクロックが下がる感じだ。これに対しデフォルトの「ノーマル+Optimus」モードではCPUパッケージ温度やコア温度が90℃を超えることはなかった。

だが面白いのはGPU温度の方だ。Turboモードにするとファンの回転数が上がるため、GPUの方が冷やされる。Turboモード時だと最高で76℃、ノーマルモードで79℃という結果になったが、これはデスクトップ向けのグラフィックスカード並みの冷却力といえる(Max-Qなのでクロックが抑えられているのも理由のひとつ)。

この温度検証前とゲーム終了直前の温度分布をサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」で撮影してみたのが次の図だ。

アイドル時およびゲーム開始約30分後の温度分布。本体中央からヒンジ寄りの部分の温度が高くなっている

ゲームを30分程度続けると表面はおおよそ60℃。中央部はかなり熱いと感じるが、キーボードの部分はほとんど熱を感じない。どれだけCPUやGPUを回してもキーを操作する指は全く熱を感じないのだ。ただ熱気が本体の左右に吹き出すため、マウスの置き方が悪いと手が熱くなる。GX701GXRの設計機構的に仕方ないとはいえ、もう一工夫ほしいところだ。

○まとめ: 細かい欠点はあるが、パワーがあれば全てを許せる

以上でROG ZEPHYRUS S GX701GXRの検証は終了だ。軽いゲームから重いゲームまで一通り回してみたが、画質を犠牲にすることなく高フレームレートが出るのは本当に気持ちが良い。液晶解像度がフルHDなことだけが残念だが、144Hz&G-Syncという付加価値はゲームでは強い。特にMetro Exodusのようにフレームレートが低めで大きく変動するゲームであっても、ティアリングに悩まされないのは眼にも優しい。国内予想価格が約45万円と値は張るが、気楽に持ち運べるハイパワーPCが必要なゲーマー、そしてクリエイティブ系アプリを常用する人にオススメしたい一台といえる。