by allieween

1992年に放映された武内直子原作のアニメ「美少女戦士セーラームーン」は日本を代表するアニメ作品の1つであり、日本だけではなく世界中で人気が高い作品です。放映当時は美少女戦士セーラームーンを題材としたゲームが何十本も発売されましたが、そのほとんどが日本国外では販売されませんでした。スーパーファミコン向けに発売された美少女戦士セーラームーンのロールプレイングゲーム(RPG)を、海外のファンが英語圏向けにフルローカライズすることに成功したとゲーム系メディアのPolygonが報じています。

Sailor Moon RPG localized by fans 23 years later - Polygon

https://www.polygon.com/2019/6/13/18677808/sailor-moon-another-story-rpg-download-rom-fan-localization



1995年にスーパーファミコン向けソフトとして発売された「美少女戦士セーラームーン ANOTHER STORY」は、美少女戦士セーラームーンのゲーム作品の中でも珍しくRPGに属するゲーム。アニメと原作をミックスしたオリジナルのストーリーとオリジナルキャラクターのデザインは原作者の武内直子氏が書き下ろしたもので、セーラー戦士が勢ぞろいするという豪華な内容で、美少女戦士セーラームーンのファンならば一度はプレイしたいというタイトルです。

しかし、この「美少女戦士セーラームーン ANOTHER STORY」は国内販売のみで、アメリカやヨーロッパなど海外では販売されませんでした。もちろん日本からスーパーファミコン本体と共に取り寄せて購入してプレイする猛者もいましたが、テキストベースでストーリーが進んでいくRPGなので、日本語が読めなければせっかくのオリジナルストーリーを味わうことができません。

美少女戦士セーラームーンに限らず、日本のゲームはキャラクターものを中心に海外版が公式リリースされないことがあるため、一部のファンによって非公式ながらローカライズが行われることがよくあります。例えば、海外では特に人気の高い「MOTHER2 ギーグの逆襲」の続編である「MOTHER3」は日本国外ではリリースされておらず、有志による非公式の翻訳版が登場しています。

「美少女戦士セーラームーン ANOTHER STORY」のローカライズは、エミュレーターのROMファイルに当てるローカライズパッチという形で、ゲームROMハッカーが集まるROMhacking.netのフォーラムで行われました。そして、発売から23年後にようやくバージョン1.0がリリースされ、記事作成時点ではバージョン2.01のパッチが公開されています。ローカライズパッチを適用した状態でのタイトル画面は以下のような感じ。「美少女戦士セーラームーン」というロゴが完全に英語版に置き換わっていて、単にテキストを翻訳しただけではないということがよくわかります。



ゲーム中のセリフやUIに至るまで、すべてが英語に翻訳されています。また、再プログラミングも行われているため、ゲーム中にあるバグもいくつか修正されているとのこと。



ゲームのローカライズ作業はただ翻訳するだけではなく、ゲームや原作、キャラクターへのリスペクト、現地文化への理解が求められます。Wii Uの「ゼノブレイドクロス」やニンテンドー3DSの「ファイヤーエムブレムif」では、ローカライズの際の厳しすぎる表現規制によって一部機能を排除してしまい、ゲームファンから大不評を買ったことがあります。「美少女戦士セーラームーン ANOTHER STORY」のローカライズ作業では、最初に翻訳されてから完全版に到達するまで400箇所以上の翻訳に変更が加えられたそうです。例えば、主人公の月野うさぎが弟である進悟の部屋に入った時の会話が以下。日本語版だと「かってに人のへやにはいってくるなよ」と少し生意気な物言いとなっています。



最初の翻訳では「Get out of my room!」となっています。



そして最新版の翻訳は「Get outta my room!」と、out ofが口語形のouttaになり、子どもの生意気な言い方に聞こえるよう工夫されています。キャラクターの性格やニュアンスを踏まえた上で翻訳することで、ファンはより完成度の高いローカライズを目指してきたというわけです。



また、単にテキストを日本語から英語に翻訳するだけではなく、限られたスペースにふさわしいタイミングで英字の台詞を表示するべく、フォントのデザインやサイズが何度も調整されてきたとのこと。これだけ完成度の高いローカライズ作業を有志で行うのは並大抵のことではありませんが、フォント・テキスト・グラフィック編集などを担当したvivify93さんによると、今回のフルローカライズパッチは1人で開発を進めてきたものではなく、これまで同時に進められてきたローカライズプロジェクトをまとめたものとなっているとのことでした。