元速球投手が、ようやく自分の衰えを認めた。

 下には16連敗を喫したヤクルトだけ。大型連敗がないのに下位に低迷する中日のほうが苦しんでいるように見えなくもないが、そんな厳しい状況が、松坂大輔(38)の一軍復帰の時期を早めそうである。

 右肩を故障した松坂が実戦に帰って来たのは、5月28日だった。二軍戦とはいえ、2回を投げて被安打ゼロ。与田剛監督(53)を喜ばせたのは、その実戦登板よりも翌日の様子だった。

「40メートルほどの距離でキャッチボールをしていました。登板前日も投げ込みをしており、先発時の調整をしても、右肩に痛みが再発しませんでした。単に投げられるかどうかではなく、先発ローテーション入りを狙うまでに回復したというわけです」(スポーツ紙記者)

 しかし、投球内容となると、話は別だ。“平成の怪物”と呼ばれたストレートで押しまくる当時の片鱗は影を潜め、変化球でかわすだけだった。松坂は登板前日から「もう、変化球で打ち取る投手」と言っていたが…。

 「ようやく、認めたかという感じです。松坂は右肩の故障が治れば、往年に近いストレートのスピードとキレも戻ってくると考え、練習を続けてきました。スピードを出そうとして無駄な力が入り、投球フォームを狂わせ、それが原因で右肩を痛めるという、その繰り返しでした。球速の衰えは分かっていても、それを認めない自分がいるみたいな心境だったのです。変化球投手でもいいから現役にこだわる選択がやっとできたのでしょう」(球界関係者)

 しかし、自分を知るには少し遅すぎたようだ。まだ捨てきれていない“美学”もある。それは「先発完投」、長いイニングを投げる従来のスタイルだ。

 「昨季は、森繁和前監督が松坂の『投げたい』、『今日は無理』などの自己申告を受け、その通りにさせてきました。他の先発投手の調整にも影響しましたが、中日選手は松坂に好意的でしたから問題にならなかっただけです」(同)

 与田監督、西武時代を知る伊東勤ヘッドコーチ(56)も、松坂の年齢に配慮した起用をするつもりだが、こんな声も聞かれた。

 「長いイニングを投げるスタミナはないものの、性格的に『投げたがり』なので、中5日とか6日で“オープナー”が務まるとの見方もされています」(前出・スポーツ紙記者)

 ただ、変化球の精度には一抹の不安も残している。先の復帰戦では通用したが、一軍相手ではどうなのか。

 もっと早く自分を知っていれば、変化球の練習もできたはず。遅すぎたイメチェンということのようだ。