染谷将太

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 「充実していると思っています。それは常に思っていることですし、それが大事なのかなとも。悩むことはありますし、一つ一つちゃんとやっていくしかない。プレッシャーも感じますし、しっかり応えていかなければならないと思っています」。そう語るのは、今や「演技派の代名詞」とも言える26歳の染谷将太。昨年から、現在上映中の『パラレルワールド・ラブストーリー』にかけて、公開された映画は7本にのぼる。かねてからファンを公言する黒沢清監督の新作『旅のおわり世界のはじまり』が本日(14日)より公開される染谷が、数多くのオファーを受ける中で貫いている俳優としての信念を明かした。

 『リアル〜完全なる首長竜の日〜』(2013)、WOWOWのドラマ「予兆 散歩する侵略者」(2017)に続いて3度目の黒沢作品となる『旅のおわり世界のはじまり』では3週間のウズベキスタンロケに臨んだ染谷。本作では、幻の怪魚を探しにクルー(前田敦子、加瀬亮、柄本時生)と共にウズベキスタンにわたるバラエティー番組のディレクター・吉岡を演じている。吉岡は、前田演じる主人公のリポーター・葉子に無茶振りをし、クルーの中で最も感情の起伏が激しい人物。時にカメラマン(加瀬)と衝突することもある。

 染谷自身も『清澄』(2015)、『ブランク』(2017)などの短編映画でメガホンをとっており、同じクリエイターという役を演じることに以下のように語る。「自分が映画を撮るときは撮りたくて撮っている。でも彼は言われた仕事をやっているだけだと思うのでそこが大きく違いますが、クルーの中で最も現場をちゃんと終わらせなければならないという責任を担っているところは一緒だなと思います。そういうところからくる、例えば『全然取れ高がないじゃないか」といった苛立ちは、自分が背負いたくもない責任を背負っていることから湧き起こっているのではないかと」

 劇中、あらかじめ撮影の許可をとっていたはずが土壇場になって撮影不可になる、というシーンがあるが実は現場でも同様のことが起きていた。「(劇中のように)撮れなかったことはなかったんですけど、ロケ場所が前日にキャンセルされたということはありました。一時は騒然となっていましたけど、スタッフが優秀だったので別の場所を探し出して事なきを得ました」

 海外での約3週間の拘束は、多忙な染谷にとって困難を極めると想像に難くないが、本作へのオファーに二つ返事で快諾したという。黒沢監督の一体何が、染谷をひきつけるのか。「演出はすごくシンプルなんです。こう動いてこうしゃべってほしいと、物理的な演出が多いんですけど、それをいかに成立させるかということに、自分はすごく燃えるんですね。動きは縛られているんですけど、その中でできることがいっぱいあるというのがとても楽しいです」

 昨年の2月には中国の巨匠チェン・カイコーのもと『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』で主演を務め、度々タッグを組んできた石井岳龍をはじめ三宅唱、豊田利晃、森義隆らの作品に出演。染谷のフィルモグラフィーをさかのぼると、『寄生獣』のような拡大公開系の大作の主演から園子温、石井裕也、冨永昌敬ら作家性の強いミニシアター系作品まで幅広く、作品の規模や役の大小で選んでいない印象だ。数多いオファーの中で出演作品をどのように決めているのか?

 「雇われ仕事なので、声をかけていただけないと働けないというのは念頭にあります。呼ばれているということは少なくとも自分を必要としてくれているのだと思うので、それはとてもありがたいです。あと、監督から声をかけていただけるのはすごくうれしいです。一番、直接やり合うのは監督ですし。『パラレルワールド・ラブストーリー』も森監督(森義隆)が『聖の青春』(2016)に続いて、『ぜひこの役をやってほしい』と呼んでくださってすごくうれしかったですね。ただ、タイミングが合わなければ出られませんし、運と縁、だと思っています」

 「例えば海外の作品に日本人役で出させていただいたり、日本映画で海外に行くということはこの先もあるかもしれないですが、日本人キャスト4人で異国の地にポンと放り出されるという作品はこの先多分ないだろうなと思います」と本作での特殊な体験を噛みしめる染谷。先ごろ福田雄一監督のドラマ「聖☆おにいさん 第II紀」が動画配信サービス「ピッコマTV」で配信スタート。来年は織田信長役に抜擢された大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」のほか、『悪の教典』(2012)、『神さまの言うとおり』(2014)などで組んできた三池崇史監督の映画『初恋』を控えている。(取材・文:編集部 石井百合子)

映画『旅のおわり世界のはじまり』は公開中