「さまざまなシステムを用いることができることは、今後の戦いにおいて大きなアドバンテージになるだろう」

 スペインの目利き、ミケル・エチャリ(72歳)は開口一番、エルサルバドル戦で2−0の勝利を収めた日本の戦い方を褒め称えている。

「エルサルバドル戦の日本は非常に面白い動きを見せ、連係を結んでいた。とりわけ、攻撃に関してはアイデアが明確で、どのように動くべきかを選手たちは心得ているようだった。それぞれがスペースを使い、作り、支配するという行動を理解し、手際よく繰り返していた」

 現在も世界中のサッカー関係者から戦術の講義のために招かれているエチャリは、森保ジャパンが新たに採用した戦い方を克明に分析した。

「日本はトリニダード・トバゴ戦に続いて、3−4−2−1のシステムを採用した。開始早々は手探りながらも、徐々にゲームを支配した。システムの運用面で明らかに改善が見られ、攻撃面で強度を高めていた。

 1トップの背後にポジションを取った堂安律(フローニンゲン)と南野拓実(ザルツブルク)が、インサイドにポジションを取ったとき、ウィングバックで高い位置を取った伊東純也(ゲンク)、原口元気(ハノーファー)が大外にできたスペースを使う。そのとき、ボールを受けた選手をサポートする形で逆サイドの選手、中盤の選手、トップの選手がそれぞれスペースを支配。ポジション的優位のおかげで波状攻撃ができたし、反撃を許さなかった。


エルサルバドル戦で2ゴールを挙げた永井謙佑

 一方のエルサルバドルは4−1−4−1のシステムを採用し、中央を固めながら、サイドの入り口を封じる狙いだったのだろう。テクニカルな選手が多く、その面でのレベルの高さも見せた。しかし攻撃は推進力に欠け、深さを作れないため、じりじりと押し込まれることになった。ボール支配率は51%と健闘したものの、それは試合状況(リードした日本が無理に攻めなかった)によるものに過ぎない」

 前半19分だった。日本は右センターバックの冨安健洋(シント・トロイデン)がボールを持ち上がって、アウトサイドにできたスペースにパスを流し込む。これに永井謙佑(FC東京)が反応し、ボールを受けると鋭く切り返し、左足で先制点を流し込んだ。

「(先制点に至る前の)右サイドには、日本が使えるスペースが生まれていた。ウィングバックがサイドで幅を取って、深みを作りながら、インサイドで南野、堂安が数的優位を作ることによって、エルサルバドルを翻弄した。永井がさらに外側にできたスペースを使い、ゴールラインまで深みを作ることによって、守りを無力化し、鮮やかに得点を決めた。最後は永井の個人技だったが、チームプレーによるゴールだった。

 前半42分の2点目も見事だったと言える。左サイドで高い位置を取った左センターバック、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)が、ボランチの橋本拳人(FC東京)からの素早いパスを受けると、絶好のタイミングで左サイドにパスを流し込む。これにインサイドにいた原口が外へダイアゴナルに流れ、ゴールライン近くまで深みを作って折り返し、再び永井が決めた。マイナスのクロスを正面から打ったシュートで、相手を丸裸にしたも同然だろう。

 スペースの争奪戦に勝利した瞬間だった」

 エチャリはそう言って、この夜の日本の戦いをほとんど絶賛している。そして、後半途中で交代投入された久保建英(FC東京)についても言及した。

「後半もゲームをリードしていたのは日本だった。セットプレーから昌子源(トゥールーズ)がヘディングを見せ、南野はシュートで技術の高さを示した。その後は両チームとも交代が相次ぎ、試合の流れは途切れ途切れになったが……。

 交代で出場した久保は、右サイドへいいタイミングでダイアゴナルの動きで流れ、いきなり目覚ましいシュートを打っている。その後もいくつかの個人技を見せたが、そのひとつひとつに危険な匂いが漂っていた。非常にレベルの高い技術を持っているのと同時に、それをトップスピードで使える点は、特筆するべきだろう」

 エチャリはテストマッチとしての日本のエルサルバドル戦に及第点を与え、代表デビューを飾った久保に興味を示したあと、最後にこう締め括っている。

「相手のレベルは、お世辞にも高かったとは言えない。しかしそれとは別に、日本は戦術システムの運用に成功していた。チームとして、スペースを作り、支配することができていた点は、高く評価すべきだろう。今後への光明と言える。

 コパ・アメリカには同じメンバーでは参加しないそうだが、チームとして戦術的に改善を続けていくことを信じているし、大いに期待している」
(つづく)