個性豊かな長久允監督!

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 最新作『ウィーアーリトルゾンビーズ』で、今年開催された第35回サンダンス映画祭で審査員特別賞オリジナリティ賞を受賞した長久允監督が、作品にかけた思い、そして海外での反応を語った。

 デビュー作となった『そうして私たちはプールに金魚を、』が、2017年の第33回サンダンス映画祭短編部門にて、日本映画初のグランプリを獲得した長久監督。世界の映像作家たちがしのぎを削る映画祭の頂点に立ったとき、長久監督は何を感じたのだろうか。「最初に撮った短編は、仕事で忙殺されていた中、有給休暇を取って使った作品でした。自分が本当に好きなものを100パーセントなんの妥協もなく撮ったものが海外で受け入れてもらえたことは、『これでいいんだ』という自信に繋がりました」と振り返った。「自分が本当に好きなもの。したいこと」、それは現在も所属している電通で忙しい日々を過ごしながら見つけたものだ。

 電通は大手広告会社で、どんな商品であっても、その良さを引き出しより多くの人たちに訴求するようプロモーションを行なっていく。だからこそ、最初の短編は自分が人生の中で吸収した「好き」を集め、自分のやりたいことだけを純粋に追求するという、普段の仕事とは違う挑戦となった。電通のクリエイターという肩書きだけが一人歩きしてしまいがちな国内と違い、そのフィルターのない海外で認められたことは大きかった。

 「サンダンスで感じた、これでいいんだという自信のもと、この『ウィーアーリトルゾンビーズ』を作ることができました。他の人にどう思われるかなどは一切考えずに、自分の撮りたいものを純粋に撮ってみようと思って作りました」という長久監督の言葉通り、本作は監督の持つ独特な世界観が広がっている。中心となる8bitの音楽90曲に載せて展開される子供達の無機質な会話、独創的なカメラワーク。全てが型破りであり、既存の映画とは一線を画すオリジナリティーにあふれている。

 大学在学中に映画監督を目指し、映画学校に通って基礎を学んだという長久監督だが、授業で教えられることに常に反抗心を持ち続けていたという。「こうやって撮るとか、決まり切った手法に対していつも何故その通りにしなきゃいけないんだって思いながら、その逆をやろうとしていたひねくれ者でした(笑)」。脚本が出来上がった後のプロセスもまた、大学まで音楽に傾倒していた長久監督ならでは。「音のリズムで最初に構成を作って、そこに映像を当てはめていくのが自分のスタイル。撮影の前には、自分で読み上げるセリフに仮で音楽を入れ、そこに絵コンテを当てはめて、ビデオコンテも製作してアングルも決めていきました。この手法はCMではよくありますが、映画では珍しいと思います」と話すように、監督にとって音は何よりも重要なファクターとなっている。

 本作の主演を務める4人の子供たちへの演出も、「感情だったり、演技だったりというよりは、自分が求めるリズムでセリフを言ってもらうことをまず優先させました」と独特で、矢継ぎ早に展開される無機質な子供達の会話は、英語の字幕が追いつかないほど。120分の本編の中で鳴り響く90曲の8bit音楽が、主人公たちの冒険をファミコンゲームのように体感する斬新な物語を世界に提示した。

 その独特な映像世界にサンダンスの観客は熱狂した。既存の概念をぶち壊す、自分だけの新しい“オリジナル”を作り出した長久監督。「万人受けするかどうかは分かりませんが、この映画を観た方がどんなことを感じたかが不安でもあり、楽しみでもあります」という本作は、これまで感じたことのない感情をビンビンに刺激してくる新たな映画体験を味わえるはずだ。(取材・文:森田真帆)

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』ハローワーク6月14日より全国公開