「コドモ・ワカモノまちing」のプレーカー。木切れとござを積み、道路や広場に遊び場を設ける (コドモ・ワカモノまちingの星野諭代表理事提供)

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 都市部に暮らす小学生の8割が、平日は全く外遊びをしない−。

 子供の遊び場について研究している木下勇・千葉大教授の研究室の調査から、そんな実態が浮き彫りになった。背景にあるのはお稽古通いやゲームの浸透、公園や路地などの遊ぶ場の減少など。木下教授はその解決策に、遊び道具を積んだ「プレーバス」の普及を提案している。(津川綾子)

 ◆楽園でない公園

 「平日、うちの子はほとんど外遊びをしない」

 こう話すのは3児を育てる神奈川県藤沢市の母親(44)だ。「すべり台ですべる以外の遊びをすると、やめなさい、と注意される。木登りしても怒られる。今の子はけっこう窮屈」と母親は話す。公園には不特定多数の出入りもあり、なかには不審な人物の姿も。「不安なのでその公園には子供だけで行かないように、と禁止した」と話した。

 こうした状況について、日本学術会議「子どもの成育環境分科会」の委員長も務める木下教授は「今や子供にとって外遊びは日常的に気軽に行われる行為ではなくなっている」と説明する。木下教授の研究室の寺田光成さんが平成30(2018)年に都市部(千葉市)と農村部(群馬県みなかみ町)で、小学生計586人に平日放課後の遊びについて調査をしたところ、都市部で8割、農村部で6割が、平日放課後に全く外遊びをしていない、と答えた。

 ◆生きる力を育む

 子供が外遊びをしない理由は何か。木下教授は、禁止事項や老朽化遊具の撤去などで公園が子供に魅力的ではなくなったこと、室内のゲーム遊びが常態化していること、放課後は習い事の予定があり、スケジュール管理が母親に委ねられていること−などを挙げる。寺田さんも、「外に友達がいないから外に出る理由がない」と小学生が話すのを聞いたという。

 ではなぜ、子供にとって外遊びは必要なのか。木下教授は「社会や自然の多様な環境との出合いや、経験から学ぶ大切な機会」と話す。また、お茶の水女子大学の内田伸子名誉教授(発達心理学)も「幼児期の遊びは、自尊心や意欲、人工知能(AI)には取って代わられない非認知能力や創造性を育む」と重要性を指摘。非認知能力とは目標に向かって頑張る力や、自制心、協調性などで、「生きる力」につながるとして注目されている。

 こうした子供の外遊びの重要性を広く伝えようと、木下教授らは今月1日、都内でシンポジウムを開催。「子どもの戸外遊びが消滅!?」と副題をつけ、子供の遊びの専門家など、ドイツから関係者を招き、同国で展開されている「プレーバス」の活動を紹介した。

 ◆地域の大人とも

 「プレーバス」とは、遊びのプロが運営し、街や公園などに遊びの材料を積んだバスなどで出向いて遊び場を開く社会活動。同国では1970年代、車社会の発展で子供の遊び場だった道が危険になると、町の広場などにプレーバスが出かけ、子供の遊び場を創出する活動が盛んになった。現在は同国内で160団体が600台を運営中という。

 日本では、NPO法人「コドモ・ワカモノまちing」(相模原市)が、平成20年から都内や被災地でプレーバスと同様の「遊びの出前」活動を開始。現在、5台目を準備中だ。代表理事の星野諭さんは「大人の日常空間に子供の遊び場を作ることで、地域の大人と子供がつながるきっかけ作りができる」と、コミュニティーで世代間の縁結びにもつながる効果も語った。

 子供の外遊びの機会が減りゆく今、木下教授は「町のどこにでも遊びのドアを開くことができるプレーバスが展開できれば」と話している。