「長期投資ならインデックスファンドを買っていれば大丈夫」は、本当に正しいのか。「えっ?減ってる?」ということだって、あるかもしれない(写真:hanack / PIXTA)

投資信託について、識者の間では「長期ならインデックスファンド(株式指標の値動きに連動する投資信託)は、アクティブファンド(運用担当者が独自に株式、債券などを組み合わせる投資信託)より有利」という見方が定説になりつつある。しかし、それは本当に正しいのか。セゾン投信の中野晴啓社長に話を聞く。

「アクティブファンドとインデックスファンド、どちらがよいのか」

日本の投資信託界隈では、数年来、この手の論争が繰り返し行われてきました。ただ、この問題は宗教論争のようなものですから、今も話の決着はついていません。

結論から申し上げれば、「どっちがよい」と割り切れる話ではないはずなのです。

「アメリカでは長期で見ればアクティブファンドは、インデックスファンドに勝てないと言われている」という声も聞こえてきますが、それはあくまでもアメリカでの話。日本の株式市場に当てはめたとき、同じことが言えるかどうかは何とも言えません。しかし、少なくとも平成の30年間で考えれば、日本の株式市場のインデックスファンドに投資しても、利益が出ないどころか、マイナスリターンで終わっています。

30年といえば十分に長期です。長期的に見てインデックスファンドのほうが有利だという人は、この事実を踏まえたうえで「インデックスファンドのほうが有利である」ということを証明しなければなりません。

上昇時はインデックスファンドの独壇場だが…

株価に限らず、マーケットはつねに「上昇トレンド」「下降トレンド」の繰り返しです。そして、その間にトレンドがほとんどない「保ち合い」の状況が続きます。

このように、相場にはさまざまな局面があるわけですが、インデックスファンドは基本的に上昇トレンドで強みを発揮します。相場全体が力強く押し上げられる局面は、インデックスファンドの独壇場ともいえるでしょう。実際、右肩上がりの相場が続くのであれば、わざわざ銘柄を選別する意味がありませんから、全財産をインデックスファンドに置いておけば、十分なリターンが期待できます。

でも、残念なことに、常時右肩上がりの相場などありえません。長い上昇トレンドの後は保ち合い相場になり、それ以上、上がらないとなった時点で売りが増え、下降トレンドに入っていきます。

アクティブファンドが強みを発揮するのは、相場が保ち合いになり、下降トレンドへと移行していく局面です。「銘柄を選別し、リスクをマネジメントしながら運用する」というアクティブファンドの特性が、この局面で効果を発揮するのです。

例えば、TOPIX(東証株価指数)が半年で20%下落したとしましょう。

このとき、TOPIX連動型のインデックスファンドは、TOPIXとほぼ同じ率で値下がりします。これに対してアクティブファンドは、もちろんファンドにもよりますが、銘柄選別も含めてしっかりリスクマネジメントが行われているものなら、基準価額の下落率はインデックスのそれに比べて低く抑えられる可能性が高い。これこそがアクティブファンドを選ぶ際のポイントになります。

よく、アクティブファンドの特徴について、「株価の上昇局面ではベンチマークとなるインデックスの上昇率を上回り、株価の下落局面ではベンチマークの下落率よりも小さく抑えて運用するファンド」という人もいます。しかし、これは多くのアクティブファンドの運用者にとって、「見果てぬ夢」であると申し上げておきましょう。

ヘッジファンドでもつねに勝ち続けられない

「上昇局面ではインデックスを上回り、下降局面ではインデックスよりも下落率を低く抑える」運用は、基本的に無理です。「守りながら増やす」ことを標榜しているアクティブファンドもありますが、上昇局面、下降局面の両方でつねにインデックスファンドを上回るリターンを実現するのは不可能ですし、それは「絶対リターンの実現」を標榜しているヘッジファンド(複数の金融商品を分散投資して、高い運用益を実現させる代替投資の1つ)も同類です。

前述したように、アクティブファンドの要諦は上昇時というよりは、下降トレンドにおけるリスクマネジメントにあり、これが長期的に見るとパフォーマンスに効いてきます。

例えば、1万円が5000円に値下がりしたときの下落率は50%ですが、5000円まで値下がりしたものを1万円まで戻そうとしたら、100%の上昇率が必要になります。

ところが本来、インデックスファンドでは50%下落するはずだったのが、あるアクティブファンドはリスクマネジメントの妙によって30%しか下がらなかったとしましょう。これを元の価格である1万円まで戻すなら、上昇率は42.9%で済むのです。これが積み重なっていけば、長期的にアクティブファンドの運用成績が、インデックスファンドのそれを上回ることも考えられます。

リスクマネジメントがされているファンドとは?

ポートフォリオの大半はグローバルに分散投資するインデックスファンドであるけれど、日本株アクティブファンドを一部に組み入れたいと考えている人もいると思います。

ではどういうアクティブファンドを選べばいいのかについては、さまざまなスクリーニング(ふるい分け)条件がありますが、こと運用成績については、最低でも過去5年のリターンをチェックして、下降トレンドのときに大きく下げないようなファンドを見つけるようにしてください。


投資信託の運用成績というと、どうしても一定期間中に高いリターンを上げているかどうかという点ばかりに目が行きがちですが、大事なのは下降トレンドのときに、いかに大きく下げずに踏ん張れているかということです。その点では「騰落率」という結果よりも、過去の基準価額の推移を見るようにしましょう。

また、最低でも過去5年の運用成績はチェックしたいので、新規設定ファンドは最初から対象外です。銀行の窓口などに行くと、その時々の新規設定ファンドをお勧めされますが、アクティブファンドで過去の運用成績を持たないものを選ぶのは、非常にリスキーであることを最後に付け加えておきます。