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 先日、参院議員の任期満了日以降、ワタミに復帰する意向を明らかにした。まずは2〜3カ月かけて国内外の現場をまわり社員の声に耳を傾けたい。肩書きや立場はその後でと考えている。

 政治家として「中小企業支援」に力を入れてきた。理想の念頭にCSV(社会的な共有価値の創造)という経営学の概念があった。CSVは、企業などが事業経営の枠内で社会問題を解決していくことを指す。そうした企業が増えることを望んだ。

 ワタミは6次産業に加えて、ゴミのリサイクルや、自然エネルギー、さらにカンボジアの教育支援まで、独自のCSVモデル(ワタミモデル)を構築してきた。これは、創業者の私のこだわりである。その活動や理念は、国連が定める「SDGs(持続可能な開発目標)」とも重なる。あまり知られていないワタミの「SDGs経営」をより具体的に、より発展的にしたいと思っている。

 この6年間、ワタミの介護を売却するなど失ったものもある。しかし、逆に得たものもある。それは「困難を乗り越え、自立した社員たち」の存在だ。「自立した社員たちが活躍し、より幸せになる場をどうつくるか」が、私の責任だと考えている。一言でいえば、“任せて任せず”だ。

 その昔の私は、トップダウン経営を進めてきた。メニューの味や価格まですべて私が決めていた。社員が成長した今のワタミで、トップダウン経営に戻すつもりはない。積極提案をしてくる人材が本当に増えた。一方、私らしい経営判断はしていきたい。居酒屋の業態ブランドの寿命は5年と言われる。「和民」という私が作ったブランドは15年近く圧倒的な存在であった。私が経営から離れるころすでに、その寿命が来ていた。継承の反省である。本来、PDCA(計画、実行、評価、改善)は私が政治の世界で提案し続けた、経営の原理原則であり、官僚にも、現状肯定を散々批判してきた。

 さらに、会社や社員の可能性も引き出す役割でもありたい。現在売り上げ1000億のワタミには「5000億円企業」のポテンシャルがあると思う。(1)国内外食(2)海外外食(3)宅食(4)農業・環境事業(5)フランチャイズ事業。それぞれ1000億円規模の収益は見込める。外食で言えば、「から揚げの天才」などのファストカジュアル(ファストフードとファミリーレストランの中間業態)に、大きな勝機を感じている。海外で言えば、アジアの有望株ベトナムで今月から事業を開始する。宅食は今後ますます高齢者マーケットが増えていく。農業や環境も成長分野である。その実現への道筋をつくりたい。20代の女性社員と話す時など「ムリしてない?」とまず声をかける。そして「将来は何をしたい?」と夢を聞く。だいぶ優しくなったとベテラン社員に茶化されることもある。しかし本来、社員への愛情はずっと変わっていない。労働組合の結成や、離職率の大幅改善など改革も進んでいる。ホワイト企業の基準や選考があれば、積極的にそれを意識していく。「5000億」、「ホワイト大賞」…、愛用の手帳に必ず叶える夢を、日々書いている。(ワタミグループ創業者・参院議員、渡邉美樹