5バックになりやすい3バック。使用してきた布陣にそれは端的に表れる。続くオシムも当初3バックを採用した。それまでの3バックとはコンセプトが異なる3バック(5バックになりにくい、後ろで守ろうとしない)だった。それ以前とサッカーの流れは激変したにもかかわらず、過去との比較話はでなかった。

 トルシエジャパンは2001年、スペインのコルドバでスペイン代表と対戦した際には、フラット3ならぬフラット5で守り倒そうとした。なでしこジャパンと戦ったアルゼンチンより、さらに後ろに下がって守ろうとした。
アルゼンチンは守り切ることに成功したが、トルシエジャパンは最後にゴールを叩き込まれ0-1で敗れた。「後は攻撃力のみ。もう少し攻撃的精神を持って臨めば……」とトルシエが述べると、日本のメディアはそれをそのまま活字にした。
 
 一方、スペイン人の知人記者は「日本はコルドバまでいったい何をしにやって来たのか。ゴール前で跳ね返す練習か」と言って呆れた。

 キチンと攻撃されると、いくら守っても守り切れない。このスペイン対日本戦も、こうした時代の流れを象徴する一戦だった。これを機にといっても過言ではない、5バックになりやすい3バックを布くトルシエジャパン的チームは、減少の一途を辿ることになった。後ろに人数を掛けず、前で守るサッカーがスタンダードになった。

 2002年日韓共催W杯でベスト4入りしたヒディンク率いる韓国は、5バックになりにくい超攻撃的な3バックで臨んだ。トルシエジャパンの3バックとはまったく別種の3バックだった。にもかかわらず、日本のメディアはその違いに迫れなかった。布陣図すら満足に描けないスポーツ紙もあった。韓国の好成績をひたすら審判贔屓に求めようとした。

 こうした背景を知れば、時代に逆行する森保式3バックにもう少し敏感に反応できるはずだし、アルゼンチンと戦い0-0で引き分けたなでしこジャパンのサッカーにも、別の見方ができるはずだ。

 男女の日本代表を続けて見ると、歯がゆい気持ちになる。なぜこういうことになってしまうのか。少なくともメディアを含めた関係者は、さっさと切り替えて次に臨むべきではない。