岡山県内で栽培されているシャインマスカットの「晴王」

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 農林水産省が、目標に掲げる農林水産物・食品の年間輸出額1兆円のさらなる拡大に向けて、法改正の検討に入った。

 ブドウの一種、シャインマスカットやイチゴ、牛肉などが海外で高い評価を得る一方、果物の苗木や和牛の精液などが不正に持ち出されるケースが相次いでおり、法改正による強化で流出を防ぐのが狙いだ。ただ、植物の持ち出しは、病害虫や病気の観点から原則、禁止されていたはず。一体、どうやって持ち出されたのか。

 植物防疫所(横浜市中区)によると、発送元の国・地域、植物の種類により、持ち込むことができるもの、できないものが、それぞれの国で細かく定められている。病害虫の被害や生態系への影響などが危惧されるためで、苗木などは試験研究や博物館用、犯罪捜査に使うなどと、用途が決まっている。輸入許可証があれば、持ち出しが認められているケースが多い。

 ところが、国の研究機関で開発されたシャインマスカットは、苗木が何らかの方法で許可なく持ち出され、中国や韓国で栽培されている。しかも、生産されたシャインマスカットが東南アジアに輸出されていることも発覚。「コリアン シャインマスカット」「陽光バラ」などとして販売されていることが分かっている。

 関係者らによると、中国の生産者が日本のブドウ農園を訪れた際に無断で苗を持ち帰ったか、ブドウ農園の生産者がシャインマスカットの苗木を販売した可能性があるという。

 イチゴの「レッドパール」「章姫」に関しては、日本の個人育種家が開発し、韓国国内の一部生産者に利用許諾をしていたが、何らかの経緯で苗などが第三者に流出して無断で増殖されたとみられている。

 こうして無断で栽培され、販売されているのが分かっていても、法律上、打つ手がないのが実情だ。

 中国、韓国では、日本で販売してから4年(果物は6年)以内に現地の政府に登録しなければ販売権は認められないため、シャインマスカット、イチゴは登録手続きをしていなかった。

 すでにイチゴは、韓国で勝手に交配され、生産されている。日本に逆輸入されたこともあり、農水省は5年間で生産者らが受けた損失は推計で最大220億円と算出している。

 農水省は、こうした事態を防ぐため、海外での品種登録を支援する事業を強化する。出願費用の半額以上を負担したり、弁護士への相談、助言を数年前からサポートしたりしている。

 これに加え、現在、種苗法で、果物の苗木の持ち出しを禁止できるよう法改正ができるかなどを検討しており、今後の海外流出防止に向けて品種保護を進めていきたい考え。種苗流通の監視や種苗法における侵害の立証の適正化なども、海外流出防止に向けた検討会で議論されている。

 また最近、和牛の受精卵と精液が不正に中国に持ち出される事件も発覚した。持ち出された受精卵などは凍結保存容器に入れられ、フェリーで運ばれる手口で、税関をすり抜けた。

 大阪府警は、流出元とみられる徳島県の牧場経営者らを家畜伝染病予防法違反などの疑いで摘発した。

 農林水産省は、和牛の遺伝資源を保護する方法を検討してきたが、国際的なルールが存在しないなど規制は困難で、受精卵などの輸出を規制する条件は定められていない。吉川貴盛農水相は「法改正も視野に検討したい」としている。(経済本部 飯田耕司)