囲いわなを点検する池ケ谷さん(右)と山梨さん(静岡市で)

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市と農家好連携


 静岡市清水区小島地区で、温州ミカンに大きな被害を与えている猿に、衛星利用測位システム(GPS)付きの首輪を取り付け、行動を把握して一網打尽にする捕獲方法が成果を生みつつある。群れで行動する猿の生態を逆手に取り、GPSからの位置情報を基に群れの動きを地図上に記録。最適な場所に移動組み立て式の猿用囲いわなを置く。行動監視やわなの見回りなど、市と連携した農家のチームワークで、今年に入り25頭の捕獲に成功した。

 同市の2017年度の猿による農作物被害は31ヘクタール、約1400万円。果樹や野菜を中心に芋、稲、タケノコなど幅広い作物が被害を受けた。

 同地区では昨年秋、温州ミカンに大きな被害が出た。JAしみず理事で、ミカンを約1ヘクタール栽培する池ケ谷学さん(64)は「私も2トン食べられた。畑のミカンを全部食べられた農家もいる」と訴える。

 相次ぐ被害を受け、JA小島支店は、市内の鳥獣害対策関係者で組織する市野生動物被害対策研究協議会の事務局を担う、市の中山間地振興課に対策を要望した。同協議会は猿対策に力を入れており、17年度は目撃情報や聞き取りで詳細に調査し、市内に生息する群れを33群と推定。対策が必要な地区を確認し、囲いわなを設置した。

 この結果、44頭を捕獲する成果を上げた地区がある一方、成果が上がらなかった地区もあった。そこで同協議会は18年度、対策の高度化に踏みきり、被害が大きく、要望があった小島地区でGPS首輪の取り組みを始めた。

 19年1月、農家のわなにかかった猿にGPS首輪を付けて群れに帰し、6時間ごとの行動を地形図に記録した。把握した行動歴を基に、餌付けに最適な場所を選定し、大型の囲いわなを設置。2月上旬に16頭、3月上旬に9頭の計25頭の捕獲に成功した。

 捕獲に当たっては、同地区の農家10人でグループをつくり、当番を決めて週2回、わなを見回りした。当番はおりに餌を補充し、囲いわなへの猿の出入りを確認。おりの横に置いたベニヤ板に見回りで確認した猿の頭数を書き込み、情報を共有する。最も大量捕獲できるタイミングで、猿が出入りできるようにわなに取り付けていた材木を取り外し、猿を追い込んだ。JA小島地域南部地区運営委員長の山梨昌彦さん(66)は「困っているからこそ、みんなが協力して成果が上がった」と話す。

 好結果だったことから、同協議会は他地区でも3月にGPS首輪を利用した囲いわなを設置した。市は「GPS首輪はバッテリーが2年持つので、特徴を細かく分析し、引き続き捕獲に活用する」(同課)としている。