4月の欧州遠征ではフランスに1-3で敗れたなでしこジャパン。今大会での対戦はあるのか。(C) Getty Images

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 女子ワールドカップは、4年に一回、夏季オリンピックの前年に行なわれる、女子フル代表の世界大会。今年は、フランスで開催される。参加国数は、前回のカナダ大会に続いて24か国。4チームずつAからFの6つに分かれて、グループリーグを競う。各グループの上位2か国に全グループから成績上位の3位チームの4つを加えて、ノックアウトラウンドへ突入。ここから4試合を勝ち抜いたチームが優勝を手にする。
 
 2000年代に入ってからの女子サッカーは、アメリカ、ドイツ、さらにブラジル、スウェーデン、そして日本を加えた何か国かのグループで、世界の覇権が競われてきた。そして最近の2大会は、どちらも日本とアメリカの組合せになった。今回もこの両国が勝ち上がり、3大会連続で同一カードの決勝となれば、男子を含めて初の記録となるはず。個人的には、決勝でアメリカを下し、世界大会決勝での星を五分に戻して欲しい。しかし、そうしたクラシカルな考え方は捨てたほうがいいかもしれない。
 
 厚みを増したヨーロッパ勢が「群雄割拠の大会」を印象づける。開幕後、欧州勢対他地域のカードが5戦続いた。まず、開幕戦に登場したフランスは、地元の期待に応え、韓国を4対0で下す、好スタートを切った。続いて、2日目に登場したドイツは中国に、スペインは南アフリカに、それぞれ苦戦したものの、最終的にはその挑戦を退けた。そして、この大会3日目にも、イタリアがオーストラリアに逆転勝ち。ここまで登場した欧州勢は、5連勝と強さを見せつけている。
 
 歴戦のドイツが中国に苦戦したように「混戦」の下馬評自体が間違っているとは思えない。欧州をリードしてきたトップレベルのチームがさらに突き抜けているというよりは、中堅国の進歩するスピードが顕著なのだ。それが女子サッカー全体のレベルアップにつながっている。
 
 女子ワールドカップ4大会目の出場となる阪口夢穂は「スピードやフィジカルというのは何年も前から凄かったと思うんですけれども、近年ではそれに加えてテクニックや、コンビネーションも、すごく高まってきてるかなと感じます」と語っている。
 
 そうした新しいチームの好例が、大会2日目に登場したノルウェーだ。フィジカル、パワー、選手によってはスピード。そうした、これまでの北欧勢とはまったく違うデザインのチームに仕上がっている。しっかりとパスをつなぎ、その中で局面に応じて、長いキックなど恵まれたアドバンテージを織り交ぜる。
 
 10番をつけたグラハム・ハンセンはその象徴的存在だ。中間ポジションでパスを受け、柔らかいタッチでボールを操りながら、ゴールに迫っていく。シュート、パス、ドリブルとすべてのプレーにおいて一枚上のタレント性を持ちながら、一人でサッカーをしないところが、深みを感じさせる。
 
 このチームには、初代女子バロンドールを獲得したアーダ・ヘーデルベルクもプレーしていた。熊谷と同じリヨンに所属し、得点パターンが多岐に渡るストライカーは、女子チャンピオンズリーグでも、記録的なペースでゴールを積み重ねている。ここ数年は、クラブでのプレーに専念し、代表活動からは遠ざかっているが、その不在も感じさせない。
 
 鳥取でなでしこジャパンが大勝した時は、メンバーもモチベーションも違う。グループで同居する開催国フランスでも、楽観視はできない。
 
 実力差が接近したことでスリリングなゲームは、増している。日本が入ったグループには、ここまで日本がカモにしてきたアルゼンチンや、スコットランドが入っている。しかし、前者は欧州の各クラブで戦い、トップレベルのプレーヤーとの勝負を体感している選手が増え、後者には、長い距離を走った後でも、力強いシュートを決めるエリン・カスバートのようなアタッカーがいる。実力国イングランドを含め、グループリーグから戦いは予断を許さない。
 
「『2位通過すれば、向こうの山にアメリカとフランスが行くから、そっちのほうがいいんじゃない?』と教えてくださる方もいます。これまでは『こことここが1位で抜けるだろう』と予測できて、実際にそうなることが多かったんですが、今大会辺りから、これまでとは違う大会になると思います」と高倉麻子監督。当然、自分たちが晒されているリスクも承知している。
 
 平均年齢が24か国中2番目に高かった2015年のチームから、24か国中2番目に若いチームとなった、なでしこジャパン。現地時間の明日、6月10日、戦国模様の大会に名乗りをあげる。
 
取材・文●西森 彰(フリーライター)