エルサルバドル戦では腕章を巻いてプレー。3バックの中央に入り、冨安、畠中と上手く連係しながら、隙のないディフェンスで失点を許さなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ2019]日本×エルサルバドル/6月9日/ひとめぼれスタジアム宮城
 
 トリニダード・トバゴ、エルサルバドルと対戦した6月シリーズで、森保ジャパンでは初めて3-4-2-1システムが導入された。様々なポジションで様々な選手が試されたなか、3バックの顔ぶれは2試合とも変わらなかった。
 
 右から冨安健洋、昌子源、畠中槙之輔。2試合とも3バックの中央でプレーした昌子は「ふたりともすごく良い選手」と冨安、畠中について語り、「彼らの強みは対人だと思っている。そこを活かせるように、僕はできるだけ後ろでサポートしようと考えていた」と続けた。
 
 冨安も畠中も、昨夏のロシア・ワールドカップ以降、代表の一員となった選手。つまり森保一政権下で台頭してきた“新戦力”だ。さらに、今回は招集されなかった吉田麻也ほか、エルサルバドル戦を前に負傷離脱した槙野智章、鹿島の元チームメイトの植田直通、東京五輪世代の有望株である中山雄太など、ベテランから若手までCBは多士済々だ。
 
 レギュラー争いはますます激しくなりそうだが、エルサルバドル戦ではキャプテンマークを巻いた昌子は「CBにもいろんな選手が出てきたけど、自分は自分の良さを試合で出すだけです」と言い切る。
 
 では、昌子の良さとは何か。そのひとつが「声」だ。
 
 エルサルバドル戦で、試合が始まってしばらくすると、隣に座る同僚が問いかけてくる。「あれ、昌子の声ですよね? めっちゃ聞こえてきますね」。
 
 たしかに記者席にもその声は届いていた。たとえば「トミ! トミ!」と、冨安を呼ぶ背番号3の大きな声が。
 
「たぶん、(観客の)みなさんは試合に見入っていたと思うんですよ」(昌子)
 
 会場を盛り上げ、選手たちを後押したのは間違いないが、これまでの日本代表の試合と比べて、応援が途切れたり、声援の“ボリューム”がやや大人しかった印象ではある。試合が行なわれた「ひとめぼれスタジアム宮城」にはトラックがあり、スタンドとピッチの距離が多少、離れていることも関係していたかもしれないが、いずれにせよ「声がよく通った」(昌子)ようだ。
 
 その声、指示がよく聞こえたと、昌子に告げると「それもひとつ俺の強みやと思うから」と応じる。
 
「90分間、ずっと叫んでいたつもりだし、そうやって『聞こえたよ』っていうのは、僕にとっては誉め言葉。昌子選手の声しか聞こえなかったよっていうぐらい、ずっと声を出すのが、僕はCBだと思うので」
 
 とにかく声を出す。出し続ける。昌子の言葉を借りれば、「吠える」。周りに何を言われようが、吠え続ける。それがチームの勝利につながると信じているから。
 
「今日なんて、(小林)祐希と(橋本)拳人は、クラッシャーみたいに、ガンガン潰しにいってくれた」
 
 中盤の攻防で激しく戦ったダブルボランチの健闘を昌子は称賛する。ほんの少しだけ、自身の「声」というサポートを自負しながら。
 
「やっぱり、(DFの)僕らが行ってほしいタイミングを伝えているから、たぶん、彼らも行けると思うし。いや、分からないよ、彼らに聞かないと分からないけど、でも少しは手助けできていたんじゃないかな」
 
 よく声が通ったエルサルバドル戦では、最終ラインの昌子の言葉が、最前線にいる1トップの永井謙佑まで届いていたという。そこで改めて、自分の役割を再認識する。
 
「(GKの)ダンくん(シュミット・ダニエル)以外では、僕らが一番、見える。やっぱり、僕らが守備の“スイッチ”を入れるのが理想やと思う。謙ちゃんにも、(シャドーの堂安)律や(南野)拓実にも、行ってほしいタイミングが伝わって、実際に行ってくれたから、僕らは守備ですごくハメやすかった」
 
 空中戦や1対1の強さ、的確なカバーリング、先手を取る読みの鋭さ、巧みなインターセプト、タイトなマーキング、正確な縦パスとサイドチェンジ、ボールを遠くに飛ばすキック力……。DFに求められる要素はたくさんあるが、昌子はチーム全体を組織的かつ有機的にオーガナイズする「声」に絶対の自信を持つ。
 
 昌子のコーチングひとつで、守備の“秩序”が生まれる。良い守備ができれば、良い攻撃にもつながる。勝利の確率を高めるために、昌子はこれからも叫び続ける。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)