宮城スタジアムで行なわれたエルサルバドル戦。久保建英(FC東京)は後半22分、交代で代表デビューを果たすと、さっそく、その脇を走り抜けていく堂安律(フローニンゲン)の鼻先に、糸を引くような縦パスを送った。

 日本代表はこれまで数多くの技巧派を輩出してきたが、この種の意外性を備えた選手は数少ない。小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)ぐらいに限られる。従来の日本人選手からは拝みにくかった高級なタッチを、さっそく久保は披露した。

 次は受ける側に回った。中盤で頑張ってボールをキープした大迫勇也(ブレーメン)から29分、「さあドリブルしてください」と言わんばかりのパスを受けた。

 久保はマークに付いたエルサルバドルのディフェンダー2人が、縦関係に並ぶ瞬間を待ち構えていた。2人の間を左足のアウトで突いて出ていき、カットインの態勢に入ったのだ。

 相手を罠に誘い込む計算どおりのプレーとはこのことである。そこに無駄な労力が働いていないので、次のプレーに楽に移ることができる。その左足シュートはGKに止められたが、十分に”お金を頂ける”、あるレベルに達した好プレーだった。もうひとりの左利きアタッカーの堂安とは、自分の間合いに持ち込む術が違っていた。プレーへの余裕という点で差があった。


エルサルバドル戦で日本代表デビューを果たした久保建英

 4−2−3−1の1トップ下。森保一監督は出場するポジションと、「守備も頑張るように」と伝えただけだったという。

 所属のFC東京では、主に4−4−2の右サイドハーフ(SH)でプレーする。フラットに構える4人の中盤の一角だ。左SFを務める東慶悟より平均的なポジションは高いので、その4−4−2は左右非対称になる。SHではあるがFW的だ。後半の途中から2トップの一角にポジションを代えることもある。その一角を占める永井謙佑が交代でピッチを去った後、そこにポジションを代えるパターンだ。

 そうした背景のなかで、この日は4−2−3−1の1トップ下として起用された。FW的になるのか、MF的になるのか。どちらもありのポジションなので注目されたが、予想どおりFW的な1トップ下だった。堂安に出した交代直後のパスこそMF的だったが、大迫からのパスを受けてシュートに持ち込んだプレーはFW的だった。

 どこまでFW色の強いアタッカーでいられるか。日本サッカーにとって不世出の選手になれるかどうかは、その点に掛かっている。一介の日本代表選手で終わるのか。単なるスター選手で終わるのか。それともスーパースターの域に達するのか。

 18歳になったばかりのいまは、なんとも言えない微妙な状況にある。サッカー選手としての評価が確定するのは、まだ3、4年先の話になるが、それとプレーするポジションは密接な関係にある。プレーするエリアが高ければ高いほど、選手としての価値は上昇する。ゲームを作る側でなく、決める側に回れるか。日本代表の将来も、そのことと密接な関係にある。

 そうした意味で、磨くべきはドリブルになる。1トップ下よりウイングの方が適している。FC東京でのポジションより幾分高い位置がベストだと思う。アタッカーに不可欠な武器となるドリブルを磨く環境にはそちらの方が適している。

 森保監督は前戦トリニダード・トバゴ戦に続き、この日も、「シャドー」はいてもウイングのいない3−4−2−1で戦った。ドリブラーである原口元気(ハノーファー)と伊東純也(ゲンク)は、4−2−3−1の3の両サイドではなくウイングバックとして出場。アタッカーと呼ぶには低すぎるポジションでプレーした。

 前戦は酒井宏樹(マルセイユ)と長友佑都(ガラタサライ)だった。4−2−3−1ではサイドバック(SB)を務める両選手を据えたが、このエルサルバドル戦ではウイングバックに4−2−3−1では3の両翼を務めるウイング系の選手を据えて戦った。

 その分、攻撃的に見えたかもしれない。0−0に終わったトリニダード・トバゴ戦に比べ、森保式3バックは機能したとの見方をする人はいるだろう。しかし一方で、そうした議論をするのが的外れだと言いたくなるほど、相手のエルサルバドルは弱かった。トリニダード・トバゴよりパスをつなごうとする意志こそ高かったものの、フィジカル的に貧弱で、前戦に続いて強化試合には物足りない相手だった。

 そのエルサルバドルに日本は苦戦した。相手の3FWに対し、最終ラインを5人で固める守備的な時間が多く存在したことも、少なからず輪を掛けた。前半19分、永井が挙げた先制ゴールは、日本のサッカーがよかったと言うより、単純に永井のフィジカル的な要素がもたらしたゴールというべきだろう。スピードと馬力を兼ね備えた彼こそが、どことなく貧弱な印象のエルサルバドルにとって、最も脅威になっていたように見えた。

 前半42分にもゴールを決めた永井だったが、後半早々、ケガでリタイア。その後、久保が登場したことも手伝い、ヒーローとしての存在感を低下させることになった。忘れてならないのは、彼は鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)がケガで参加を辞退したために、追加招集された選手だということだ。

 もしこの試合で永井の活躍がなかったら、森保監督の評価はどうなっていただろうか。後半15分から布陣を4−2−3−1に代えたり、久保を投入したり、森保監督はともすると采配上手として株を上げた可能性がある。しかし、その陰には永井あり、だ。それを忘れて先に進もうとすると、しっぺ返しを食うだろう。

 森保式3バックの採用、久保の代表デビューで湧いたこの2連戦だが、日本代表は強くなっているのかという根本的な問題に立ち返ると、厳しめな言葉しか浮かばない。18歳になったばかりの久保が救世主に見える現状を、むしろ嘆きたくなる。ロシアW杯からはや1年。日本代表のチーム力そのものは上がっていない。

 弱すぎる相手に勝利して肯定的になる姿が、危なっかしく見えて仕方がない。