転勤を拒否して退職した30代男の後悔「地元を離れたくなかっただけなのに」

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 就職先や転職先を探す際、転勤の有無は大きなポイントのひとつ。全員が重視するわけではないが、気にする人も多いはずだ。

◆会社が吸収合併され、転勤ナシの環境が一変

 だが、仮に転勤のなかった会社だとしても地方転勤を命じられる可能性がゼロなわけではない。7年前に転勤拒否で会社を辞めた吉尾淳行さん(仮名・38歳)も「入社時に転勤がないのを確認していたから裏切られた気分」と話す。

「小さなウェブサービス系の会社に勤めていたのですが、業務提携先の企業に吸収合併されることになったんです。そこは複数の事業を扱い、全国各地に拠点を持っていました。転勤ナシというのはあくまで元の会社での話でしたから『ウチでは同じ条件を提示できない』と言われてしまったんです」

 しかし、当時すでに30代。できれば転職を避けたいとの気持ちもあり、すぐに転職の決断は下せなかった。

「転勤はあくまで可能性に過ぎず、聞いたらずっと同じ場所で勤務している人もいましたし、異動といっても引っ越す必要のない距離のケースもあるという話を聞いたからです。だから、そこに賭けてみたんですけど、合併先の会社で働き始めてからしばらくして西日本の支社への転勤の話がありました(苦笑)」

 まだ打診の段階だったが、断っても社内での立場を悪くするだけだと思った吉尾さんは、ここで退職することを選んだという。

 でも、なぜそこまで頑なに転勤することを拒んだのか?

◆地元に残るため、転勤拒否して会社を辞めたが……

「地元を離れたことが一度もなかったことも大きいですね。見知らぬ街で暮らしてみたいという気持ちは微塵もなく、生まれ育った土地でずっと暮らしたいと思っていました。あと、当時付き合っていた彼女と遠距離交際になるのも嫌でした。給料がいい大手企業だったら我慢して転勤を受け入れたかもしれませんが、合併した会社の給料は元の職場とほぼ同じ水準で、転勤するだけの価値が私には感じられなかったんです」

 上司や元の会社から一緒だった同僚は引き止めてくれたそうだが、合併からおよそ半年後に退社。

 その後、すぐに地元の不動産会社に転職することができ、今も勤めている。だが、合併拒否で退職を選んだことを今では後悔しているとか。

「仲の良かった元同僚とはたまに飲みに行ったりしているのですが、そいつが私が退職した後に業績を伸ばして基本給が大幅アップしたこと、ボーナスが倍以上に増えたことをいちいち教えてくるんですよ。対照的に私の今の勤め先は、転職した時点で収入は前の会社から2割ダウン。あれから7年間、真面目に働いても年収は微増程度で450万円に届くのがやっと。もし辞めなかったら今ごろは年収700万円くらいはあったでしょうし、あのまま働いていたら……と思わずにはいられません」

◆地元に残ったことで不幸を招いた?

 しかも、遠距離恋愛を回避できたにもかかわらず彼女は公務員の男性に乗り換えてしまい、一方的にフラれてしまう。

 また、吉尾さんは「初耳だった」と語るが、両親は父親の定年を機にかねてから憧れていたという田舎暮らしを始めると宣言。そのまま地方に引っ越してしまう。その際、実家も処分してしまったそうで、地元に残ったはずなのに今では帰る場所すらも失ってしまった。

「地元は郊外のベッドタウンで私みたいな独身者にとっては出会う場所すらない。友人も近所の人も既婚者ばかりだから肩身の狭さは感じます。それにいくら地元といっても郊外のバイパス沿いには何ら変わり映えのしないチェーン系の店ばかり。どこにでもあるような街なのに転勤するなら会社を辞めると言って、それを実行に移した自分がなんだかバカらしく思えちゃって……」

 地元を離れたくないからとはいえ、それは絶対に譲れない理由なのか。後悔しないためにもすぐに結論を出さず、将来のことなどもじっくり考えたうえで判断したほうがよさそうだ。<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。