6月5日のトリニダード・トバゴ戦で初導入された3−4−2−1の共通理解を、どこまで高められるか――。それが、エルサルバドル戦の大きなポイントと言っていい。

「最低限の守り方くらいしかトレーニングできていない」

 トリニダード・トバゴ戦のあと、ある選手が語っていた。実際、2日の日曜日に集合し、3日後に試合を迎えたわけだから、戦術練習の時間がほとんどなかったのも当然だろう。


ウイングバックで出場しそうな原口元気のプレーに注目

 森保一監督がかつて指揮を執ったサンフレッチェ広島では、攻撃時にボランチを下げて4バックにして攻撃を組み立てていたが、現在指揮を執るU−22日本代表では、「ボランチが必ず下がる必要はない。状況を見て」と、3バックのままビルドアップさせるなど、臨機応変にプレーさせている。

 では、A代表は――? そのあたりはまだ、見えていない。

 森保式3−4−2−1(※)の大きな特徴であるメリハリのある可変――守備時には5−4−1、攻撃時には4−1−5や3−2−5になる――もあまり見られなかった。

(※)現在北海道コンサドーレ札幌の指揮をするミハイロ・ペトロヴィッチ監督が広島を率いたときの布陣を、後任の森保監督も継承した。

 自陣でブロックを敷く際には、広島時代もU−22日本代表も5−4−1で守備ブロックを築かせていたが、トリニダード・トバゴ戦のあと、3バックの右を務めた冨安健洋(シント・トロイデン)は、「なるべく5枚にしたくない」と言った。実際、5日のゲームでは片方のウイングバックだけを下げて、4枚で守る場面もあった。

 共通理解が進んでいないのか、それとも、A代表ではより一層、臨機応変にプレーすることが求められているのか……。このあたりも、エルサルバドル戦で確認したい。

 3−4−2−1という”伝家の宝刀”を抜くうえで、広島時代に指導し、代表の常連だった青山敏弘と佐々木翔のふたりが不在なのは、森保監督にとって痛恨事かもしれない。

 また、戦術面において”双子”と言える「ミシャ」ことミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとで長らくプレーした槙野智章(浦和レッズ)も、エルサルバドル戦の前日に負傷離脱が決まった。

 それゆえカギを握るのは、同じくミシャのもとでプレーしていた原口元気(ハノーファー)だろう。

 おそらく左ウイングバックで先発する原口が、どのような動きを見せるのか。サイドバックとウイングの役割をどうこなすのか。3−4−2−1を機能させるうえで、大きなポイントになるはずだ。

 森保監督は前日会見で「第1戦から入れ替えて試合に臨みたい」と明言した。そのため、エルサルバドル戦のスタメンは、以下のように予想される。

【GK】権田修一(ポルティモネンセ)
【DF】冨安健洋、昌子源(トゥールーズ)、中山雄太(ズウォレ)
【MF】室屋成(FC東京)、橋本拳人(FC東京)、小林祐希(ヘーレンフェーン)、原口元気
【FW】伊東純也(ゲンク)、大迫勇也(ブレーメン)、南野拓実(ザルツブルク)

 槙野が離脱した3バックは、メンバーを入れ替えるほど人員がいないため、冨安と昌子は2試合連続して先発するのではないだろうか。

 1トップには永井謙佑(FC東京)、岡崎慎司(レスター・シティ)という選択肢もあるが、初戦でベンチ外になった岡崎はコパ・アメリカ要員と考えられる。一方、スピードが武器の永井は、シャドーに入る伊東と強みやスタイルがややかぶる。そのため、再び大迫を1トップで起用し、前線3枚のコンビネーションを磨いてもおかしくないだろう。

 残念だったのは、先発が予想された香川真司(ベシクタシュ)が股関節に違和感を覚えていることだ。

「香川は明日、プレーすることができない」と、森保監督も前日会見で明言した。狭いスペースでのコンビネーションに長けた香川は、シャドーのポジションがばっちりハマりそうだっただけに残念だ。

 一方、システム変更による変化のひとつが、2列目が3枠から2枠に減ったことだろう。

 むろん、3バックはあくまでもオプションのひとつだが、「(ポジション争いは)大歓迎です。そのなかで勝ち残った選手しか試合に出られない」と南野が言うように、これまでレギュラーとして起用されてきた南野、中島翔哉(アル・ドゥハイル)、堂安律(フローニンゲン)のポジション争いが熾烈になったことも、3バック導入のメリットのひとつだ。

 注目の久保建英(FC東京)に関して森保監督は、「デビューの可能性はある。メンバーには確実に入ってくると思うし、そのあとは流れで決めたい」と、途中出場を示唆している。後半途中から久保を右シャドーへと投入し、伊東を右ウイングバックに回すというオプションを試したいところだ。

 久保を除けば、今回の代表メンバーはほとんどが森保監督のもとですでにプレーしてきた選手たち。そのため、選手個々の能力を見極めるのではなく、チーム全体で3−4−2−1の共通理解を深める――。9月から始まるカタール・ワールドカップ予選の前最後のテストマッチの主眼は、そこにある。