愛知県常滑市の中部国際空港(セントレア)。名古屋に近く、アクセスも良い場所にある空港だ。

公共交通機関やマイカー以外にも、タクシーで名古屋に向かう人も当然いる。しかし、名古屋からはるか遠くに離れた場所にタクシー移動する人もいるのだろうか。空港内には、予想外の案内が存在していた。


乗車率(@riding_rate)さんのツイートより

それは、成田国際空港(千葉県成田市)と羽田空港(東京・大田区)への料金案内。タクシー代だけで10万円を超えてしまう長距離移動だが、そもそもなぜこんな表示が中部国際空港にあるのだろうか。

「お化け」は存在した

こちらはツイッターユーザーの乗車率さんが投稿した写真。驚くことに中部国際空港の案内ではあるが、行き先は成田と羽田――4時間30分から5時間30分の長距離利用を想定しているのだろうか。ほかの移動手段を考えると現実味がない。

乗車率さんは「間違える人が一定数いるんだなあ」と予想しているが、実際のところはどうなのだろうか。

2019年6月4日、Jタウンネット編集部が中部国際空港の担当者に取材すると意外な答えが返ってきた。

タクシーの案内については空港ではなく、タクシー会社の協議会が設置している。こちらの長距離の案内は、

「2年くらい前から料金を明確化するため」

との理由で設置した。

それ以前は名古屋を中心に近場の料金だけを表示していたが、長距離の利用を希望する客からの問い合わせがあったそうで、遠く離れた空港への料金・時間案内も始めたという。

確かに、乗車率さんの写真をよく見ると、成田と羽田の下には関西国際空港の文字も確認できる。こちらも約3時間とかなりの長距離だ。

問い合わせがあるならば、本当に利用する客もいるのだろうか。

「実際に乗る方がいらっしゃるそうです」

名古屋から首都圏への移動であれば、新幹線や長距離バスもある。それにも関わらず、わざわざタクシーだけで移動する理由が全く見えてこない。

そもそも羽田と成田はJALとANAの路線まで存在している。こちらであれば約1時間で行ける。


中部国際空港から成田国際空港までの経路 (C)Google


中部国際空港から羽田空港までの経路 (C)Google

Googleマップ上で経路を確認しても気が遠くなる。速さや時間の正確さからも公共交通機関の方が楽なはずだが、よほどの事情があるのだろう。

乗車率さんの投稿のリプライ(返信)欄には、

といった反応が寄せられている。

想定外の長距離利用客を業界では「お化け」と呼ぶそうだ。タクシー運転手の方からすれば、お化けを獲得できるチャンスなのかもしれないが、時間も体力も大きく削られそうだ。