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BMWの小型車たち

BMWと聞くと、アウトバーンを超高速走行する大型サルーンやサーキットをドリフトしながら駆け抜けるハイパフォーマンスクーペを思い浮かべるひとが多いだろう。

これは間違った認識ではない。BMWで人気のモデルの多くはこのどちらかに属しているのも事実である。しかし、小型車を作っていないというわけではない。先日3代目1シリーズが公開されたばかりだが、それ以前の小型車たちを振り返ってみよう。

ディクシー(1928年)

BMWの自動車業界への参入は、1928年のアイゼナハ自動車製作所の買収に始まる。この買収により、オースティン7のライセンス生産を始めることとなった。このディクシーと名付けられたモデルはドイツのアクセントが加えられた英国車であった。クーペ、ロードスター(画像)、サルーンなどのボディスタイルが用意された。

BMWはディクシーの1932年に生産を終了するまで改良を重ねた。歴史を辿って見ると、20世紀の終わりには、オースティンの血を引くローバーを買収している。

3/20(1932年)

オースティンへのライセンス料支払いに飽き飽きしたBMWは、ディクシーの後継となる新型車、3/20を開発した。先代よりも広い室内と、改良された4気筒エンジンが特徴だ。過去にはダイムラー・ベンツがこのクルマのボディをジンデルフィンゲン工場で生産していた。現在ではその施設でメルセデス-AMG GTが生産されている。

イセッタ250/300(1955年)

BMWは3/20以降も1934年に発売された309などの小型車開発を続けてはいたが、その主眼は直列6気筒エンジンを搭載するより大型のモデルへとシフトしていた。しかし、1955年に発売されたイセッタでエントリーモデルへの注力を再開した。基本的なデザインはイソが担当したが、BMWの手により1気筒の空冷エンジンが搭載された。

経営陣はブランドイメージ維持のため超小型車のラインナップ拡大をしなかった。しかし、奇跡的にこのモデルがBMWの倒産回避に一役買ったのだった。

イセッタ600(1957年)

BMWはイセッタを延長して4シーターの600を作った。冷蔵庫のようなフロントヒンジのドアを残しつつ、後席乗員用のドアをサイドに取りつけている。リアには2気筒のバイク用エンジンが搭載される。

700(1959年)

BMWは経営状態が改善したのを受け、イセッタおよび600をよりモダンなモデルに置き換える計画を立ち上げた。1959年にはミケロッティによるデザインの700を発表した。クーペおよび2ドアサルーンが用意され、リアに空冷の水平対向2気筒エンジンを搭載した。派生モデルのLS(画像)は長いホイールベースと大型のエンジンが特徴だ。

02シリーズ(1966年)

ノイエ・クラッセ(ニュークラス)と呼ばれるラインのモデルが1962年の4ドアサルーンから始まった。より小型の2ドアモデルである1600-2を1966年のジュネーブ・モーターショーで発表した。02はBMWで最も成功したモデルとなりブランドの若返りに貢献するとともに、北米市場への足がかりとなった。

1600GT(1967年)

BMWが1966年にグラス社を買収した後、1600GTがラインナップに加えられた。グラスのクルマの大半は古臭く、BMWは興味を持っていなかったようだ。しかし、GTのポテンシャルに引かれ、BMWのラインナップへの追加が決まった。1600の1.6ℓ4気筒を搭載しサスペンションにも変更、そしてキドニーグリルが与えられた。

Z11(1991年)

02の成功を受け、1970年代を通してBMWはさらに上級志向へと移行した。5シリーズ、6シリーズ、7シリーズなどが追加されたのがこの時期だ。同社はABSや燃料噴射システムなどの先進装備を取り入れて行った。

一方、BMWはシティカーのセグメントも忘れてはなかった。1991年には電動2プラス2のZ11コンセプトを発表した。Z11が市販化されることはなかったが、2013年に発売されたi3はその流れを汲むモデルだ。

Z13(1993年)

Z13は将来の通勤車像を示すモデルだ。よりパーソナルなクルマとして設計されており、運転席が中央に配置されている。ただしBMWらしいハンドリングを実現するため、アルミニウムの多用による軽量化や、リアにマウントされた82psのエンジンが特徴だ。

Z15(1993年)

1993年にはもう一台のシティカーのコンセプトが登場した。Z15と名付けられたこのモデルは1992年のZ11を改良したものだ。4シーターのレイアウトおよびリアに搭載される電動モーターはそのままに、ややコンベンショナルなデザインが与えられている。3シリーズより下のクラスを設ける計画はいったん棚上げされたようだ。

3シリーズ・コンパクト(1993年)

1990年代に登場したシティカーのコンセプトはいずれも市販化されることはなかった。しかし、その努力が水の泡となったわけではない。2002ツーリングにインスパイアされ、3シリーズをベースに2ドアハッチバックとしたモデルを発売した。3シリーズ・コンパクトとしてエントリーレベルに据えられ、その価格も3シリーズ・サルーンを下回るものとなった。