複数内定を取得し、内定辞退の連絡をどのようにするか悩む就活生は少なくありません。一方、人事担当者はどんな連絡を求めているのでしょうか (写真:zon/PIXTA)

6月に入り、大手企業を中心に面接が本格化しています。ディスコ「キャリタス就活2020」の学生モニター調査によると、すでに6月1日時点で内定率は71.1%に達しています。

そして6月選考の本命企業から内定を得られれば、すでに得ていた企業の内定を辞退することになります。内定するかどうかは別にして、本命企業を受けた後に意思決定しようと考え、複数企業の内定を抱え込んだままの学生も少なくありません。もしかしたら、近々に最終判断を求められている就活生もいると思います。

内定辞退の方法に「正解」はない

一方、人事担当者にとっては、内定辞退の連絡を多く受け取る期間となり、大企業の選考が落ち着くまでは、ナーバスな日々が続きます。

そういった中、どのようにして内定辞退をしたらよいのか悩んでいる学生も多いようです。内定辞退の方法について、多くの情報が出回っています。「訪問して辞退の旨を伝えたほうがいい」「メールで十分」……内容はそれぞれ異なり、いずれも相応の考え方があります。


しかし、複数の人事担当者から話を聞くと、企業ごとの採用の状況や価値観から人事担当者の「こうしてほしい」という考え方がかなり異なります。だから、「どの相手にも通用する内定辞退の正解」はないというのが実態です。そのため、学生側も、きれいな形にこだわるより、最低限行うべき内定辞退の連絡はどのあたりかを考えて、行動すればいいのではないでしょうか。

具体的内定辞退の方法で、よく議論になるのが「メール(LINEなどコミュニケーションツール含む)」「電話」「直接会う」の、どの方法を選ぶかということです。

筆者自身の意見を言えば、電話で連絡がほしいと思っています。そして「できれば、辞退の理由を伝えてほしい」です。もちろん、これは人事担当の私の考え方であり、学生側の都合に沿った考えではありません。だから、これが正しいというわけではありません。

電話で連絡がほしい理由は、本人と話せる機会があることで、下記のとおりとなります。

1. 本人であることの確認ができる。

2. 意思決定の理由や気持ちを知ることで、考え直してもらえることがある(無理やり説得するのではなく、話しながら冷静に考えをまとめてもらう中で、迷いがあったり、大事にしていたこととブレがあったりしたことに気づいた場合、本人から考え直す場合がある)。

3. 辞退の気持ちが変わらないとしても、その理由を聞くことで、自分たちに足りなかった点を考えるきっかけになる。

4. 短い時間とはいえ、お互いに真剣に向き合った相手に対し、気持ちよく挨拶して終わることができる。また何かの縁で出会う可能性もあり、感謝の気持ちをもって、離れることに損はない。

直接会話する機会がほしいと考える担当者は少なくない

メールでは、相手からの一方通行の連絡のみで終わることがほとんどです。メールの内定辞退連絡を見て、こちらから電話をかけても、まずつながらないことが多いため、念のために確認したいことが確認できません。

確認を求めるのは人事担当者の都合によるところが大半です。内定辞退の意思が固い学生から見れば、好きな時間に連絡ができ、人事との面倒な会話も必要ないメールのほうが、とても効率がいいこともよくわかります。メールがNGだという訳ではありませんが、「できれば電話で直接対話する機会があるとうれしい」というのが、私の考えです。

「直接会う」ことについては、本人の迷いや、希望があれば別ですが、確認は電話で十分にできると考えています。直接会うことは、お互いに無駄な負担を増やす可能性が高く、求めてはいません。

しかし、他社の人事担当者の話を聞くと、自分と同じような考えではないということもわかりました。

例えば、多くの学生を採用する企業では、ある程度の辞退を見込み、採用予定数より多めに内定を出しています。ある程度の辞退も想定内で、その数も多いため、入社しない人材一人ひとりに時間をかける余裕もありません。そのため、むしろ電話よりもメールでの辞退連絡で十分だと言うのです。

電話だとお互いの時間を調整する必要がありますが、その時間が惜しいため、メールでの連絡がいちばん効率的だということです。

ただし、絶対に入社してもらえると思っていた学生については、説得の可能性を探るため、一方的な連絡で終わりがちなメールよりも、電話のほうがうれしいという声もあります。それほど多くの人数を採用しない企業や、採用予定数ギリギリで内定を出す企業、手間をかけて内定までこぎつけた企業の人事担当者にとっては、電話で話せる機会を求めていると感じています。

ただ、「電話で直接話すのはつらいし、気まずい感じにもなるからメールでいい」という声や、「辞退の連絡がある状況から気持ちを覆すことはとても大変でほぼ無理だから、メールで十分」という意見もありました。

反対に、「電話では学生の本音は聞きにくいし、お互いにその場で冷静に考えることはできない。だから、まずは会って話すべきだ」という考えを持つ企業や人事担当者もいます。

とくに「絶対にこの人材が欲しい!」と思っている学生や、上司から「絶対にその人材を採用しろ!」と激しく言われている学生、さんざん時間をかけてきて、まさか内定辞退をするとは想像もしていなかった学生などについては、何とかして自分たちの企業に気持ちを向けさせたいという思いから、「直接会う機会を作りたい」と言います。

「辞退は直接会って伝えなければならない」というルールを学生に事前に伝えて、心理的ハードルを設け、辞退そのものを防ごうとする企業もあります。

このように企業、人事担当者が望む内定辞退の伝え方はそれぞれに異なります。ただ、1つだけ共通で、絶対にこれだけはやめてほしいという辞退方法があります。

連絡がないと、ほかの就活生に影響を与える

それは、何も連絡がない、連絡がつかない「サイレント辞退」、さらにほかの行きたい内定先が決まっているのに、いつまでも内定辞退の意思を表明しないケースです。

内定を伝えた以上、そこに採用責任が生じるため、学生の意思なしに、勝手に内定を取り消すことはできません。しかし、「サイレント」のままだと、辞退なのか、それとも不測の事態で連絡がつかないだけなのかわかりません。判断がしばらくつかないために、人事担当者はその間、前に進むことができません。明確に辞退をしたとわかれば、その辞退分を埋めるために、ほかの選考者に内定を出すことができます。

もしかしたら、ほかの内定企業とどっちを選ぶか悩んでいるか、辞退の旨を伝えられないまま日にちだけが経っている状況かもしれませんが、そのために、多くの人に悪影響を及ぼしていることを忘れてはいけないと思います。

また、これまで一生懸命選考に向かってきてくれたのに、いろいろ話してくれたのに、急に連絡がなくなるという事実は、単純に人として心が傷つけられるのも事実です。

「そんなこと、もう慣れたよ」と、言って笑い飛ばす人事担当者もいますが、自分の周りには、「連絡もできないような人間なら、採用せずに済んでよかった」と強がりをいいながら、「あの言葉とか、笑顔とか、全部嘘だったのか……。ちゃんと向き合ってきたつもりだったのに……」「連絡もしてもらえないような関係しかつくることができていなかったのか……」と嘆く人事担当者が多くいます。

内定をもらった企業に、何の思いもなければサイレント辞退をするという行為もわからなくはありません。しかし、内定が出るまでに、お世話になったこと、自分の成長につながるきっかけをくれたことなど、本当に何もなかったでしょうか。

学生に話を聞くと、企業側から、連絡なしが不採用の結果という「サイレント不採用(お祈り)」の仕打ちを受けている事実を聞きます。聞いている限り、学生に比較的人気があり、多くの学生が志望する企業や、人気に関係なく単純に人手が回っていない企業の一部で、サイレントお祈りを行う企業があるようです。

サイレントお祈りをやっている企業側には、学生の立場も考えて、ぜひ考え方と行動を改めてほしいと強く思います。もし業務上の事情があってサイレントお祈りをするなら、せめて「この期間までに連絡がなかったら」と期限を設けてほしい。そうすれば、学生も次に進みやすくなるはずです。

まずは企業側がやるべきことをやってほしいと思いますが、しかし、学生が、「企業側もやっているのだから自分たちだってやっていい」という発想になるのは、気持ちはわかりますが、負の連鎖を生む寂しい発想だと感じています。

最低限「辞退の意思」を伝えてほしい

内定までもらったからには、自分がそこまで選考を受けようと思った何かがあるはずです。「イベントか何かで出会って、すぐ内定と言われた」というような内定や、「選考中にひどい対応をされ、内定だけ取って辞退してやろう」といった特殊な内定の場合は、まったく別な話かもしれません。

しかし、普通に、この企業がいいなと希望し、時間をかけて選考に臨み、最終選考まで進んだ企業であれば、お互いに将来に向けて真剣に向き合った時間があったと思います。その時間が少しでも自分に意味があったと思えば、サイレント辞退だけはせず、最低限「辞退の意思を伝える」ことだけはしてほしいというのが、多くの人事担当者が思っていることだと思います。

他社に決まっていて内定辞退の意思を伝えていない例も同様で、負の連鎖を生まないためにも、辞退の意思はしっかり伝え、お互いにはっきりと一歩前に進める状態を作ることが、社会人の第一歩であり、就職・採用活動の全体の好循環をつくることにつながっていくと、私は思っています。