3−4−2−1ではWBを担う長友(右)と酒井(左)。写真:山崎賢人、金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 令和最初の日本代表戦となった6月5日のトリニダード・トバゴ代表戦で森保一監督は、
これまで基本形としてきた4−4−2(4−2−3−1)ではなく、3−4−2−1(3−4−3)の新システムを採用。9月に始まるカタール・ワールドカップ予選も見据えて、新たなオプション作りに乗り出した。
 
 ボール支配率が60.7%、シュートが25本(相手は5本)というスタッツが示す通り試合を支配しながら、しかし結果はスコアレスドロー。シュートは可能性の低いミドルレンジからのものが多く、良い形でのフィニッシュは数えるほどしかなかった。
 
 その大きな理由のひとつが、WBを務めた長友佑都と酒井宏樹がフィニッシュにあまり関われなかったことだ。従来の4−4−2ではSBとしてサイドに幅を作り、クロスを狙うのが主な役割になる2人だが、3−4−2−1のWBだとチャンスではゴール前に詰める仕事がより求められる。
 
 4−4−2の森保ジャパンは、SBがサイドを抉ってのクロス、もしくは後方からスルーパスを狙っても、中央のゴール前では2トップと両サイドハーフの計4人が受け手になれていた。
 
 しかし3−4−2−1で臨んだトリニダード・トバゴ戦では、WBが敵SBの裏を突いてサイドを突破してクロスを狙っても、中央で待っているのはCFの大迫勇也とシャドーの中島翔哉と堂安律と多くて3人。中島か堂安の仕掛けからの崩しでは、中央に2人しかおらず、しかもいずれもダブルマークに遭い身動きができないというケースも少なくなかった。
 
 フィニッシュにおいて最も得点率が高いペナルティーエリア内中央の重要なゾーンに“人が足りない”のでは、ゴールが生まれる可能性はもちろん下がる。堂安が試合後に「前の人数が(4−4−2と比べて)1人減るので、サイドを含めた連携が大事になる」と語っていたのは、実に示唆的だ。
 
 この課題を解決する最大のソリューションは、前線3人の連携を深めることはもちろん、WBが敵陣ゴール前に「詰める」こと。欧州のトップレベルでも3−4−3や3−5−2を基本システムとするチームは、フィニッシュの数的リソースを確保するためにこのメカニズムが徹底されており、実際にWBが重要なスコアラーとなっている。
 
 閉幕したばかりの18−19シーズンでは、アタランタが格好の見本だろう。トランジション志向の強い攻撃サッカーでセリエAで3位に入り、クラブ史上初のチャンピオンズリーグ出場権を獲得したチームでは、右のハンス・ハテブールが5ゴール・5アシスト、左のロビン・ゴセンスが3ゴール・2アシスト、左右兼用のティモシー・カスターニュが4ゴール・3アシストを記録するなど、積極的にゴール前に詰めるWB陣が大きな鍵となっていた。
 
 それこそ長友も、インテル時代に「スコアラーWB」として活躍した実績を持っている。3バック信奉者であるワルテル・マッザーリ(現トリノ監督)が率いた13−14シーズンは、左WBを務めて5ゴール・7アシスト。右サイドからのクロスに長友がファーサイドか中央に詰め、そのままシュートを狙うか折り返す形は、当時のインテルの重要な攻撃パターンだったのだ。
 
 森保ジャパンが3−4−2−1を採用したのはトリニダード・トバゴ戦が初めてで、やはりポジショニングやコンビネーションの点で戸惑いが見え隠れたし、チーム全体が手探りのためやや慎重になっていた部分もあった。長友と酒井がなかなかフィニッシュに絡めなかったのは、情状酌量の余地が多分にある。
 
 ただ、この2人代わってWBで途中出場した原口元気と室屋成は、より1点が求められた状況だったこともあり、何度かゴール前に顔を出して攻撃を活性化。長友と酒井にも同様のパフォーマンスが求められるところだろう。3バック採用時に得点力を担保するにはWBのフィニッシュ参加が不可欠なのは間違いなく、試合後に酒井が「できれば僕と(長友)佑都くんが攻撃的にいきたいのは間違いない」と語ったとおり、本人たちもそれを重々承知しているはずだ。
 
 森保監督は「現時点で4−4−2がベース」と語るが、カタール・ワールドカップ予選に向けて戦術オプションが欲しいのも事実。6月9日のエルサルバドル戦でも、再び3−4−2−1を採用してくる可能性は大いにある。その時は長友と酒井の「ゴール前に詰める動き」に注目したい。
 
【PHOTO】トリニダード・トバゴ戦を彩った「美女サポーター」たち
 
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)