「4−2−3−1、4−3−3、3−4−2−1……日本人は数字に執着しすぎる。フォーメーションなど仮の設計図に過ぎない。実際に構築するのが現場の仕事だ」

 フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)は、日本で監督の仕事をするようになって、辟易するように言っていた。3バックか4バックか。そんな論争は、スペインの名将に言わせれば数字遊びなのだろう。

 しかし、先日のトリニダード・トバゴ戦で、森保一監督がこれまでの4−4−2(あるいは4−2−3−1)ではなく、新たに3−4−2−1を採用したのは事実で、それは機能したとは言い難かった。FIFAランキング93位のチームを相手に25本のシュートを放ち、60%以上のボール支配率を見せるが、0−0のドロー。格下相手に攻めはしたものの、攻撃は単調で、崩し切れなかった。それが現実である。

<選手のストロングポイントを使えているか?>

 そこに立ち戻るべきだろう。


トリニダード・トバゴ戦に先発したものの、不発に終わった中島翔哉

 率直に言って、トリニダード・トバゴ戦はちぐはぐさが目立った。

 たとえば最多の7本のシュートを放った中島翔哉(アル・ドゥハイル)だが、これまでと違ってサポートを欠いていた。中島は個人技もさることながら、コンビネーションを使って崩し切る技術に長ける。大迫勇也(ブレーメン)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)ら複数の選手と前線で連係することで、脅威を与えていた。しかしフォーメーションの都合で南野がいないだけで、プレーの選択肢が限られてしまった。

「ウィングバックが幅をとって攻撃を展開する」

 それがこの夜の基本路線で、左サイドの高い位置でウィングバックを務めた長友佑都(ガラタサライ)がボールを受け、そこから中島がプレーをスタートできるのはアドバンテージだった。しかしリトリートした相手には、そこからが手詰まりになっていた。この問題は中島だけでなく、堂安にも起こっていたことだ。

 そもそも、1トップの相手に3バックはミスマッチだった。ストロングどころか、ウィークポイントが出ていた。昌子源(トゥールーズ)は能力の高いディフェンダーだが、ポジションの縫い目を破られる形で相手FWに裏を走られ、カウンターから決定機を許している。

 3バックはウィングバックが下がって5バックになるわけだが、5人は密集して守りが厚くなる錯覚を受けるものの、実際はスペースの分担で、4人で守るよりも動きが複雑化し、隙を与えやすくなるのだ。

「試合が進むなかで、相手の嫌がる攻撃ができるようになっていった。3バックの選手がボールを持ち上がったり、形として修正してくれた。縦パスが入るようになって、中を締めてきた相手に、外を使えるようになった」

 森保監督はそう言って、収穫を口にしている。

「3バックを今後の選択肢に」

 その狙いは明確だろう。相手に応じてシステムを変える。その柔軟性は必要だ。しかし、そもそも本当に使いどころはあるのだろうか。たとえばロシアW杯のベルギー戦で、3バックは使えなかっただろう。バックラインが押し下げられたら、振り払えるだけのインテンシティは日本にはない。

「俊敏性と連係する技術」

 その2点が、日本人選手の最大の長所と言えるだろう。単純な1対1の守備強化も急務だが、現状ではボールポゼッションを守備に使い、高い位置で相手を脅かすという”攻撃は最大の防御なり”に活路を見出すべきだろう。リトリートするにしても、できるだけ敵が最終ラインに押し寄せる前で食い止める。後ろを分厚くするより、中盤でプレー強度を見せられる選手の起用が必要だ。

「先につなげる試合だし、つなげなければならない」

 試合後、3バックの一角として先発フル出場した冨安健洋(シント・トロイデン)は、そう振り返った。彼らはほとんどトレーニングしていない戦術にトライした。ほとんどの選手が、3−4−2−1ではプレーしていない。その点、選手を責められないだろう。

 3−4−2−1は欧州ではマイナーなシステムで、Jリーグでも上位には4バックを採用するチームが多い。もっとも、森保監督はサンフレッチェ広島時代、3−4−2−1でJリーグ王者になっている。システム運用に自信もあるのだろう。だから、試す機会を探っていた。招待されているコパ・アメリカを前に、テストに踏み切ろうという事情もあったはずだ。

「3バックをどこかで試そうという思いはありました」

 森保監督はその意図を明らかにしている。

「去年、ロシアW杯をコーチとして経験し、西野朗監督がやられていた4バックが日本の選手にも合っていると思い、その経験を踏まえ、やり方を踏襲しました。招集選手は代わりましたが、戦術的にはスムーズに行ったと思います。4バックがベースですが、3バックでもプレーの原理原則は変わりません。必要以上に難しく考えるべきではないと思います」

 森保監督の言葉は論理的で過不足がない。試合の中で、改善させた部分もあった。悲観するほどの結果でもないだろう。ただ今回は、システムありき、フォーメーションありき、になってしまった感が強い。数字に囚われたということか。

<選手のストロングポイントを使う>

 6月9日、森保ジャパンはエルサルバドル戦で、あらためてその課題が問われる。